データインバウンド
ワーケーション経験者1000人の実態調査、実施率6.6%にとどまる。隠れワーケーターは4割超
2021.05.17
長引くコロナ禍で在宅勤務やテレワークの導入が進むなか、ワーケーションはどれくらい浸透しているだろうか。株式会社クロス・マーケティングと山梨大学の研究グループが今年3月に共同で実施した全国調査によると、テレワークとワーケーションでは実施率に大きな差があることがわかった。調査対象は全国47都道府県に在住する男女20~64歳の就業者7万6834人。そのうち、直近1年間にワーケーションを実施した1000人を対象に、さらに詳しく場所や時間、過ごし方などを聞くことで、ワーケーションの実態を明らかにした。
(図・表出典は株式会社クロス・マーケティングと山梨大学の共同レポート「テレワークに関する調査2021年3月」より)
テレワークが約4割に浸透するも、ワーケーション率は6.6%
まず、全体の7万6834人のうち、直近1年間にテレワークの「経験あり」と回答したのは39.6%だった。実施場所別に見ると、自宅が9割以上を占め、リゾートやホテルなどいわゆる「ワーケーション」を経験している人は6.6%だった。
クロス・マーケティングが2020年8月に調査した時と比べると、テレワーク経験者は3.3ポイント増えたものの、ワーケーションについては0.8ポイント減という結果になった。昨年とは聴取方法が異なるため純粋な比較とはならないが、この1年でテレワークは徐々に浸透しつつある一方で、県境をまたいだ移動制限が続いている影響からか、日常の生活圏から離れた場所で行うワーケーションはまだまだ実施率が低い現状が見えてきた。テレワークについても、大多数が自宅で作業しており、都市部ではコアワーキングスペースが増えてきているが、実際の利用者は3%に過ぎなかった。働く場所の自由度が高いのがテレワークのメリットだが、現状では自宅か会社かという2択が主流となっている様子がうかがえる。
ビーチリゾートよりも実際はビジネスホテルを選択
自宅や会社などから離れた観光地やリゾート地で行われるケースが多いワーケーションだが、実際に滞在先として最も多かったのはビジネスホテルの43%だった。次いでリゾートホテル31.4%、シティホテル27%となった。旅館は19.6%、キャンプ場は9.7%と少なく、やはり個室空間でWi-Fi環境が整ったホテルタイプを選んでいる実態が浮き彫りとなった。ワーケーションの同行者については、子供を含む家族連れは約2割しかおらず、同行者なしの一人旅が半数を占めることから、部屋の広さや景観よりも、必要十分なリモート環境が整備されているビジネスホテルが第一選択肢となっているようだ。
滞在中に観光する派としない派はほぼ同数
今回の調査ではワーケーション中の一日当たりの平均労働時間は5.4時間と通常の勤務時間より少し短い傾向が出ているが、余暇はどのように過ごしているのだろうか。実際の働き方を見てみると、仕事中心に過ごし、「業務時間外であっても遊びや観光をしない派」と、「業務時間外では遊びや観光をする派」がほぼ同数という結果となった。本来ワーケーションとは、休暇と仕事の両方を行うことだが、休暇とらない人が2割も存在するということは、まだまだワーケーションが浸透していない表れといえる。ワーケーション先の地域で、仕事以外の時間にどのような過ごし方や地域交流体験ができるか提案の余地がおおいにありそうだ。
ワーケーションのリフレッシュ効果で仕事上率UP
ワーケーションの効果としては「リフレッシュできた」「リラックスできた」がともに3割を超えた。日常とは違う場所に身を置くことで、刺激を受けたり、これまでにない発想や企画が生まれ、仕事の効率も上がったとの回答が多かった。また、地域への貢献や滞在施設の人々との交流などを挙げる声もあり、こうした動きは自宅でのテレワークでは得られない、ワーケーションならではの効果といえそうだ。
個別の感想ではネガティブな意見よりもポジティブな意見の方が多く見受けられ、「整理整頓されたホテルでの作業でとても集中できた」「使った費用以上に心のリフレッシュができた」といった声が多かった。一方で、「ON/OFFの切替えの難しさ」や「ネットワーク環境が意外とネック」といった声も寄せられた。
そもそも制度にない、制度はあるが利用していない隠れワーケーターが4割
ワーケーション経験者1000人のうち、会社にワーケーション制度が導入されている割合は65.5%だったが、導入されていても利用したことがないと回答した人が17.7%いた。そもそも会社に制度がないと答えた27.7%と、制度はあるが利用していない17.7%を合計すると、44.9%にのぼり、会社の制度は利用せずに有給や連休と合わせて実施した人や、本人の判断でリゾート地などで休暇を取りながら業務をこなす「隠れワーケーター」のような人たちが約4割存在することがわかった。
今後ワーケーションを再び行いたいかについては、全体では半数以上がまた「行いたい」と回答したが、管理職以上の人に絞ると72%が再度実施意欲を示し、管理職における意向が高い結果となった。またワーケーションを経験した管理職以上の69%が会社への導入意向も示した。実際に自分が経験することで、これならやれるという実感を得たのではないだろうか。
今回の調査では自宅でのテレワークが定着しつつあるものの、ワーケーションの経験率は6.6%に過ぎず、実際には仕事中心で観光や行き先での地域との交流がなかったり、会社に制度があったとしても利用されていない実態が明らかとなった。働く場所を地方の観光地へ変えることで心身ともにリフレッシュができ、仕事の効率化や地方活性化に貢献できるワーケーション。単に「休暇中に仕事をする」だけではなく、長引くコロナ禍で混迷する企業、働き手、観光地域それぞれにメリットをもたらす、新しい働き方の一つとして広がることを期待したい。
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