データインバウンド
2022年2月世界の航空需要は回復が加速、ウクライナ危機の影響は限定的
2022.04.14
IATA(国際航空運送協会)によると、2022年2月の世界の航空需要の伸びは国際線、国内線の双方で2021年2月よりも回復していることがわかった。
国際線・国内線を合算した総RPK(有償旅客が搭乗して飛行した総距離=revenue passenger kilometers:有償旅客数×輸送距離)については前年同月比115.9%増だった。2019年2月の水準からは45.5%減で、パンデミック前のレベルの半分弱だが、1月よりは改善している。
また、ロシアのウクライナ侵攻の影響は2月時点では限定的で、欧州内、あるいは欧州とアジアの路線でも成績は悪くない。とはいえ、物価上昇による旅行客の不安や、中国でのオミクロン株による感染再拡大が、回復を脅かす要素になるかもしれない。
それでは、ここから、国際線と国内線をそれぞれ見ていこう。
国際線需要は全地域で改善
国際線RPKは、世界平均で前年同月比256.8%増で、先月と比べるとすべての地域で改善している。ただし、2019年同月比では59.6%減だった。
前年同月比でもっとも成績がよかったのは欧州で、前年同月比380.6%増だった。ただし、2019年2月の水準を45.4%下回っている。国際線におけるロシアのウクライナ侵攻の影響は、ロシアと紛争周辺国以外の欧州では今のところ比較的限定的だ。実際、欧州ーアジア間のトラフィックは季節調整済みで前月比9.6%増、欧州内のトラフィックは同30.3%増となった。ウクライナ侵攻が始まった当時、欧州は地域全体で航空需要が力強く回復している最中だった。また、欧州内の難民の動きを受けて、ウクライナ周辺国からの出国が大幅に増加したため、3月のトラフィックが大きく落ち込むことはないだろう。
中南米と北米では、2月の国際線RPKの前年同月比がそれぞれ242.7%増と236.7%増と改善した。中東の年2月の国際線RPKは、前年同月比215.3%増となった。
アジアは世界のどこよりも依然として回復が遅れているが、2月の国際線RPKは前年同月比144.4%増となり、改善の兆しは見えている。2019年同月比では88.0%減だったが、最近、域内各国(韓国、ニュージーランド、シンガポール、タイ等)で渡航制限が緩和されたことはプラス材料だ。
アフリカ地域の2月の国際線RPKは、前年同月比69.5%増の伸びを記録した。2019年同月の水準を52.0%下回り、アジアについで悪い実績だ。これは、予防接種率が低く、新興国の経済見通しも厳しいという、同大陸が抱える課題を浮き彫りにしている。
アメリカの国内線はパンデミック前に迫る
国内線の2月のRPKの世界平均は、前年同月比60.7%増で、2022年1月より18.1ポイント改善した。ただし、2019年同月比では21.8%減だった。
なお、主要市場での成績はばらつきが大きく、めざましく回復している市場もあれば、回復が遅れている市場もある。たとえばアメリカでは前年同月比112.5%で、先月より14.1ポイント増えた。2019年2月と比較しても、6.6%減でしかない。
オーストラリアは先月とほぼ変わらない36%増だったが、2019年同月比では53.8%減で、デルタ株の登場前の2021年第2四半期よりも少なかった。ブラジルは1月からわずかに減らすにとどまった。インドは先月よりも改善し、3.3%減となった。
先月大きな伸びを示した日本は、オミクロン株の感染再拡大によるまん延防止措置が講じられたせいで、2月は前年同月比35.1%増に留まった。2019年同月比では64.8%減となり主要市場でもっとも悪い数字となった。
中国市場は1月より31.1ポイント増の32.8%と大きく伸びたが、これは春節休暇で国内旅行が増えたことが影響した。一方、渦中のロシアが前年同月比でプラスを保ったのは驚きだ。2月24日にウクライナ侵攻があったが、ロシアの航空需要は前年同月比9.1%増だった。ただし、国内線の航空券の販売数から見て3月以降のRPKは大きく減少すると思われる。
「今こそ準備のとき」とIATA事務局長
IATAのウィリー・ウォルシュ事務局長は、この結果を受けて次のように話した。
「待ちに待った航空輸送の回復が加速する中、インフラ提供者は今後数カ月間の乗客数の大幅な増加に備えることが重要だ。一部の空港ではすでに、旅行者数の増加に伴い、長蛇の列が発生しているとの報告がある。4月17日前後は多くの市場でイースター休暇の旅行者が急増するが、その前からこうした状況になっている。北半球の夏の旅行シーズンのピークは、旅行と観光にとって極めて重要なので、今こそしっかり準備をするときだ」
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