インタビュー

観光カリスマ 山田桂一郎氏⑥

2008.02.10

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■データが示すもの

【アジアからの旅行者】
東アジアの出生率(資料提供:日本政策投資銀行 藻谷浩介参事 からの提供、共同作成)
東アジアの出生率(資料提供:日本政策投資銀行 藻谷浩介参事 からの提供、共同作成)

実は、日本よりも他のアジア諸国のほうが出生率は低くなっています。中国に関しては政府のホームページでも2020年以降は人口が激減すると発表しています。このことを考えると、将来的に東アジアのマーケットからの大量集客の仕組みには限界がくることが目に見えています。近年、東アジアマーケットも個人旅行化とリピーター化が進んでいます。これまでの団体旅行の姿はいつまでも続きません。でもこの現状を知っている人はほとんどいないというのが事実です。

【国内マーケットの限界】
日本の人口増減(資料提供:日本政策投資銀行 藻谷浩介参事 からの提供、共同作成)
日本の人口増減(資料提供:日本政策投資銀行 藻谷浩介参事 からの提供、共同作成)

日本のモノが売れていた時代は単純に日本の人口が過去、爆発的に増えていたからです。戦後、これまでは年間約100万人ずつ増えていた人口が、今後は平均して年間約80万人ずつ減っていくのです。このことが意味するのは、人口減少と共に市場が急速に縮小するということです。今後は、国内マーケットだけで消費を上向かせることは無理なのです。そして、すでに激減しているのが年齢20~59歳までの世代人口です。この世代は、基本的に自分たちでお金を稼ぎ、消費し、税金を納める人たちです。この世代人口が1995年のピーク時には約7100万人いたのですが、後2年後の2010年には約600万人減ってしまい6500万人になります。この結果、自動車産業へも大きな打撃を与えています。世界中で車を売り、1兆円企業となったトヨタでも、この数年間はダイハツの軽自動車を合わせた国内の新車登録販売台数が減っています。19歳以下と60歳以上は基本的に新車を購入しないマーケットです。更に後12年後の2020年には、この世代人口が約6000万人にまで減少をします。国内で消費が将来的に減少していくのは明白です。観光産業も例外ではありません。今後は、本格的にインバウンドをやっていかなければいけないという状況にきていることがわかります。

20~59歳の人口増減(10年前)20~59歳の人口増減(現在)20~59歳の人口増減(15年後)
20~59歳の人口増減(左から10年前→現在→15年後)
(資料提供:日本政策投資銀行 藻谷浩介参事 からの提供、共同作成)


今回、山田氏への取材を実現させていただいた通訳案内士高宮暖子さんよりコメントをいただきました。どうもありがとうございます。

観光カリスマ山田桂一郎氏と通訳案内士高宮暖子氏

このたび、山田桂一郎さんのインタビューにご一緒させていただきました、通訳案内士の高宮暖子です。やまとごころインタビューを記念して、心ばかりのコメントを寄せさせていただきます。

まずは観光、なかでもインバウンドツーリズムにかつてない注目が集まっている今のこのタイミングで、山田さんのお話が掲載されたことを大変うれしく思います。というのは、山田さんのお話にインバウンドを持続的に成功させるキーがあると確信し、一日も早く、お一人でも多くの方に共有していただけたらと願うからです。

私が山田桂一郎さんに初めて出会ったのは、今から二年近く前のこと。「九州発見塾」とうい地域観光のイベントで山田さんのご講演をお聞きしたのがきっかけでした。以来、地域振興やインバウンドの分野を中心にご指導いただいています。そして今回、ポータルジャパン社様のご尽力のもと、山田さんに日本のインバウンドについて語っていただくことが、ついに実現しました。

これまで各地で山田さんのご講演をお聞きするたび、私は仕事観、人生観が180度変わるような強い影響を受けてきました。それまで何の問題意識も持たず、細々と通訳ガイドの仕事を受けていただけだった私が、総合産業としてのツーリズムのあり方や、お客様本位のホスピタリティ、本当の豊かさ、何がお客様を惹きつけるのかと考え始め、大義をもって仕事に臨めるようになったのです。それに、九州は九州でよいと思えるようになった・・・。これらはすべて、山田さんのおかげです。

ご講演での山田さんは、大変なご多忙にも関わらず、毎回エネルギッシュでテンポよく、新鮮で魅力的なお話をされます。周囲の方からよくお聞きする感想は、「実践に基づいているので説得力がある」、「データに裏打ちされている」、「時間の経過をまったく感じない」などで、私も大いに共感します。更に尊敬しているのは、語学業界で例えるならば、通訳にも翻訳にも耐えるコンテンツをお持ちであること。つまり、瞬発力と緻密性が両立する・・・これはカミワザ!ですね。

山田さんからいただいた数あるメッセージの中で、最も影響を受けたのは、「人に会うときは真っ白な状態で」。これは仕事上、特にホスピタリティ業界での人間関係において大切なヒントを含んでいます。国籍、見かけ、評判などでレッテルを貼らない、勝手にフィルタリングしない。おひとり、おひとりの人格を大切にする・・・。

嬉しいことに大抵の場合は、ネットやどこかで聞いた情報よりも、実際に自分の目でみる姿のほうがはるかに良く、観光の魅力はまさにそこにあると思うのです。人の、街の、そのときだけ、そこだけの瞬間的な輝きをお客様と共有し、明日を生きるエネルギーに転化できる・・・こんな素晴らしい仕事は他にない!と。

さて、この特集をお読みいただいている皆さまは、漏れなく、何らかの形で観光に携わっていらっしゃいます。観光に携わるというのは、何も特定の観光業に就いているということだけでなく、地域のコミュニティに参加していたり、日々の暮らしを大切にしていたりという日常的な営みも含みますから、皆さま、漏れなく全員、です。

山田さん曰く、’観光は感幸’、日本を豊かな国へと導く解決策であり、幸せになる術、私たちの生き様そのもの。ぜひ手を取り合って、日本の魅力を再発見し、育み、磨き、誇り、伝えていきましょう。

最後に、このようにすばらしいインタビューを実現し、お話をまとめてくださったポータルジャパン社の村山慶輔さん、加瀬雅彦さん、そしてご協力いただいた山田桂一郎さんに、心より感謝申し上げます。どうもありがとうございました。

 

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