インタビュー

株式会社三越伊勢丹 三越銀座店 店長 浅賀誠氏

2015.08.01

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受け入れ整備に積極的に挑む!

外国人旅行者に人気の街、銀座。ショッピングを目的に多くの国からやって来る、まさに「インバウンド消費」の最前線のエリアだ。今後は、市中免税店が増えるなど、新しい動きもあり、銀座の老舗、三越百貨店にインバウンドの現状を店長にうかがった。

目次:
三越銀座店のインバウンドにおける経緯
外国人スタッフについて
受け入れ整備について
昨年の免税枠拡大を受けての変化
今後の展望と銀座の可能性

三越銀座店のインバウンドにおける経緯について教えてください

インバウンドのスタートは、2010年9月に増床した時でしょう。
その当時のストアコンセプトは、「新しい価値を スタイルとして創造し 時代の扉を開ける店」というものでした。
おもてなしの追求をかかげ、さらに一百貨店にとどまらず、「銀座」という街全体の活性化に寄与することを重要な目的のひとつとしました。

その一環として、「外国人観光案内所」をM2階フロアーに開設しました。英語に対応し、銀座の街はもちろん、近隣の観光スポットのご案内も始めました。また銀聯カード対応のATMを設置したのも、この時からでした。

その後、免税売り上げ額の全館売上に対するシェアが順調に伸びていき、今年は驚異的な勢いです。
2012年は2%、
2013年は5%、
2014年は12%、
2015年は25%で、特に春節時や桜の時期は30%に迫るほどでした。

ターニングポイントとしては、昨年10月の免税枠拡大からで、伸び率が急加速しました。
やはり内訳としては、新しく免税対象になった化粧品を中心に売り上げを伸ばしていきました。年を明けてきてから、外国人の方々に情報が浸透してきたのか、化粧品の勢いが止まらず、前年の400~500%の伸びで推移しています。

インバウンドの国別では、中国が8割になり、圧倒的なシェアとなっており、中国の株価の下落には今のところ影響は感じていません。

春節を過ぎても免税比率が落ちないのは予想以上でした。以前は春節や国慶節のタイミングに大きく伸びて、その後すぐに落ち着くという流れでした。

今後いつまでもこの勢いが続くとは考えていませんが、オリンピックまでは伸びるのではないか期待はしています。

このように免税売り上げが伸びていますが、店舗単独としてインバウンドプロモーションを大きく行ってきたわけではなく、三越伊勢丹の本社が中心となって施策を取ってきました。

では、なぜグループ内で、三越銀座店が突出して外国人比率が高いのか。 それは、銀座地区に外国からの方々が集まるという理由があるからでしょう。つまり銀座という街の力によるところが大きいのです。決して店舗単独の力ではないと思います。

我々がやるべきことは、外国からの方々が気持ち良くお買い物をしていただけるための、受け入れ環境の充実にあります。

 

三越銀座店では、外国人スタッフを多く見かけますが?

はい、受け入れ整備として、外国人スタッフを採用しています。
実際に、中国からのお客さまにおもてなしをしていこうと思っても、中国語に関しては言葉の壁があります。タブレットを使った対応もありますが、やはり人が直接サービスするのが良いでしょう。

例えばストアーアテンダントというサービスがあります。
1階入口のインフォメーションカウンターの隣に、ストアーアテンダントを配置しています。
外国語で館内の案内をするだけではなく、必要に応じて一緒に売り場に同行して通訳をします。
中国語対応で現在10名がおり、今後も増員の予定です。

他には、通訳サービスがあります。常駐で中国語の通訳を8カ所に配置しました。各フロアーに中国のお客さまが来店されたらすぐにサポートできる体制となっています。

またM2階の免税カウンターは、昨年の免税枠拡大を受けて規模を大きくして、交替制ではありますが、総スタッフ数20数名で対応をしています。
このように外国からのお客さまへの対応は急ピッチで進めています。

受け入れ整備で他にどのようなことを進めましたか?

銀座店では、受け入れ整備については、常に新しいことに挑戦しています。実験的に試そうという姿勢があるのです。ですから、外部からのトライアルの提案についても積極的です。

いち早く、ホテルと提携したデリバリーサービスを始めました。お買い上げの商品をお泊りのホテルに別便でお届けするサービスです。現在でも続いています。

今年の春節の時期には、タブレットを使ったテレビ電話をトライアル採用。また、外国人向けに「Ginza miyage」というパンフレットを作成し配布しています。これは、現場から人気商品を選んでもらい編集しました。

CNNジャパンで30秒の三越銀座店の紹介コマーシャルを作りました。CNNが見られる全国のホテルで、放映されます。さらに、はとバス車内でも映像が流れます。英語の放送です。

この夏は、浴衣の着方などのイラスト入り解説書を作成しました。やはり浴衣は外国の方々には人気の商品ですから。国に関係なく、お土産としても喜ばれます。

さらに、外国の方向けにオリジナルの浴衣を開発しました。浴衣を着る際に、女性の方には、「おはしょり」が難しいと聞きます。そこで、おはしょりを省いた浴衣を開発しました。
おかげさまで、多くのメディアでも取り上げていただきました。

あと、意外に喜んでいただいているのが、地下の荷物一時預かり所です。ホテルをチェックアウトされると、外国からのご旅行の方はどうしても大きなキャリーバックを持っての移動になります。地下の荷物置き場に預けて、ゆったりお買い物を楽しんでいただいています。

今後は優良顧客の固定化も重要な課題でしょう。そのような施策も検討中です。

 

昨年の免税枠拡大を受けてどのような変化がありましたか?

昨年の10月の免税枠拡大は、売り上げデータからいっても、やはりインパクトが大きいですね
10月以降、免税手続きコーナーのカウンターの台数を増やしましたが、追いつかないのが現状です。長い列にお並びいただき、ご不便をかけています。

9月初めには、全館の改装に伴い、外国からのお客さま向けサービスをB1階に一元的にまとめております。その中では、免税カウンターで座ってお待ちいただけるなど、これまで以上に満足してショッピングいただけるよう努めております。

ところで免税枠拡大後、外国人の購買が増加しましたが、何でも売れているわけではありません。

4つのカテゴリーに集中しているのが現状です。「化粧品」、「宝飾」、「ハンドバッグ」、「時計」で、合わせると6~7割ぐらいになります。

内訳として、4つのシェアのうち、化粧品が一番多く、日本製が人気です。一方、ハンドバッグは海外ブランドが人気です。

やはり化粧品が売り上げを押し上げましたが、この9月で一巡しますので、伸び率アップは厳しいでしょう。

 

今後の展望と銀座の可能性を教えてください

今後のインバウンドについての新しい取り組みとしては、市中「空港型免税店」の導入があります。

8階フロアーを改装して、2015年内にオープンを予定しており、具体的な日程についてはもう少し先のリリースになるでしょう。

ハンドバッグや宝飾品などのラグジュアリーブランドや、化粧品、時計などの売れ筋のジャンルを取りそろえることになるでしょう。洗練された環境で、世界に類を見ない市中免税店モデルをご提供することをめざします。

これからも、銀座の街には多くの外国人旅行者が訪れてもらえるでしょう。

銀座では、各店舗が切磋琢磨していることで、ダイナミックに街が発展しています。来春には東急不動産の中にロッテ免税店が入ります。松坂屋の跡地に森ビルの商業施設の完成が控えています。

「世界の新しいもの、外国の方々には日本の一番いいものを紹介したい」という街のテーマが、100年前に銀座の商店街を作った際にありました。まさにショーケースのようだったのです。ブラブラ歩くのに適していて、百貨店、専門店等を見て回れる街構造になっています。
その伝統が今も受け継がれ、見やすくゆったりとした街で、それが外国人旅行者にも支持されているのでしょう。
その100年前のコンセプトを維持しながら、今後の銀座の街の発展に貢献していきたいと思います。

取材後記:
この春に就任された浅賀店長は、その前は日本橋店にいらっしゃった。わずか、地下鉄で2駅という近距離にも関わらず、免税比率が10%に満たない状況だという。銀座店の30%に迫る勢いとは大きな隔たりがあり、銀座という地名の力が外国人を引き寄せているのだろう。

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