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倉敷の有名ゲストハウス「有鄰庵」の創業者が、実践する新しい旅のスタイル

2017.01.27

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24日、渋谷のモンベルにあるイベントルームで、エコツーリズムセンター主催のセミナーが開催された。今回のゲスト講師は、岡山から来られた中村功芳(なかむら・あつよし)氏だ。倉敷の有鄰庵創業者であり、現在はNPO法人アースキューブジャパン代表理事として、ゲストハウス開業プロデューサーの活動をしている。既に30以上の開業に関わり、地域おこし協力隊、地域の住民や行政からの依頼も多い。

 

中村氏の提唱する「暮らし旅」は新しいスタイルを予感させる。地元では、何もないと言うところこそ、魅力的な宝があると言い切る。観光地ではないところを掘り下げるのだ。例えば、その田舎のおじいちゃん、おばあちゃんに村の想いを教えてもらい、そこにしかないホンモノを掘り起こしていく。

 

そのように中村氏自身も、小さな村に入り、ゲストハウスを立ち上げて、世界中から呼び込んできた。

 

活動していく中で、受け入れ側では、一軒の宿として考えるのではなく、包括的な連携をして、地域がまるごとおもてなし宿のような環境が大事だと考えるようになった。

その土地にしかない郷里を、世界中の人たちに伝え、暮らしている人たちに誇りを持ってもらうようになったのだ。

 

実際に観光地ではないところにゲストハウスを立ち上げ、外国人旅行者がやってくようになった。その秘訣は、そこでしかできない体験が、先にあるという。

宿にエアコンを付けなかったところ、最初はほとんど予約が入らなかったが、蚊帳体験をしてみたいということで、ブッキングがあった。その人の口コミで稼働率があがっていったそうだ。

また刀鍛冶の自宅兼工房に行き見学させてもらうコースをつくった。参加者から一人で5万円でも高くないという意見があったそうだ。

 

中村氏は、徹底的にニッチなところからのアプローチにこだわっている。

一方で、盛り上がってマスになってしまうとブレーキをかけることも大切だと指摘する。

 

以前、倉敷市の郊外に食虫植物が群生する場所があった。周辺には神社の跡地があり、当時の石段を登っての景観が素晴らしい。地元でも有名になってきたころ、いつのまにか食虫植物が失われていたそうだ。魅力的な宝があっても観光客が多く訪ねてくると危険な面もある。つまり整備しないほうが、観光地として長い目でみると良いのだ。

 

欧米で始まっているサスティナブルツーリズムの考え方に近いのかもしれない。地方こそマスを狙わず、徹底的に地元の魅力を掘り下げることが大切なのだろう。

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