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2021観光白書、DX推進や収益向上など観光再生に着手。インバウンド2030年に6000万人にも言及

2021.06.17

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政府は15日、2021年版(令和3年版)の観光白書を閣議決定した。観光白書は、毎年国会に提出されているが、今年は新型コロナウイルス感染症が観光分野にもたらした影響を幅広い観点から分析するとともに、アフターコロナを見据え、観光は地方経済活性化の切り札であるとして2030年にインバウンド6000万人という数値目標にも言及した。

GoToトラベルの効果薄く、日本国内の宿泊業では7万人の雇用損失

2020年の訪日外国人客数はコロナショックが襲った2月以降大きく減少し、前年比87.1%減の412万人となり、政府が掲げていた「2020年に4000万人」という数値目標は達成できなかった。訪日外国人旅行消費額も大きく落ち込み、前年比84.5%減の7446億円。世界全体での旅行市場損失額は約139兆円、2009年の世界金融危機で記録した損失額の11倍となる、過去最大の落ち込みとなった。世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)によると、2020年には、世界のGDPに占める旅行・観光業のシェアが約10.4%から約5.5%に半減、観光関連産業従事者は、2019年3億3400万人から2020年には2億7,200万人と前年比18.5%減となり約6200万人の雇用が失われた。

コロナ禍での雇用の損失は日本も同様だ。特に宿泊業では昨年の59万人から12%減の52万人となり、7万人の雇用が失われた。ただ、雇用形態ごとにみると正規雇用者で約8%減少、非正規雇用者では約15%の減少と差が2倍あり、日本の宿泊業が抱える安定雇用の課題が浮き彫りとなった。国内需要は7月から始めたGoToトラベル事業により11月にかけて一時的に回復傾向がみられたものの、12月には同事業が全国一律で一時停止されたことで、減少に転じた。

変化した観光トレンド、観光業の課題と再生に向けた取り組み

こうしたコロナ禍での新たな旅のスタイルとして、近場を観光するマイクロツーリズムやワーケーション、キャンプ、アウトドア、滞在型観光、分散型旅行などを挙げている。こうした旅行者ニーズの変化に対応した旅行コンテンツの造成や観光施設の整備を積極的に推し進める考えだ。

日本の観光業の課題として、宿泊日数の短さや月別旅行消費額の偏り、宿泊業に携わる人の低賃金、高い離職率などに言及。観光業の体質強化と観光地の再生に向け、DXの導入推進や、持続可能な観光取り組み例が示された。

観光地再生に向けた取り組みインバウンド向け環境整備も継続

苦しい経営状態が続く事業者に対しては事業継続、雇用維持のための支援を今年度も引き続き行うと同時に、短期集中で宿泊施設・観光地の再生を目指す。激減したインバウンド客の回復施策として、今年度は新型コロナウイルス感染症の状況が落ち着いている国・地域から、少人数分散型のパッケージツアーを試行的に受け入れる方針を明らかにした。外国人旅行者のニーズが特に高い多言語対応、無料Wi-Fiサービス、トイレの洋式化、キャッシュレス決済対応などは、昨年に引き続き全国的に整備を進める。また、インバウンド受入重点拠点となる「道の駅」に対しては、Wi-Fi整備や多言語表記などインバウンド対応に係る取り組みを支援する。その他にも、プライベートリムジン認定制度の導入、手ぶら観光カウンターの増設、富裕層向けの高単価・高付加価値の旅行コンテンツ造成にも力を入れる。また、日本各地のスポーツを体験できるスポットと周辺の観光地情報をセットで海外向けにアピールするほか、日本の農漁村部の魅力を外国人に知ってもらうため、農林水産大臣による「SAVORJAPAN」認定制度の拡充も目指す。

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