インバウンドニュース
インバウンド業界を救うべく、アジアインバウンド観光振興会が国交相に陳情書提出
2021.11.26
コロナ禍で観光需要が激減し、観光業界は苦境に立たされている。特に外国人観光客への門戸が閉ざされている状況で、インバウンドのランドオペレーターは長期間にわたって業務がストップしている。それを受け、一般社団法人アジアインバウンド観光振興会(AISO)は22日に国土交通大臣に対し、新型コロナウイルス感染症で影響を受けるインバウンド観光業界に関する陳情書を提出した。
経営と環境整備の2つの支援を要請
25日に開催されたAISOの記者会見の冒頭で、王一仁理事長は、「インバウンドはデリケートなもので環境の変動で変わってくる。日本の観光立国の道のりは平坦ではなかったが、最近はコロナ禍で2年間も休みの状態になっている。ここで政府の力を借りないといけないと考えて陳情書を提出した」と話した。
陳情の内容は、経営支援と環境整備支援の2つで、前者は雇用調整助成金特例措置の延長や家賃支援給付金の支給再開など、また後者ではワクチンパスポート活用による査証免除措置の停止の撤廃やトラベルバブルなどの構築、GoToトラベルのインバンド版の予算組みなどを要求している。
国内ランオペの困窮状況、売上8割減 人員削減や休職など厳しい状況
続いて、石井一夫専務理事が、インバウンド業界の困窮状況を説明した。国内ランドオペレーターに関する最新調査(日本インバウンド・メディア・コンソーシアムによる。回答件数は40件)では、2年連続売上8割ダウン、半数以上の従業員を休ませている会社が53%あり、人員削減を余儀なくされている企業も半数以上あるとのこと。また、3社に2社が助成金がなければ雇用の維持が難しいと考えていることがわかった。AISOの会員のなかでも、コロナ禍で事業を廃業、もしくは退会したインバウンド産業に携わる会員は、ランドオペレーターの20社を含め112社にのぼるという。
外国人観光客の受け入れを再開していない時点で、先行きを見通すのは難しいが、この調査ではインバウンドが2019年のレベルに復活するのは2023年になるとの見解だった。それまでに従来型の支援では経営継続が困難とする回答が45%、また急回復した場合に不安を持つ企業が75%あり、その理由として「取引先が倒産や事業縮小をしていて回復の波に乗れない」「協力会社や社外の委託先が減っていて対応ができない」と挙げた企業が多かった。
トラベルバブルなどで訪日旅行再開に期待
訪日客全体の2.5割を占める中国の訪日旅行再開については、ゼロコロナ政策で当面は海外旅行は非現実的だが、一方で、タイやシンガポール、台湾、韓国などトラベルバブルを構築して、観光再開に踏み切っている国もあるわけで、日本としてもそういう国々から徐々に、相互の待機なしという形で再開していくようお願いしていくとのことだった。
また、観光再開時に重要なのが感染予防対策であり、業界全体として徹底的にやることが重要であり、AISOでは「新型コロナウイルス感染予防への取り組み」を策定、現地海外の旅行会社に対するお願いを徹底、海外の旅行者に対する情報提供などをするという。
欧米と比べて国境が開かれていないという印象の強いアジアだが、観光が国の産業の主体となっているタイやシンガポールではいち早くトラベルバブルを開始した例もある。
今回の陳情について、AISOは、「日本のインバウンド業界には回復に時間がかかっていることで忘れられるという不安があるとして、国内ランドオペレーターの支援を政府に求め、今後もポジティブに対応していきたい」という。