インバウンドコラム

「幸運錦鯉」になれ!――2億IMP記録した、あの話題の国慶節キャンペーンの「裏」 (後編)

2018.11.09

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前編では、2億IMP(広告がユーザーに表示されたインプレッションの回数)を達成した「幸運錦鯉」キャンペーンの盛況と実態を紹介しました。「こんなインパクトのあるキャンペーンを成功させるのに、一体いくらマーケティングフィーがかかったのだろう?」ーーこんな疑問を思い浮かべた方もいるかもしれません。

いくらかかったと思いますか。
実は、なんと、0円です。

無料でここまで成功したの?!  信じられないかもしれませんが、これが事実です。では、どうやって、0円でキャンペーンを成功させたのでしょうか。わずか1週間の抽選キャンペーンですが、そのマーケティングの秘密を時系列で振り返ってみていきましょう。

 

秘密その1:
【開始前】誰でも参加できる、ハードルZEROを徹底

ひと事でいうと、AlipayのWeibo公式投稿記事をシェアするだけで、抽選対象になれる、という、ハードルが非常に低くてわかりやすいルール設計につきます。

抽選キャンペーンは珍しくないのですが、ただ、よくあるのは、まずはメール登録や、○○円以上消費した方が対象、など、参加資格が設定されています。ところが、Weiboのオンライン抽選キャンペーンは、基本シェアするだけでいいのです。これは今回の「幸運錦鯉」キャンペーンに限らず、中国のオンライン抽選イベントの定番です。

今回ラッキーな「幸運錦鯉」として選ばれた北京在住の26歳女性も同じく、Weibo投稿をシェアするだけで参加していました。

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▲今回の当選者は、複数の人や企業からのシェアを経て本キャンペーンの投稿にリーチし応募した

 

また、短時間でこれだけ拡散されたのは、開始前から事前予告してしっかりウォーミングアップを行ったことも寄与しています。

 

秘密その2:
【開始直後】200社グローバルパートナーの巻き込みと、ハーモニー

前編でも紹介しましたが、今回Alipayの「幸運錦鯉」国慶節キャンペーンは、3つの記録を残しました。

一つ目は、100万回シェア到達最短時間記録(※6時間)

二つ目は、企業プロモーション史上、シェア参加動員数最高記録(※300万人)

三つ目は、企業プロモーションキャンペーンで初めて「Weibo話題ランキング1位」

この成功は、偶然なものでしょうか。

確かに、Alipay公式Weiboアカウントは元々1400万人フォロワーいるので、最終的には、300万人のエンゲージメントは実現可能な数字かもしれません。しかし、キャンペーン開始後6時間ですぐにも100万人、24時間で200万人と、すごい勢いで参加者数が増えたことは、そんなに簡単なことではありません。

その秘訣は、景品を提供してくれた200社のグローバルパートナーとのコラボにあります。

例えば、グローバルパートナーの各社もWeiboを通じ、「幸運錦鯉」キャンペーンの情報を拡散。告知に大きく貢献しました。下記は、オンラインショッピングサイト天猫(Tmall)と旅行専用プラットフォーム飞猪(フリギー)社のWeiboの画像です。


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▲「幸運錦鯉」キャンペーン情報を拡散する天猫と飞猪社のWeibo

 

また、中国版のラインにあたるWechatで、グローバルパートナー200社の担当者336人とのグループチャットが作られて、リアルタイムで連携してキャンペーンを拡散していくシステムとなっていました。

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▲グローバルパートナー200社の担当者336人とのグループチャット。他社の動きも知ることができるため、競争原理が働いた

 

このように、このキャンペーンの成功はまったく偶然ではなく、実は、裏ですべてのディテールが設計されていたのです。

 

秘密その3:
【終了前】ショートムービー「短視頻」による景品の見える化と効果最大化

「幸運錦鯉」として選ばれた「ラッキーガール」が発表された10月7日に、キャンペーンは終盤を迎えました。そこでブームが終わるかと思いきや、なんと、Alipayから景品の動画が発表されて、さらなる話題を呼びました。

上記の短視頻の動画に登場する、赤い幕の上に黄色い文字でずらりと書かれているのが、今回 「幸運錦鯉」に選ばれた北京在住のラッキーガールが受け取った景品のリスト! 長い長い赤の幕に200社から提供された景品リストが登場する動画はインパクトがあり、なんと再生回数は4000万を超えました。

キャンペーン終わってちょうど1カ月経ちましたが「幸運錦鯉」という言葉は、もはや流行語となり、中国ではマーケティング用語としてもすっかり定着してきています。

 

【まとめ】

2億IMP記録した、「幸運錦鯉」国慶節キャンペーンの「裏」を紹介しましたが、この成功は偶然ではなく、実は細部まで設計された、中国流マーケティングの集大成だったという事例です。裏返すと、ここまで設計してプロモーションを工夫しないと、なかなかヒットできないのが中国マーケティングであり、それに携わることは醍醐味です。

2018年のインバウンド市場は、デジタルマーケティング元年と言われていますが、中国マーケティング元年とも言えます。

日本で中国マーケティングが難しい、とよく聞きますが、一方で、Weibo、WechatなどのSNSプロモーションから、キャッシュレス決済、旅行OTA、または、クチコミサイト、越境ECまで、複合的なマーケティングを模索しはじめた企業と地域も増えました。

中国マーケットを攻略するには、言語の壁より、中国市場の重要性に対する認識、中国人ユーザーのインサイトを理解したい意欲、そして、中国を熟知するパートナーとのリレーションづくりの意識、にあるのではないでしょうか。

 

 

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