インバウンドコラム
新型コロナウイルスが世界的に拡大し、感染症の収束時期も見えず、訪日客や国内観光客が戻る時期のめども立たないなか、観光事業者は苦戦を強いられています。かつては欧米豪圏を中心に多くのインバウンド客でにぎわっていた広島も、政府がとった外国人入国拒否に伴う観光客減で大打撃を受けています。今回取り上げるのは、広島で外国人観光客向けにサイクリングツアーを提供するsokoiko!の石飛聡司氏。4月以降は予約ゼロという壊滅的な状況での新しい挑戦についてお伺いしました。
—簡単な事業概要及び、これまでの取り組みについて教えてください。
訪日外国人観光客向けのサイクリングガイドツアーsokoiko!を運営しています。直営で広島市内中心部に3コース、提携先との協業で瀬戸内海に浮かぶ江田島で1コース、東京都墨田区でも1コース全部で5コースの運営をしています。主要な観光地だけでなく、その土地ならではのローカルな魅力や地域に息づくストーリーを核としたツアーを作っています。インバウンド比率は約95%で、欧米豪のFITの方の利用が多いです。内訳は、オーストラリアが約50%、次いでイギリス、アメリカが多く、他のヨーロッパ各国からも参加いただいています。
—新型コロナウイルスの拡大を受けての現在の観光客や訪日客の状況について教えてください。
お客様の減少が顕著になったのは3月初旬ぐらいです。3月~5月にかけては例年繁忙期にあたるため、基本毎日、少なくとも2日に1件は予約が入る状況でしたが、日に日に減少していきました。キャンセルの連絡が入るようになったのは3月半ば過ぎからです。それでも、3月はすでに訪日していたFITゲストの利用がありましたが、それでも前年比でみると約40%程度、また目標に対する進捗ではわずか20%でした。
これまでの成長率を考慮すると、3月~5月は最低でも月100名のゲスト、売り上げも100万円以上を見込んでいました。ただ、4月以降のツアーは全てキャンセル、お客様はゼロです。なお、7月以降の予約について、今のところキャンセルの連絡はありませんが、正直なところどうなるかわかりません。
—新型コロナウイルスによるお客様減少の影響を受けて、直近でできるとして始めた取り組み、これから行おうとしている取り組みを教えてください。
過去の振り返りと改善点の洗い出しで、顧客満足度向上への準備
2019年はラグビーワールドカップといいう国際的なイベントの影響もあり、欧米圏を中心に非常に多くのゲストの方に利用していただきました。特に昨年の10月は1カ月で300人ぐらい問い合わせがあったのではないかと。一方で、弊社で受け入れられるキャパシティ以上の連絡があったため、お断りをせざるを得ない状況に陥っていました。そのため、このタイミングで新しいガイドの育成やオペレーションの変更、これまでのツアーを振り返り改善点を洗い出しさらなる顧客満足を得るための方法を模索するなど、チームミーティングの時間を取ったり、新規のルート発掘を行うなどしています。
オンラインを活用した新しいツアーの開発
弊社が行うツアーの中でも一番人気があるのは、広島で平和に関するストーリーを巡る「ピースツアー」ですが、より多様なニーズに応えるため、視点を変えたツアー造成にも取り組んでいます。ただ観光地を巡るだけでなく、地域の素材を活かしたローカルな体験を提供するという事業の軸をもとに、今考えているのは料理体験のテイストを盛り込んだツアーです。オンラインで開催できればと考えていますが、どのような形にするかは今まさに検討しているところです。
Youtubeを活用し、動画で地域の魅力を広く発信
「sokoiko!チャンネル」というYouTubeチャンネルを開設し、主に道案内や地域のスポット紹介などの情報を発信しています。sokoikoのツアーの一つに、広島の江田島を巡るツアーがあるのですが、実はこの島へのアクセス方法やツアーの集合場所までの行き方が難しく、ツアー申込客から「行き方が分からない」「広島駅まで迎えに来てほしい」といった問い合わせが頻繁にありました。これは外国人観光客に限らず、日本人からもです。そのため、今回のこの機会を利用して、江田島までのアクセス方法を解説する動画作成し配信しました。
またそれだけでなく、地域の有名なスポットやおすすめの飲食店へのアクセス方法を解説したり、観光周遊バス乗り場までの道案内を動画で説明するなど、サイクリングツアーだけでなく地域を広範囲に楽しんでもらうための情報を発信するべく、今の時期に動画制作に取り掛かっています。
—観光客の需要が回復した際に向けた準備や、今回の危機を受けてお客様の見直しなど、何か検討していることがあれば教えてください。
訪日客向けツアーを日本人にも。内容を見直してサービス強化
プロモーションについては先ほど述べた動画配信を筆頭に、これまでやりたいと思っていたものの時間が取れず、できなかったジャンルにチャレンジしています。
なお、これまでのツアーは、訪日外国人観光客をメインターゲットに据えていたこともあり、外国人向けのプロモーションをメインに取り組んでいました。ただ、以前参加してくださった日本人の方に「このツアーは日本人にも刺さるからもっと日本人向けにも宣伝したほうがよい」とのコメントをいただいたこともありました。今回空いた時間を活用して、日本語のホームページを充実させるべく、画像や動画の撮り直しやツアー内容も日本人向けに微調整するなど、日本人向けのサービスも強化しています。
具体的には、最低限の基礎知識があることを前提とした日本人向けピースツアーは、さらに充実させていく予定です。広島復興のストーリーには、プロ野球の広島カープやお好み焼きなど、戦後復興に力を与えた要素も取り入れ、これまで以上にディープな目線も含んだものにしていく予定です。
特に、日本人向けのツアーは「英語はできないけどガイドをしたい」人にも活躍してもらえるチャンスになるので、強化していきたいです。
これ以外にも、新しいサービス開発などいろいろ進行中の案件もたくさんありますが、今後は、国内のゲストも視野に入れ、真の意味での「世界中」の旅行者に楽しんでもらえるサービスへと進化させていきます。
—最後に、同じような状況にある観光事業者の方たちへ一言メッセージをお願いします!
どう考えても難局の現状。正直弊社も大きなダメージを受けて甘いことは一切いえない状況です。ただ、やはり「いつかは必ず終息する」そして「来たかったのに来ることができなかったゲストがいて、みんな日本に来るのを楽しみにしている」ということを信じて、なんとしても生き残って最高の思い出をまたゲストに作ってもらえるよう頑張りましょう!!
この時期にこの仕事をしているのは運命だと思い、今自分たちの頑張りが未来の観光を創っていくぐらいの大げさな使命感で私たちも頑張ります!!
(執筆:石飛聡司氏 取材 編集:堀内祐香)
株式会社mint 代表取締役社長 石飛聡司氏
広島市出身。アパレル会社から独立して㈱mintを創業。
やまとごころ編集部では、新型コロナウイルス拡大による大打撃のなかでも、「今」着手できることや、アフターコロナに向けて準備する観光事業者の取り組みを募集しています。
ご協力いただける方は、やまとごころ問い合わせフォームより「やまとごころ.jpについて」を選択しご連絡ください。おって編集部よりご連絡いたします。
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