インバウンドコラム

【体験レポ】10年以上継続開催する大阪ウォーキングツアーのパイオニアから学ぶ「地域の魅力を伝えるガイディングの4つのポイント

2024.07.19

山本 紗希

印刷用ページを表示する



訪日客に人気の体験ツアーに参加してその内容や様子を紹介するシリーズ。今回、私が参加したのはオールスター大阪ウォークの「Osaka Walking Tour」ツアーです。大阪駅、新世界、道頓堀を徒歩+大阪メトロでめぐる3時間、有名スポットから、生まれ育ちが大阪の私でも知らないスポットまでを訪れました。共同代表の安藤美直子さんにお伺いした10年以上続けてきたツアー運営のポイントや工夫をご紹介します。

 

待ち合わせの工夫、清潔な洋服にカラフルな上着でお出迎え

「Osaka Walking Tour」は、毎日10時開始。3時間で大阪駅、新世界、道頓堀の3エリアを巡るツアーです。大阪生まれ育ちの私にとって、人気の3エリアをたった3時間で巡るということが俄かに信じられず、時間がオーバーするんじゃないかとツアー参加前に思っていましたが、実際は時間きっかり!3エリアを満喫してきました。

今日のガイドは共同代表の安藤美直子さん、神戸生まれ、今は大阪にお住まいで、全国通訳案内士の資格を持ち、今回のツアーだけではなく多くの外国人観光客の方をご案内してきました。集合場所は、JR大阪駅中央改札口前に位置する観光案内所です。近くにはメトロの梅田駅、西梅田駅、東梅田駅、阪急阪神の大阪梅田駅、そして少し離れたエリアにJRとメトロの新大阪駅があります。大阪在住者以外にはダンジョンと呼ばれる大阪駅、集合場所を見つけるのが大変な方がいらっしゃるそうで、この場所でいいのか未だに悩んでいると安藤さんが話していました。雨が降っても問題がなく、お手洗いが近く、誰にとってもわかりやすい場所、集合場所の選定1つでも難しいと改めて感じました。

事前に黄色の旗が目印ですと案内がきていたので、近くまで行くことができれば直ぐに見つけることができました。また、安藤さんの服装にも注目。赤いカーディガンを羽織っていました。赤い色は見つけやすいようにかと尋ねたところ、「その通りです」と回答がありました。お客様のためにカラフルな服装で大きなキャラクターが旗にぶら下がったガイドや添乗員も見かけますが、清潔感のある服装に1枚明るい色をいれるというのはテクニックの1つであると感じました。いろいろなお客様を相手にするため、誰にでも好かれる服装って大事ですね。


▲参加者を待つ安藤さん

ツアーの参加者は、アメリカからきた男性3名組、オーストラリアからきたカップルの合計5名でした。参加費は、7,000円で途中で食べる串カツ2本とノンアルコールドリンク1杯分が含まれています。全員集まったところで、各々自己紹介をして、ツアー代とは別に必要となるメトロ代の説明を聞きます。ここで、ICカード「ICOCA」の説明があります。この日の参加者は誰もICカードは持っておらず、「3回以上乗り降りするなら1日乗車券がお得だよ」という話を聞いて、3名は1日乗車券を購入、2名は切符を購入しました。「ICOCAも大阪の方言なので、今日は次のスポットへ異動する前に、いこか~とみんなで掛け声をしましょう、リピートアフターミー」と声掛けがあります。「いこか~!」とみんなで元気よく声を出して出発します。

 

3時間で大阪駅、新世界、道頓堀の3エリアを効率よく回るツアー

最初は、大阪駅にある時空の広場、和らぎの庭、風の広場を巡ります。日本では電車の時間が正確なので、乗客が時間を把握するためにも、駅周辺のあちこちに時計があるよと教えてもらい、みんなで時計を探しながら歩きます。その後、大阪駅にあるテレワークスポットをご案内。今回の皆様は、東京から旅をしてきて、大阪は最後ですという方ばかりでしたが、テレワークスポットについては説明されて初めてなるほど、しかも日本人らしい理由だよねと興味深そうに写真を撮っていました。


▲テレワークスポットに興味津々のゲスト

その後、阪神百貨店の地下の食品エリアを抜けて、大阪メトロの地下鉄の駅に到着。百貨店に入る前、「買物に興味がある方はいますか?」と安藤さんが聞いたときには誰も興味がなさそうでしたが、実際に入ってみるとお寿司の安さにびっくり、お菓子に興味をもったりと楽しんでいる様子でした。興味がないからこそ自分たちだけでは入らないだろう場所なので、ちょっと通り抜けるだけだから入ってみましょうねというのは良いご案内だと感じました。

ここまで約1時間。3時間ツアーなので、ぴったり3分の1の時間で、大阪メトロの御堂筋線に乗って動物園前駅へ移動します。車内では、混雑の邪魔にならないように移動しながら全員とお話していました。ガイドツアーでは、積極的に話しかけてくださるお客様につきっきりにならないことが意外と難しいのですが、安藤さんは全員と上手にコミュニケーションをとっていました。

今度は大阪駅と全く違う雰囲気の新世界へ。ジャンジャン横丁から通天閣前まで歩きながら、馴染みのお店の方や人力車の俥夫など、大阪ならではの愉快な人たちとお喋りして、写真を撮ります。電車の中で教えてもらった大阪弁を「おおきに」とさっそく使っている参加者もいました。


▲タバコ屋のお姉さんから折り鶴のプレゼント

ちょうど1時間30分ほどのタイミングで、串カツ屋さんに入って休憩をとります。ツアー代に含まれている、牛・チーズ・玉ねぎ・じゃがいもから選べる串カツ2本とノンアルコールドリンクで乾杯。ほとんどの参加者がおすすめとして紹介されたラムネにトライしました。串カツは初めて食べた方ばかりで、チーズが人気!3時間歩きっぱなしはさすがに辛いですし、串カツ2本はおやつのような感覚で食べられて良かったです。


▲ガイドさんおすすめのラムネを開ける参加者たち

その後、刃物工房へ行き、10分ほど刃物の歴史を聞きながら、トマトやニンジンを実際に切る体験をします。今回は、料理人の方もいたので、ずっと野菜を切って楽しむ参加者もいました。その場で購入した参加者はいなかったものの、大阪は刃物が有名と伝わり、料理人の方はパンフレットを受け取り、後日ゆっくり訪れようかなと話していました。

あと45分程度というところで、大阪メトロに乗ってなんば駅へ移動します。パチンコやカラオケといった日本ならではの娯楽の説明を聞きながら向かったのは、法善寺。水掛不動尊の手前で、神道と仏教の説明を聞きます。苔に覆われた姿が特徴的な水掛不動尊はすでに外国人からも人気のスポットですが、どこに水をかけたらいいんだろうと迷う場所でもあるので、一緒にお参りしてもらえるのは安心です。

▲水掛不動尊でお参り

最後は、道頓堀沿いの看板をみながら、えびす橋を渡って橋の袂へ。橋の上でグリコポーズをして写真を撮る方が多い中、安藤さんが案内してくださった橋の袂は、広いスペースがあり、ゆっくりと写真を撮ることができました。


▲グリコポーズでツアーフィニッシュ

3時間で3エリア、きっちり時間通りに終了しました。大阪の歴史や文化、方言、有名スポットからちょっとニッチな場所まで、コース選定が素晴らしかったです。終わって疲れ切ってしまったということもなく、まだまだ午後から遊ぶぞという体力も十分に残っていました。

 

地域の魅力を伝えるガイディングの4つのポイント

今回参加したツアーは、コース選定も素晴らしいのですが、ガイディングに工夫があると感じたので、4つのガイディングポイントを考察します。決して、ガイドのキャラクターに頼ったものではなく、どれも真似ができるポイントです。

1.お喋りの中に次のスポットの伏線を入れ込む

安藤さんのお喋りはどれも実は伏線を貼っており、次に訪れるスポットで必ず回収があるというのがポイントの1つでした。例えば、集合場所では大阪と東京のエスカレーターの立ち位置の違いの説明がありました。その後、エスカレーターに乗った際には、「さっき説明した通り、大阪は右側で止まるよ」とありました。また、くいだおれ太郎と同じ眼鏡をかけた人力車のお兄さんに会ったあとに、お土産物屋で本物のくいだおれ太郎を見たお客さんが「人力車のお兄さんがいる!」と喜んでいました。


▲くいだおれ太郎と同じ眼鏡をかけた人力車のお兄さん(写真右)と記念撮影

ほかに、日本語で1から5まで数字の数え方を教えてもらった後、串カツ屋で「ビーフいち、チーズいち」等と使ってみるタイミングがありました。細々とした伏線が本当にたくさんあり、自分で伏線回収したり、実際に体験したりと、説明をきくだけでは覚えられないものがきちんと想い出として残るお喋りでした。

2.方言は教えるだけではなく、使うきっかけを作る

方言を教えてもらうというのもポイントの1つでした。いくつか教えてもらった大阪弁も直ぐに使える単語で、「いこか~、おおきに、ほなまた」と特に新世界では多くの人たちと会えたので、まるで地元の人たちとお喋りしたような気分になりました。

3.TPOに合わせたご案内

これも重要なポイントとして、安藤さんはTPOにあわせた案内が上手であると感じました。大阪駅では少し落ち着いた雰囲気でしたが、新世界や道頓堀ではユーモアを交えながら、地元の人たちと交わってといった具合です。集合場所では目立った黄色の旗は、写真を撮るとき以外はしまっていました。いかにも観光客のツアー中ですというご案内ではなく、地元の人に町を案内されているという感覚になりました。

4.誰でも参加できる歩数のツアー

今回のツアー全体を通した歩数は、5000~6000程度でした。3エリアを巡るのでとんでもなく歩くのではと参加前は少し心配していたのですが、乗換や移動の効率の良さがこの歩数に表れていると感じます。

 

継続のコツ、参加者だけでなくガイドにとっても利便性を高める方法

「All Star Osaka Walk Tour」は、全国通訳案内士の方が集まって、英語、フランス語、中国語(北京語・広東語)、韓国語で行っているガイドツアーです。2011年東日本大震災が起こった直後、大阪から元気を届けたいと始められました。当時、観光客は京都や奈良にはいくけれど、大阪は観光地としては認識されていないと感じていて、他にツアーはなかったそうです。

参加者は、今回と同様にアメリカが1番多く、次にオーストラリアですが、最近はインドからの参加者が増えており、1人参加、ファミリー、夫婦と参加される層に偏りはないそうです。

予約経路としてはOTAのTripadvisorやViatorがメインで、他にホテルや観光案内所との繋がりや、10年以上やっているとリピーターからの紹介もあるそうです。Tripadvisorの口コミへの返信がほぼ100%。それも1つ1つ丁寧に返信をしているのが印象的でした。広報担当の方がすべてに返事をしているそうです。また、価格も徐々に値上げしている状況もお伺いしました。7,000円にあげたのは2023年からで、お客様の満足度や予約状況に影響はでておらず、「安い」と感じるお客様もいるそう。円安の影響もありますが、OTAからの予約で手数料がかかるため、自分たちの利益確保をするため値上げに踏み切ったそうです。

ツアーは毎日開催されていますが、ガイドは全国通訳案内士の50~70代の男女が、曜日ごとに担当を決めて実施しています。予約がなければ仕事がないという不安定さも持つガイドの仕事ですが、曜日固定であれば、他の仕事も調整しやすいので、継続しやすいポイントだと思います。また、毎日開催されているので、お客様も申し込みやすく、双方にとってメリットがある仕組みだと感じました。

安藤さんにツアーのポイントをお伺いすると「大阪やから笑ってもらってなんぼ。私ら自身も楽しいと思えるようなフレンドリーなガイディングを心がけてます!」と話していました。たった3時間のツアーでもガイドをしている安藤さんが楽しい!大阪が好き!というのが伝わってきて、これがやはり参加者の心を捉える1番のポイントだと私も感じました。

毎日開催されていて、13時には終わるので、午後を有意義に使えるため参加しやすいことも魅力の1つですので、大阪に行く機会があれば1度参加してみてください。

▼オールスター大阪ウォークの「Osaka Walking Tour」はこちら

最新記事