インバウンドコラム
訪日客に人気の体験ツアーに参加してその内容や様子を紹介するシリーズ。今回、私が参加したのはKen’s Tours Kyotoの「Discover Geisha Arts: Gion Cultural Walk & Geisha Show」です。1名1万6500円~というグループツア―としては高単価なツアーですが、Tripadvisorでは200近い口コミを集め、5点満点を獲得している人気のツアーです。実際に参加してわかった参加者たちを魅了するポイントや工夫、代表のケンさんから伺ったお話を紹介します。
前半は徒歩ツアーで祇園文化を学ぶ、ガイドによる声掛けで誘導
ツアーは、祇園エリアを1.5時間ほど徒歩で巡ったあと、食事場所へ移動して1.5~2時間ほど食事を楽しみながら芸者ショーをみるという流れで、火曜、金曜の10:30〜、14:30〜、18:30〜と1日3回開催されています。
集合場所は、川端四条の出雲阿国像の前です。18:30頃には、さまざまなツアー会社やガイドが祇園ツアーに参加するお客様を集めている状況でした。今回のツアーガイドのスギさんと会うのは初めてでしたが、Ken’s Tours Kyotoのロゴを掲げてくださっていたので、すぐに会うことができました。ガイドのスギさんは、京都在住11年、現在30歳で、以前はホテルのコンシェルジュをされていたそうです。スギさんのホテルマンのようなピンと背筋を伸ばした立ち姿や、すっきりとした髪型、はきはきとした声は好印象。高単価なツアーの場合、ガイドも髪型や服装に気づかいが必要だと感じました。
スギさんの自己紹介の後、各々が自己紹介します。今回の参加者は、NY、カリフォルニア、ポーランドからきたカップル3組でした。今回に限らず、欧米豪の参加者が大半だということです。ツアー行程を説明した後、歌舞伎の歴史や、芸者、舞妓、芸妓の違いについてお話がありました。
最初に訪れたのは、花咲大黒天。ここでは神社とお寺の違いに軽く触れた後、写真を撮ってもいいよと伝えていました。神社仏閣に行くと、写真を撮っていいのかなと迷う参加者が多いので、ちょっとしたお声掛けで安心して撮影ができると感じました。
その後、祇園白川へ移動し、人が少ないエリアでストップしながら、舞妓の年齢や仕込み期間、屋形のシステム等について学びを深めます。この辺りから徐々に参加者からの質問が多くなってきて、案内をしながらさまざまな質問に即回答していました。例えば、「エージェンシー(置屋・屋形)はたくさんあるの?」「彼女たちは学校に行かないの?」等、日本人の私でも学びになる質問や回答がたくさんありました。Ken’s Tours Kyotoは、舞妓や芸妓、祇園に関する内容で答えられない質問はないのではないかと思わせる回答ぶりでした。もしかしたら実際には回答しづらい質問もあったのかもしれませんが、「このガイドさんはどんな質問を投げかけても回答してくれる」と私たちに思わせてくれました。私は、短い時間で参加者からの信頼を得ることもガイドツアーにおいては大切な要素の1つと考えます。その信頼を得るための方法の1つが、質問回答の的確さにあるかもしれないと今回のツアーで感じました。
その後、新橋通へ移動し、「一見さんお断り」の文化を紹介し、ここでも舞妓や芸妓に関する説明がありました。ツアーを通して、ずっと舞妓や芸妓に関するお話を聞いているのですが、飽きることはもちろんなく、もっと知りたい!面白い!と引き込まれていく様子が、参加者から感じられました。
お茶屋で食事しながら、約1時間半の舞妓ショーを堪能
再び、祇園白川へ出てきて、演劇の神様「辰巳大明神」をご案内、花見小路や建仁寺といった有名スポットもめぐりながら、最後にKen’s Tours Kyotoの事務所もある、花街の宮川町へやってきます。ここで、徒歩ツアーは終了し、「ごはんや 蜃気楼」というお店に入ります。ここまで祇園文化を学んできた参加者たちから、いよいよ舞妓さんに会えるというワクワクした様子が伝わってきました。
到着したらすぐ、スギさんから封筒が配られました。「すでにチップも含めた支払いはしてあるが、エキストラチップを払う場合には、この封筒を使ってね。支払いのタイミングは最後に写真を撮るときがいいよ」という説明がありました。
その後、お料理がいくつかきて少し食べすすめた頃に、舞妓さんが入ってきます。スギさんが隣で通訳しながら、序盤は舞妓さんに質問タイム。その後、舞妓さんが踊りを披露してくださるのですが、「みんな写真を撮りたいから、後ろの席の人も写真が撮れるよう、前列の人は壁際に寄って、トライアングルの形になってね」という声掛けがありました。これはありがたい!私は1番後ろの席にいましたが、それでもよく見える配置となりました。
踊りのあとは、お茶屋遊びの定番であるこんぴらふねふねをしましたが、これが大盛り上がり。最初は参加しなくていいと言っていた方も、楽しそうな他の参加者をみて参加し、動画や写真を撮りあっていました。その後、グループごとに記念撮影をしたのですが、おそらくすべてのグループがエキストラチップを手渡ししていました。それだけ満足したということでしょう。
最後に1つだけ日本語でご挨拶。「皆さん、日本語で”ありがとう”は知っていますか。舞妓さんが使う言葉では”おおきに”と言いますので、”おおきに”でお別れしましょう」と説明をされていました。
小さな会社ならではの細やかな参加者への配慮
実際に参加して気が付いたのは、本当に細やかな配慮が随所にあるというところです。
1. 最終連絡は担当ガイドから
前日18時頃、スギさんからWhatsupで、集合場所と時間の連絡がありました。案内にGoogleの地図がついていて、予約時のメールを遡る必要がなく助かりました。業界ではファイナルコールと呼ばれる最終確認の連絡、最近はやっていない、もしくは定型文をシステムから配信している会社がほとんどではないでしょうか。今回、ガイドさんから直接の連絡をもらって、改めてファイナルコールの大事さを実感しました。
2. アレルギーは直接確認
ツアーには食事も含まれます。集合した後、アレルギーを全員に確認した後、「レストランへ連絡を入れるからちょっと待ってくださいね」と参加者の目の前で連絡をしていました。スマホをガイド中に触ったり、隠れて電話したりするよりも、参加者にもちゃんと連絡したよと伝わるので良いですね。
3. 当たり前の配慮を忘れない
Ken’s Tours Kyotoでは、マイクやイヤホンガイドを使っていませんでした。人が多い場所では立ち止まらない、立ち止まるごとに「こちらへ」と道路の端に寄るよう、誘導があります。
あくまでも、生活の場所にお邪魔させてもらっていることを忘れずに、当たり前にすべきことを守り続けることが、実は1番難しいと常々考えています。慣れた場所を案内していると、いつの間にか配慮に欠けてしまい、まるで我が町であるかのように案内してしまうことがないでしょうか。
どんな場所でもそこに暮らす住民がいて、そこに人々の生活がある。その場所に少しお邪魔しているのだという意識をしっかりと持って、伝えることが大事だと改めて感じました。
4. 食事場所では店員さんのお手伝い
お酒や、食材やお料理の説明だけではなく、お酒の注文をとったり、お料理を受け取ったり、お水のサーブまで、きびきびと動いている様子が印象的でした。ガイドがこのように動くには、お店側も任せられるような関係性をうまく築いていることも大切ではないでしょうか。
大きな会社で多くのツアーを開催していると細やかな対応が難しいこともあるかもしれませんが、小さな会社ならではの強みを活かしてツアーを運営されていると感じました。
ツアーは町の一部、日々のコミュニケーションが何より大切
Ken’s Tours Kyotoの代表ケンさんに聞いたお話で、1番印象に残ったことは、自分たちはプライドを持ってツアーを開催しているということです。町の舞妓さんや事業者、レストランと日々関わっているからこそ、強い当事者意識を持っているケンさんは、「もっと知りたいし、知らなければいけないと考えている」と話していました。ツアーでは、お客様との関係性を築くことは当然として、いつも少ない時間でも嫌な顔をせず来てくれる舞妓さんたち、小さい出来事でも相談に乗ってくれるお茶屋さん、会場としてお世話になっているレストランやカフェとのお付き合いがすごく大切で、そのためには日々のコミュニケーションが必要だそうです。
「ただ連れてきて終わりではないツアー作りをしたい」と話すケンさんのツアー、日本人の私もすっかり魅了されました。
Ken’s Tours KyotoのHPはこちら
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