インバウンドコラム
皆さんこんにちは。株式会社フレンドリージャパンの近藤と申します。私は、ANAセールス株式会社で国内や海外旅行のツアー造成や訪日旅行、イベント企画などを担当。その際に駐在した中国・上海で築いたネットワークを生かし会社を立ち上げ、現在は中国人観光客の誘致促進コンサルティングを行っています。そんな経験の中で感じる中国事情を皆様に、時折お伝えしていければと思っています。
さて。先日、東京都(TCVB)、神奈川県、そして、大手鉄道グループの大型リアルプロモーション『旅行会社向けツアーコンテスト』の表彰式が、北京と上海の高級ホテルで盛大に行われました。今回はそのコンテストから得たことをお伝えします。
リアルプロモーション「旅行会社向けツアーコンテスト」とは?
「中国旅行会社向けツアーコンテスト」とは、コンテストにエントリーした中国本土の旅行会社に対し、条件に沿った訪日ツアーを企画・実施してもらい、その結果を審査し・表彰していくというものです。
昨年の東京都単独開催に続き、今年は、規模を拡大し2回目の開催でしたが、中国の旅行会社からエントリーされたツアーは、いずれもお客様に喜んでもらえるよう熟慮した商品造成がなされました。審査にあたった主催者側もおおいに悩まれ、その真剣さを少しでも汲みたいと賞を増やしたほど、中国旅行会社×主催者の間で、しっかり血の通ったプロモーションとして大成功。企画運営側の我々としても大きな喜びを感じる結果となりました。
「ツアーコンテスト」の3つのメリット
ではこのようなツアーコンテストを行うことで、どのようなメリットがあるのか、たくさんありますが、大きく3つに絞ってお話したいと思います。
〇ツアーコンテストのメリット
1.旅行者を誘客でき、効果測定ができる(そのことで、売れるツアーも把握できる)
2.旅行会社の企画担当者が主体的に情報収集し、そのことで担当者をファンにできる
3.メディアからの注目を集め、中国旅行マーケットでの認知度を高めることができる
※東京、神奈川県、鉄道グループとも、表彰式での広告換算効果は100万円以上
今回は、東京都や神奈川県といった大都市が対象でしたが、今、中国旅行会社は“都市プラスワン”を望んでいます。
そして、このようなツアーコンテストは、大都市以外のエリアこそ有効的だと感じています。なぜなら、東京は検索すれば、口コミも多く、何かしらの情報をインターネットで見る事が出来ます。でも、地名を知られていなければ検索も出来ません。
現地旅行会社による「訪日ツアー造成」に立ちはだかる壁
では、その地名を知ってもらう為に、皆さんが取り組まれていらっしゃることで、最近よく耳にするのが、FAMトリップです。ただ「FAMトリップを行なったけど、効果が出なかった」という声をよく聞きます。
そのような声を聞く度に疑問に思うことがあります。それは、
・FAMトリップの目的をきちんと理解し、商品造成をジャッジ出来る現地旅行会社の人間が参加されましたか?
・私たち日本人が思う魅力と、FAMトリップに参加した旅行会社の方が感じた魅力にズレがあったり、一方通行の情報提供になっていませんでしたか?
・一番重要なことですが、FAMトリップ後のフォローアップをしましたか?
上に挙げたポイントを押さえないままに、ただFAMトリップを実施している方もいるのではないでしょうか。なぜFAMトリップをするのか、その後どうつなげたいのか、目的を見失ってはいないでしょうか。
実際、現地旅行社にツアーを造成してもらう、というのは並大抵の事ではありません。先ずは中国旅行会社の訪日担当者がそのエリアを知ろうとし、ファンになり、お客様に薦めたいと思う気持ちを高めるまでのアプローチが必要です。今回コンテストによって多くのコースが誕生したのは、旅行会社とのネットワークを信頼関係で築き、商品までの確約をもらいその後のフォローアップを行うプロセスがあったからこそ、実現できたことです。
情報が氾濫する中国マーケットでの toBプロモーションの重要性
昨今、中国向けにWEBやSNSを中心にプロモーションを検討している自治体や企業が増えています。それも、もちろん必要なことではありますが、中国国内では、あまりにもインターネット上で情報が氾濫している中で、堅実にプロモーション効果が蓄積されていくtoB向けのプロモーションも必要だと思います。
まだまだ中国の訪日マーケットでは、ビザ取得が必要な観光客が多いため、旅行会社の存在感は絶大です。また、FITシェアが拡大する状況の中、現地旅行社の企画担当者は、FIT商品やテーマ別のディープな旅(深度游)を造成するため、積極的に観光情報を求めており、旅行社向けtoBtoCプロモーションを期待しています。
最後に、今回、表彰式での旅行会社の皆さんの反応や態度に関して驚いたことが3つありましたので、是非、御報告したいと思います。
ひとつ目は、受賞旅行社23社のうち、日程が合わなかった1社を除いて、中国全土から22社の企画担当者が参加してくれたこと!(しかも2会場、全員が開演30分前には揃っていました) 2つ目は、受賞旅行社の皆さんがプレゼンテーションをする際、立派なパワーポイント資料を作成し、5分間の持ち時間では収まらないくらい熱く語ってくれたこと。またその際に、ほぼ全員が、主催者と現地担当者へ丁寧に感謝の意を示してくれたこと!3つ目は、副賞の豪華賞品よりも、日本式表彰状を授与されたことを「名誉」と感じ、何よりも喜んでくれたこと!
中国人は兎角良いイメージを持たれにくいですが、いえいえ、このような中国旅行会社の皆さんの誠意ある行動を皆さんはどう感じられたでしょうか?!
<参考:ツアーコンテスト実績>
東京都 :約50社 76コース 集客数 約11,000名
神奈川県 :約40社 45コース 集客数 約6,500名
鉄道グループ:約30社 36コース 集客数 約 2,500名
[近藤剛氏プロフィール]
ANAセールス株式会社で22年間勤め、国内や海外旅行のツアー造成や訪日旅行、イベント企画などを担当。その際に駐在した中国・上海で現地の旅行会社や上海の実力者たちと知り合う。2009年に独立し、株式会社フレンドリージャパンを創設。以降、中国で得た知見やネットワークを活かして、インバウンドに関わる旅行コンサルティング、販促物の提供、中国からの誘客促進などを手掛ける。独立当初より上海にも事務所を立ち上げ、日本で唯一の中国旅行会社向けBtoB販促冊子『壹游日本(いいよりーべん)』の発行なども行っている。
☆PodCast番組『近藤剛のOK! 中国インバウンド』配信中
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