インバウンドコラム

今年9月に開催されるラグビーワールドカップ2019、欧・豪からの訪日に期待。旅行単価は20万円超に

2019.04.12

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アジア初開催となるラグビーワールドカップ2019(以下、RWC2019)が今年9月より日本で開幕する。44日という長期間にわたり、日本全国12会場で開催されるため、地方都市においても大きな経済効果が期待されている。前回の記事では、イングランド大会(RWC2015)の概要や経済効果、インバウンド観戦者の動向などについて触れたが、今回はRWC2019開催に向けたプロモーションや、同大会が日本のインバウンド市場に与える影響などについて考察する。

 

まだ間に合う! RWC2019に向けた訪日プロモーション

以前の記事でも触れたとおり、前回のイングランド大会では40万6,000人の観戦者が海外から訪れ、テレビの視聴者数は40億人にも上った。世界中から注目を集める今大会も、ラグビーファン層に向けて日本各地の魅力を発信できるビッグチャンスとなるだろう。

JNTOが2018年6月に行ったRWC2019開催に向けたセミナーでは、英・伊・仏・豪・NZ・アイルランドのラグビーファンを対象とした調査結果が発表された。これによると、RWC2019目的の訪日意向に対しては、伊・仏・豪・NZの30%が「非常に興味がある」と答え、「やや興味がある」を加えると62.3%に上っていることがわかった。旅行の検討時期は「直前になってから計画する」が15%にも上ったため、開催まで半年を切ったこのタイミングからでもプロモーションが有効であることがわかる。また、ラグビーファンは年齢層が比較的高いため、RWCの情報源はテレビが最も多く、SNSの中ではFacebookの利用者が最多だった。

各地のインバウンド事業者や自治体は、こうした情報を考慮してターゲットとニーズを把握し、より効果的なプロモーションを実施する必要がある。

 

富裕層ファンによる消費単価アップに期待

RWC2019と、2020年に開催される東京オリンピックを比較すると、オリンピックの開催期間が17日間であるのに対し、RWC2019は約2.5倍の44日間にも及ぶ。また、オリンピックは東京を中心に開催されるのに対し、RWC2019は全国12カ所で開催されるほか、59の自治体が公認チームキャンプ地に選ばれているため、日本全体における経済効果にも大きな期待が寄せられている。

さらに、ヨーロッパやオセアニアからのファンは長期滞在する傾向にあり、過去の大会からみても富裕層が多いため、大会期間中の観光消費単価アップが見込まれる。実際、2017年における訪日外国人の1人1回あたりの平均旅行支出は153,921円だが、RWC2019で訪日が期待される国の一例を挙げると、英国の訪日客は215,329円、オーストラリアの訪日客は225,845円で、平均を大幅に上回っている。

 

RWC観戦者に見られる特徴は?

イングランド大会観戦者(日本ラグビー協会メンバーズクラブの会員)を対象に行った調査によると、回答を得た214人のうち、約8割が男性だった。年齢別では40〜60代の中高年の比率が高く、職業は会社員が63%と大半を占めている。さらに、観戦者の約半分が過去のワールドカップ観戦経験のあるリピーターであることもわかった。

こうした分析結果のほか、先述したJNTOのセミナーでは、ラグビーファンの特徴のひとつとして「紳士的」であることが挙げられた。敵味方関係なくスタンドに座り、素晴らしいプレーに対してお互いに称え合うという他のスポーツ観戦にはない光景が見られるそうだ。

また、ラグビーファンの間では、試合前、観戦中、試合後にビールを飲むスタイルが定着しており、ラグビーの強豪国として有名な欧米豪・NZの人々の飲酒量は、日本人の2〜4倍とも言われている。地域の飲食店などは、「酒豪」と呼ばれる彼らに向けて通常以上のビールを準備するほか、ご当地ビールやワインなどで誘客するという戦略も考えられる。キックオフ時間が早い場合は試合前の需要を取り込むために、営業時間を見直すという手もあるだろう。

さらに、RWCは開催期間が44日と長い分、試合のない日も多く、その合間に日本での観光やショッピング、飲食を楽しむ人が増えるため、試合日程を確認してインバウンド観戦者の動向を踏まえた上で、効果的に誘客を行いたいところだ。

 

このように、全国12カ所で開催されるRWC2019は、欧米豪をはじめとした富裕層の訪日客を獲得する絶好のチャンスとなるだろう。滞在期間が長く、消費単価の高いインバウンド観戦者のニーズをいかに掴むかがカギとなると同時に、観戦者本人の再訪日や彼らの家族、友人らの訪日を狙った長期的な視点も忘れてはならない。

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