インバウンドコラム
皆さんこんにちは。中国人観光客の誘致促進コンサルをしています株式会社フレンドリージャパンの近藤です。
訪日中国人誘致に携わるインバウンド担当者の方は既にご存知のことと思いますが、年明け1月4日から、中国人に対する訪日観光ビザ発給要件が大幅に緩和されました。どう変わったのか、その内容を具体的に見ていきましょう。
年明け早々に実施された訪日中国人向けの個人ビザ緩和
まず1つ目は、有効期間3年の数次ビザの発給要件緩和です。3年の数次ビザは、過去3年以内に2回以上、個人用の観光一次ビザを取得して訪日した中国人が申請できるビザですが、ビザ申請に必要な提出書類が簡素化され、経済力を証明する書類の提出も不要になりました。
もう1つは、個人用観光一次ビザの発給要件緩和です。このビザは「一定の経済力を有する者とその家族」と「中国共産党教育部直属の大学へ所属する学生、あるいは卒業生(ただし3年以内)」に発給しており、対象となる大学は75校でしたが、今回の要件緩和で1,243校まで拡大しました。この対象者は3,000万人程度とも言われ、中国国内の一般的な大学ほとんどがカバーされたことになります。
日本と中国は2019年を「日中青少年交流推進年」と定め、今後5年間で3万人規模の青少年交流を掲げています。その一環としての今回の緩和策により、多くの個人観光客や若者層が個人観光ビザを取得しやすくなりました。政府が掲げる2020年4000万人の目標達成に向け、リピーターの大幅拡大の追い風となることは間違いありません。
ビザ緩和をフックに中国旅行会社が次々と訪日旅行をプロモーション
2018年の訪日中国人観光客は838万人となりました。3年数次ビザの申請手続きが簡素化されたこともあり、2月5日より始まった春節を目前に、訪日中国人が大幅に増えると予想した中国の旅行会社は、より一層訪日ツアー商品の設定や募集に力を注ぎました。現に、私のWechat内モーメンツ(写真や文章の投稿が出来る)でも、多くの旅行会社が訪日ビザ緩和のニュースを大々的に伝え、その受け皿となる訪日ツアー情報の告知を行っており、彼らの査証緩和に対する期待と熱を強く感じました。
中国人に対する個人観光ビザは、2010年に中国全土で発給を解禁し、その後10年間で幾度も緩和されてきました。(団体観光ビザの全土解禁は2005年)
2010年・2012年の尖閣諸島問題の影響もあり、一旦は足踏みこそしたものの、その要因を除けば、ビザ緩和策に伴い順調に中国からの訪日客数は増加し、今年には1,000万人に到達する勢いです。
相手国に対する敬意を示し、民間交流を促す役目も
私が2014年に書いたコラムでもお伝えしていたように、まさに、観光査証は『水道の蛇口』のようなもの。観光ビザ緩和政策は、具体的な緩和内容に関わらず「日本国として相手国を敬い、民間交流を活発化する意思を示す」ものです。さらに、大使館・領事館での発給審査自体も自ずと緩くなるため、中国側の旅行会社は、安心して訪日ツアーの造成・販売が行うことができます。また、日本側にとっても、査証緩和という「水道の蛇口を大きく開ける」行為により、訪日客数の継続的な増加につながります。
今回の緩和策を通じて、若年層の訪日旅行者増加はもちろんのこと、数次ビザの要件緩和は、訪日リピーターの増加にもつながるでしょう。リピーター増が今年・来年の中国人観光客の増加をもたらし、中国旅行社による訪日ツアー造成がさらに拡大することを楽しみにしています。訪日商品に関していえば、ゴールデンルートだけでは顧客をつかむことが難しくなるだけに、商品造成の多様化を余儀なく求められることで、中国の訪日マーケット担当者の日本への理解が深まり、成熟することを期待しています。
[近藤剛氏プロフィール]
ANAセールス株式会社で22年間勤め、国内や海外旅行のツアー造成や訪日旅行、イベント企画などを担当。その際に駐在した中国・上海で現地の旅行会社や上海の実力者たちと知り合う。2009年に独立し、株式会社フレンドリージャパンを創設。以降、中国で得た知見やネットワークを活かして、インバウンドに関わる旅行コンサルティング、販促物の提供、中国からの誘客促進などを手掛ける。独立当初より上海にも事務所を立ち上げ、日本で唯一の中国旅行会社向けBtoB販促冊子『壹游日本(いいよりーべん)』の発行なども行っている。
☆PodCast番組『近藤剛のOK! 中国インバウンド』配信中
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