インバウンドコラム
福岡を拠点に、2007年より韓国市場に特化した広告・マーケティング・輸出を行い、また韓国にいる日本語や英語が堪能で優秀な人材を日本各地へインバウンド人材として紹介しているアジアフューチャー株式会社の松清一平です。
「韓国からの訪日客は、日韓の関係が影響するのではないか?」「韓国人はリピーターが多いというけれど、どんな魅力を日本に感じているの?」「いまさら誘致するのは難しいのでは?」など、韓国マーケットについてよく聞かれることについて当コラムで皆様にもお伝えしていきます。
韓国人はなぜ、何度も日本にリピートするのか
距離も近く、航空、船舶の路線も多く、LCCの便数も多いため、安く気楽に訪日する人が多い韓国。2018年の訪日客数は、中国からの838万100人に次ぎ第2位の753万9000人でしたが、中国の人口が13億8271万人に対して、韓国は5125万人であることから、人口の割合に対する訪日客数では、韓国が圧倒的1位となっています。
また、観光庁の「訪日外国人消費動向調査(2018年)」からは、訪日韓国人の7割以上がリピーターだということもわかります。そしてその中でも全体の48.8%、およそ半分の訪日韓国人が訪問回数「2~5回」のリピーター。10回以上訪日している人が14.7%もいるのも特徴的です。
それでは韓国人観光客はなぜ何度も日本を訪れるのでしょうか? 日本に来る目的は?——それはズバリ、韓国人にとって日本は生活の一部だということです。日本への旅行は特別な思い出作りの旅ではありません。彼らにとって日本は日常の続き、生活圏内なのです。
ソウル~釜山の直線距離で約333kmと東京~京都間375kmとほぼ同じ位。ソウル~福岡は533km(東京~岡山とほぼ同じ距離)と、東京~福岡間888kmよりも近く、訪れやすい位置関係になっています。ソウルから半径1000kmで円を描いたのが下記の図になります。
韓国は国土が狭く、ソウルと地方都市では人口に著しい偏りがあります。ソウルに住む人は自分たちの街にすべてが揃っているのに、あえて韓国の地方都市へ行くことはあまりしません。それよりも、航空機で1時間から1時間半程度で遊びに行ける気軽な場所、自分たちの日ごろの生活と異なる環境を味わうことができ、かつ喜んでお金を使いたくなる所として、日本にやってくるのです。
リピーターが多いと、どんな影響があるのか
「訪日外国人消費動向調査、トピックス分析」で韓国からのリピーターの支出を見てみると、訪日回数が多いリピーターほど1人当たりの旅行支出が大きいという結果が出ています。
「日本の化粧品が欲しいけど、韓国で買うと高い」「日本のハンバーグを食べてみたいけどそもそも肉が違うから、日本の元祖を食べてみたい」「日本製の生ビールをソウルで飲んだけど、日本で飲んだ時の方がもっと美味しかった」「韓国ではギャンブルが全面禁止なので、日本でパチンコをやってみたい」「ドラマで見た和服を着てみたい」
ーー韓国人が日本でしたいことは様々です。
今はインターネットで、韓国でも販売されている無印良品の商品が、日韓でそれぞれいくらするのかを簡単に調べることができます。日本製品を韓国で購入するとなると、関税や間接税なども入ってきますし、為替レートでも変動します。それで、LCCも多く飛んでいて航空運賃も比較的安く、1時間から1時間半程度で気楽に来られる日本を休日に訪れ、目的をもってショッピングや食事をしていくのです。そのためリピーターの方が支出が多いという結果になります。
日韓関係が悪化すると韓国人は日本に来なくなるのか?
そして、もう一つ。韓国マーケットについて、よく聞かれるのが「韓国からの訪日客は、日韓の関係が影響するのではないか?」という質問です。
波のある日韓関係。悪化のニュースが新聞で大きく取り上げられたりすると、日韓の文化交流にも影響を与えるのではないかという懸念をされる方もいます。
上記の日韓に起きた事象と、訪日韓国人の推移をまとめた図表を見ていただくと一目でわかるように、「政治・外交における日韓関係」が「文化的交流(両国間への訪問・旅行)」に影響を与えていません。それほど、韓国人にとって日本への旅行は日常の生活の続き、隣り街へ来る感覚で来てくれるはずです。
【松清一平氏プロフィール】
元KBC九州朝日放送ラジオ・テレビ制作、営業を歴任。経営学修士(MBA)。韓国向けインバウンド事業および韓国人多言語人材の職業紹介のアジアフューチャー株式会社のファウンダー・取締役会長。冷静・合理的な対韓国関係を模索している
最新記事
コロナ禍のいま中国市場向けにできることは? 検索データから分かる中国人のトレンドとSNSを活用したマーケティング戦略 (2020.10.20)
京都の街並みを再現した960億円の巨大プロジェクト、中国の大連市で進行中 (2019.09.30)
まだ間に合う!9月末締め切りの補助金を使って、「まちあるき」の満足度をアップ (2019.09.19)
2019年ゴールデンウィーク中にじっくり読んでおきたいインバウンド記事5選 —やまとごころ編集部ピックアップ (2019.04.27)
今年9月に開催されるラグビーワールドカップ2019、欧・豪からの訪日に期待。旅行単価は20万円超に (2019.04.12)
イングランドで開催されたRWC2015を振り返る —平均滞在期間は2週間、消費額は42万円、口コミによる好循環も (2019.04.04)
訪日客数4000万人に向けて加速する取り組み、訪日中国人への個人観光ビザ緩和がもたらす変化 (2019.02.18)
ロボットと京観光 —AIは観光業界の担い手になりうるのか (2019.01.25)