インバウンドコラム
今回のコラムは、中国でインターネット動画が旅行の行き先を左右するほど、影響力を増しているという話だ。日本に誘客するうえでも今後は、動画サイトの取り組みは注目ポイントになるだろう。中国国内旅行での実態を紹介する。
きっかけは動画サイトだった
湖北省武漢市に住む劉丹さんは、2018年の夏休みに一家で青海省の茶カ(チャカ)塩湖を旅行した。ここを選んだのは友人や旅行会社にすすめられたからではなく、たまたまある日、仕事の帰りにショート動画サイトを見ていたところ、ネットユーザーがここを旅する様子をネットにアップしたのが目に入ったからだ。「天空の鏡」と呼ばれる茶カ塩湖は澄み渡る美しさで、たちまち心を奪われ、すぐに旅行を決めたという。
ショート動画が観光業界にも影響していると担当者
すでに数年前にインターネットの専門家が、「ショート動画は写真や文章、ロング動画、ライブ配信に続く成長になる」としていた。このほど発表された研究報告書によれば、「2017年よりショート動画産業は人気が続いており、ユーザーの規模も日に日に拡大し、発展の可能性は大きく、2018年は3億5000万人を超えるとみられる。膨大な数のユーザーに比例して、ショート動画の件数が急速に増加しており、特に再生回数が急速に伸びている。中には再生回数が1000万回や数億回に達するものもある」という。
新業態の登場が、観光経済に巨大なビジネスチャンスをもたらした。湖北省の旅行会社責任者・張魯達さんは、「ここ数カ月間の営業販売状況を振り返ると、自分から店舗に来るお客様が多く、選択する旅行のルートや目的地が非常にピンポイントになっている。圧倒的多数のお客様がショート動画を出して、動画の場所のツアー商品はないかとたずねる。お客様は商品タイプを選択する際に前よりも個性重視のオーダーメイド式を求めるようになり、従来型団体ツアーのルートにはあまり興味を示さない」と話す。現在、多くの旅行会社がショート動画のネットユーザーに人気の目的地や観光地を取り上げた観光商品を企画し始めている。
アカウント開設で営業販売促進
大手旅行サイト広報部の李秋妍マネージャーは、「ショート動画は簡単に制作できて、コストもかからないため、多くの個人ユーザーだけでなく、観光地や地方の観光発展委員会なども次々に大手ショート動画プラットフォームに進出して、公式アカウントを開設している」と話す。
少し前には、ショート動画携帯アプリの快手が湖南省張家界市と提携して、「土家(トゥチャ)族3D頭飾り」魅惑の表情&オーダーメードソングというキャンペーンを打ち出し、「全員が張家界を発見」と題したショート動画応募企画を実施したところ、開始1週間でのべ2億7000万人が参加した。ショート動画共有アプリのTikTok(ティックトック)は甘粛省敦煌市と提携を選び、プラットフォームのアクセス数、技術などの優位性を利用して現地の文化や風土、人情などをパッケージして伝え、相当の成果を上げている。
都市の魅力を再発見するツールに!
「重慶日報」の記者・単士兵さんはショート動画で重慶市が「ネット人気都市」になっているのを見つけると、「都市の人と都市以外の人とは、いつも相手の見方によって自分の見方を補い合っている。重慶のほとんどの人にとって、暮らしの中にいつもある山間地の建築物、川を渡るケーブルカー、車や人の通行には不便な地形などが、外の人にとっては魅力ある景色になるなど思いもよらないことだ」と感想を漏らし、「『山の街』重慶の面白さが多くの視聴者に何度も再発見されている」との見方を示した。
重慶だけでなく、西安や成都などの「ネット人気都市」も同じような変身の過程をたどった。普段食べているものが遠方のグルメたちの垂涎の的となり、ありきたりのその辺りの町並みが大勢の観光客を引き寄せている。どこの街角でもみられるその都市の特徴が、インターネットで絶えず拡大して伝えられる。観光消費の高度化にともない、今や人々は単なる「観光地を一巡り」式の旅行では満足出来なくなり、都市の街角や路地裏のその都市ならではの景観を探索したいと思い、好奇心も強い。単さんは、「ライブ配信、ショート動画はさらに人々が知ることを助けるツールになる。都市に特色ある観光資源、観光商品、文化的蓄積があることが、注目を集める根本的な原因だ」と話す。
こうした流れは都市観光の発展にとって、実はかなり大きな触発だといえる。新たな消費モデルが登場した今、都市も「自身の再発見」が必要であり、別の視点によって自分には見えない注目点をより多く見いださなければならない。具体的には、まず都市建設の過程で歴史的景観を大切にし、精神的な核心を継承し、自身の特徴を大きく育て、町並みも観光地も他の都市と変わらないという事態を避けなければならない。また上手に外部の力を借りて都市のブランドイメージを管理し、新しい技術や新しい場を利用して、都市の個性と位置づけを統合しPRする必要がある。
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