インバウンドコラム
先日、絵のように美しい四国の寺院を巡る多くの人びとが見られた。白装束に身を包み、笠をかぶり、手には金剛杖を持った華人仏弟子遍路団が厳かに紅葉に彩られた道を歩き、四国八十八霊場の寺で、線香の焚かれるなか中国語のお経を奉納して現地メディアの注目を集めた。
この中国、シンガポール、オーストラリアなどの華人33人から成る「一歩一弘法」四国遍路団は、一乗顕密教センター(シンガポール、オーストラリア)の名誉会長である智広阿闍梨が代表となってメンバーを引率し、四国華僑華人連合会副会長で画家の牛子華氏が全日程に関わり、かつての弘法大師空海の足跡をたどって四国八十八カ所の寺院を参拝した。
空海(774-835)は灌頂名を遍照金剛、おくり名は弘法大師、中国仏教の唐密教の第八代祖師で、日本の真言宗の開祖でもあり、日本では非常に高い名声を得ている。1200年前、空海は唐の長安(現在の西安)に渡り、当時の世界最先端の文化と技術を学んだ。
長安の青竜寺で恵果和尚から密教の仏法の指導を受け、帰国後は日本の仏法興隆と済世利民のための活動を始め、その足跡は日本全国に及ぶ。四国八十八カ所の寺院はすべて空海が修行を行った聖地である。
平安時代から多くの人びとが空海の足跡をたどって八十八カ所の寺院を巡礼し始め、次第に四国遍路の原型が作られ、現在まで長い歴史を誇っている。現在、「四国遍路」は世界でも知られ、敬けんな仏教徒だけでなくバックパッカーまで年間延べ約50万人のお遍路さんを集めている。
今回の遍路団のリーダーである智広阿闍梨は日本の真言宗醍醐寺三宝院流第64世阿闍梨であり、浙江省寧波出身である。彼は幼い頃から仏教を学び、三十数年間中国だけでなくスリランカ、日本などの80人以上から小乗仏教、大乗仏教の密教仏法を学び、2004年に来日して唐密教、天台宗、浄土宗などの各仏教を研究した。
在日華人画家である牛子華氏は若い頃西安の青竜寺の近くで絵画を学び、空海の業績に感動して来日し、四国の地で寺院をテーマとして絵画を創作している。近年は「四国八十八カ所 牛子華の山水世界」という個展を東京、京都などで開催し大きな反響を呼んだ。
「一歩一弘法」華人四国遍路団は四国の寺院や民間団体の熱烈な歓迎を受けた。11月15日、四国遍路の第一札所の霊山寺と四国日中友好協会、四国華僑華人連合会、徳島県日中友好協会、愛媛県日中友好協会などの共催により、「一歩一弘法」四国遍路団の結成式が行われた。
式上、霊山寺の芳村秀全住職は中国語で挨拶を披露し、今年はまさに空海の高野山開山1200年の年であり、智広阿闍梨一行の遍路に対しては大変うれしく思うとともに、この機会に仏教交流を行って中国の恩に報いたいとした上で、日中両国の永遠の友好と平和を祈ると話した。
智広阿闍梨は芳村住職の挨拶に応えて、「仏教各宗派と文化の各界の交流と学習を重視し続けてきた。日本では空海、最澄などの遣唐使が密教、文化、技術を日本に持ち帰り、日本の社会と人びとに大きな幸福をもたらしたことを自身の目で見た。また現在中国では2500年以上続く儒教の教えがますます人びとに愛されるようになっており、中国にはまさに伝統文化復興の波が押し寄せている。このたびは32人の華人の仏弟子とともに四国遍路に赴き、皆さんに中国の素晴らしい伝統文化の生命力と創造力を見ていただくとともに、恵果和尚、空海など先人の足跡をたどって仏法を実践し、文化を理解し、生命の意義を探求したい」と述べた。
そして、四国遍路は仏教の巡礼の旅というだけではなく、文化の旅であり、人生の旅でもあると語った。
徳島県日中友好協会の生田治夫名誉会長や、砥部町商工観光会の泉本明英会長なども遍路団の初日の遍路に付き添った。夜行われた交流会の席上、徳島県日中友好協会の藤田学副会長、生田名誉会長らは遍路団に再度熱烈な歓迎とお祝いの意を表するとともに、遍路団の四国遍路の旅の成功と、日中両国民の友好が長く続くことを祈願した。
智広阿闍梨は遍路団を代表して、日本徽商協会の陳暁麗副会長、四国華僑華人連合会の牛子華副会長ら日中の関係者のサポートに感謝し、この度の遍路の活動が日中友好交流を促進することを希望し、さらにこの遍路の旅を平和の旅にしたいと述べた。交流会後、徳島県日中友好協会は遍路団を阿波踊り鑑賞に招待し、それに対し遍路団は仏歌「瑠璃光」を披露して感謝を表した。
四国八十八カ所の遍路旅の道は四国全土に広がり、発心、修行、菩提、涅槃の4段階に分かれている。「一歩一弘法」四国遍路団は、2年間で4回に分けて遍路の旅を完成させる予定で、11月15日から19日は徳島県の23カ所霊場の「発心」の段階の寺院を巡った。
◆本紙記者 温庭竹
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