インバウンドコラム
日本政府観光局(JNTO)は、6月21日に欧米豪の富裕層市場に特化した商談会「ジャパン ラグジュアリー ショーケース(Japan Luxury Showcase)」をザ・リッツカールトン東京で開催。商談会の前後にJNTOが実施した招請旅行についての意見も含めて、その模様をレポートする。
富裕層市場に特化したバイヤー
日本政府観光局として富裕層市場に特化した唯一の商談会と招請旅行となり、昨年につづき今年で2回目。欧米豪の富裕層を顧客に持つ9市場の旅行会社46社を招請。下記の行程で招請旅行も行った。
米国(7社) 金沢—高山—山代温泉
カナダ(4社) 軽井沢—松本
豪州(5社) 軽井沢—金沢—加賀
英国(5社) 尾道—岡山—高松—木曽・妻籠
フランス(5社) 渋温泉—金沢—高山—岐阜
ドイツ(4社) 軽井沢—湯田中温泉—山中湖
イタリア(6社) 京都—高松—祖谷—倉
スペイン(5社) 大阪—高野山—那智勝浦
ロシア(5社) 倉敷—直島—高松—祖谷
このうち米国とドイツは商談会終了後の6月22日からの招請旅行スタートとなり、他市場は6月15日から招請旅行を終えてからの商談会となった。
いずれも各市場のJNTO事務所が新規に日本市場を始めた旅行代理店も含めて、実績のあるバイヤーから選定。中には「プライベートジェットや専用車しか使わない」VIPを顧客に持つ会社も少なくない。
▲オーストラリアからの旅行代理店は金沢で金箔貼りにトライ
全国から集まったセラーと商談会
日本側のセラーは、宿泊施設やランドオペレーター、運輸関連会社、DMCなどさまざまなカテゴリーの50社。定員を上回る数の応募があった中から、コンテンツ(商材)の内容や具体的な商品造成につながる可能性などを考慮し、JNTOが参加者を選定、日本全国の旅行手配に対応できるように配慮したという。バイヤー、セラーとも事前にアンケートに記入し、双方の希望をある程度配慮された上でマッチングがされていた。
1回15分、ランチ休憩をはさんで午前6回、午後9回の計15回(1企業1回は休憩あり)の商談会が開催。資料やスライドを見せながらの濃密な商談が開催されていた。
会場で各市場のJNTO担当職員にヒアリングすると、どの市場の担当者も「多くのバイヤーが、“東京(関東)〜京都(関西)”のゴールデンルートではなく、次なる新たなディスティネーション、それを手配できる相手を探しています。招請旅行でも北陸、日本アルプスや和歌山、瀬戸内や四国などを視察。伝統とモダン、豊かな食、アクティビティなどの魅力を体験し、顧客への提案、訪日誘客につながるものになった」と手応えを感じていた。
各市場それぞれに特性はあるが、「例えば、地元で人気の食事処の方や伝統工芸の職人など、『地元の人と触れ合う旅』は、必ず入れたいポイント」と贅を尽くすだけでない、記憶に残る旅のヒントも提示されていた。
富裕層旅行の決め手となるのは宿泊施設。ラグジュアリーホテルや旅館のセラーも数多く参加。「今までのラグジュアリー商談会とは違う新たな旅行代理店も参加していた。様々なバイヤーと知り合うきっかけ作りになる」「欧米豪からの富裕層をもっと増やしていきたいので、どんなことが求められているか体感できた」との声もあがっていた。
ある海外バイヤーからは「旅館はいいコンテンツだが、朝食はコンチネンタル・スタイルの食事にしてほしい」などの要望もあったという。
富裕層向けの九州の旅行代理店は「まず“九州”がどこか、説明するところで多くの時間を割く状況だった。実際に旅行者を送客するまでには時間がかかると思うが、情報提供から行っていきたい」と、商談会参加の感想を語っていた。
実際にアジアからの富裕層旅行を取り扱う北海道の旅行代理店は「欧米豪はこれからの市場で、市場の現況を知るいい機会となった。夏の北海道をアピールしていきたい」と語った。
リラックスした雰囲気での意見交換会
▲意見交換会でのパフォーマンス
夜に開催された立食形式の意見交換会で、ドレスアップした人も多いバイヤーに感想をきいてみた。
「商談数が多くて疲れたけど、いろんな商材を知るいい機会だった」
「ゴールデンルート以外にもたくさんいいところがあるし、日本が自然の豊かな国だと改めて気づいた」など、商談会と招請旅行に概ね満足した意見がきかれた。
欧米豪の富裕層は世界の極上の旅を知っている。日本の魅力を知ってもらい、いかにニーズに柔軟に対応するか、この商談会はその端緒といえよう。
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