インバウンドコラム

2024年国際旅行博TITFから考える、タイ人の海外旅行需要は戻ったのか? タイを狙う競合市場の動向

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タイ最大旅行イベント「第29回タイインターナショナルトラベルフェア(TITF)」が2024年1月25日~28日の4日間バンコク大型見本市会場のクイーンシリキットで大盛況の中で開催された。タイ旅行エージェント協会の主催で、世界各国の政府観光機構によるデスティネーションプロモーションや、交通事業者、旅行会社による旅行商品販売が行われた。

タイの旅行会社・ランドオペレータ・ホテル・航空会社などの販売ブースと日本・香港・韓国・台湾・マレーシア・中国など観光PRで約500ブース以上の出展となった。前回2023年2月時(約280ブース)の2倍近いブース数となり、国際旅行博としての規模に回復した印象である。主催者によると、4日間の来場者は27万5000人、前回の20万人からさらに増加した。

今回は、TITF開催で見えてくるタイ人の海外旅行市場の傾向について探っていく。


▲朝から長蛇の列。特別価格の日本行き航空券を求める行列が

 

2023年の東南アジアからの訪日動向、タイのシェアは27%に

こちらの表は、2023年とコロナ前の2019年の東南アジア各国からの訪日客数とその割合を示したものである。

JNTO外客速報(2023年1-12月)

訪日成熟市場であるタイは東南アジアの中でも未だ高いシェア(27%)を維持している。2019年当時の各国の状況が違うので回復率には開きがあるが、日タイの航空便数の回復率が7割程度とされている中では十分に回復を遂げていると考えられる。中部セントレア空港便や仙台空港便などの回復、全体の増便がこれからの更なる訪日客数回復につながるのではなかろうか。


▲シンガポール発のクルーズ 7日間の旅で6万~8万B(約24万円~32万円)遊園地の様な船内施設。

 

日本の出展ブース、旅行者へ直接魅力をアピール。昨年比1.3倍の28団体に

会場内で日本は最も大きなゾーンとなっており、約40のブースに北海道から沖縄県までの28団体が出展を行った。前年の21団体から1.3倍の出展数になっており、日本ゾーンも回復基調にある。北関東~東北にまたがるダイヤモンドルートのプロモーションでは、各組織が広域連携して出展した。


▲4日間、終日賑わいを見せた日本ブース

また、鉄道会社のJR西日本・JR九州・JR四国や、複数のホテルを運営する星野リゾート・藤田観光・共立メンテナンスや、羽田エアポートガーデンなどが出展をしており、コンシューマへの直接的なアプローチが有効と考えているのかもしれない。 
鹿児島では、離島「しま旅」のPR・販売を

 

ビザ解禁で始まる中国旅行、タイ人のリピート客を獲得できるのか

今回、国として出展した「中国ブース」の中では、タイの旅行会社が中国旅行の商品販売を開始していた。3月からのタイ中国の相互ビザ解禁の動きを受けたものだ。募集型の団体旅行販売が中心であるが、「まだ見ぬ中国大陸」への旅行商品は魅力的に見える。商品を扱うタイの旅行会社によると売れ行きは好調であるという。今後の動向に注目である。

▲大手旅行会社で販売されている中国の観光旅行 4日間1万~3万B(約4万円~12万円)と訪日旅行より安い価格帯である。

 

TITF会場で販売された人気の商品は?

訪日観光は、個人旅行が7割以上といわれており、宿泊施設に加え、航空券や二次交通となる鉄道などの商品が多く販売されていた。


▲終日長蛇の列になるHISの販売ブース。JRPASSは個人旅行の必須アイテムである。

また最近人気のベトナムのビーチ「ダナン」「ホイアン」や、日本と同様に情緒がある場所として知られる「台湾」なども個人旅行で訪れる観光地になっている。一方ヨーロッパや中国は、団体旅行が主流の様である。
訪日観光の人気は未だ高いが、まだ知らない国への観光需要はこれからもっと高くなってくるであろう。


▲人気旅行先のひとつ韓国。KPOPパワーはタイを席巻している。

 

回復する日本旅行、2024年は航空路線がカギに

TITFは、FIT個人旅行が成熟してしまった日本にとっては、各地のPRや旅行商品販売の場所として有益なのかという疑問を抱いていた。しかし今回のTITFの回復を見て、世界中の旅行先が紹介され、旅行商品が販売されている状況はかなり嬉しくもあった。また、タイ人が諸外国に旅行しようとしている雰囲気は現場でしか感じられないであろう。


▲募集型団体旅行大手TTNは、桜シーズンの訪日旅行を販売

日本の主要拠点の航空便の復便がカギではあるが、早期回復が実現できた福岡は人気が高くなっている。地方都市のチャーター便も含めて渡航する線が増加すれば、再びピークを迎えていくことになるであろう。旅行者が自分たちにとって日本の日常が素晴らしい「非日常」であることをより実感すれば、地方の文化やライフスタイルさえも魅力的なコンテンツになりえる。

2025年「関西万博」のころには、地方都市に多くの外国人が様々な体験を求めて訪れることを期待したい。


▲JNTOの観光案内ブース。観光に関する問い合わせするタイ人が大勢訪れ、用意したパンフレットが全てなくなった。

 

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