インバウンドコラム

北海道・北広島駅前プロジェクトに見る、「開発×運営」の連携体制が生んだ持続可能なまちづくりとは?

2026.01.23

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人手不足やコスト高騰といった構造的課題が地方に重くのしかかる中、地域づくりの成否は、「いかに効率的かつ持続可能な形で運営し、地域価値を創出し続けられるか」にかかっている。そうした中、注目されているのが北海道北広島市の駅前開発プロジェクトだ。
プロ野球・北海道日本ハムファイターズのホーム球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」を擁するこの地では、北広島駅西口周辺において、開発・運営・行政の三者が構想段階から連携し、一体となって理想のまちの姿を描き、それを共に運営する仕組みづくりに取り組んできた。従来の「つくってから運営を考える」という発想ではなく、「誰がどう運営するか」から逆算して設計されたまちづくりは、全国の地域再生にも通じる新たなモデルとなりうる。
本記事では、開発を担った株式会社エスコン上席執行役員の加藤嘉朗氏と、構想初期から宿泊・地域運営に関与した株式会社SQUEEZEの中田聡喜氏に、三者連携がもたらした価値と、運営視点がまちづくりにもたらす新しい可能性について聞いた。

 

「運営視点」がまちの価値を左右する

北広島市の魅力は、野球という強力なコンテンツだけにとどまらない。札幌駅まで最速16分、新千歳空港との中間地点に位置する北広島市は、その利便性の高さから、長年ベッドタウンとして発展してきた。しかし、市内での球場開業を機に、北広島駅は多くの人々を迎える「まちの玄関口」として、新たな役割を担うこととなった。当時の駅前の姿は玄関口とは程遠く、球場までは歩いて25分。駅前にはロータリーも商業施設もなかった。この難局を乗り越えようと、2021年、北広島「駅西口周辺エリア活性化事業」が立ち上がり、株式会社エスコンが北広島市とパートナー契約を締結。プロジェクトが始動した。

株式会社エスコンは球場の開業に合わせ、まずは喫緊の課題であった駅前の整備に着手。ロータリーの創設と並行し、北広島駅西口に直結する宿泊施設「エスコンフィールド HOKKAIDOホテル 北広島駅前」と商業施設の開業準備も始まった。宿泊施設の運営を任され、事業構想段階から参画したのが株式会社SQUEEZEである。

株式会社SQUEEZEの中田聡喜氏は、「構想初期から関与したことで、地域に開かれたホテルをハード・ソフトの両面で実装できた」と語る。施設単体ではなく、駅前や球場を含む“まち全体”の動線と回遊を意識した設計ができたことが、地域に根ざした価値創出につながっているという。

「開発・運営・行政の三者が、理想のゴールから逆算して設計・運営を一体化できた意義は大きい。だからこそ、完成後に無理なく回り続ける仕組みになった」と振り返る。

▲エスコンフィールドHOKKAIDOホテル 北広島駅前 ファイターズフロア ファミリー エスコンフィールドビュー

 

週2回の対話が育んだ官民の密接な連携体制

開発・運営のタッグを支えた、行政の強力なバックアップ体制も、本事業の鍵である。株式会社エスコンの加藤嘉朗氏は、「パートナー締結の以前から、北広島市との週2回の定例ミーティングを重ね、それは今も続いている」と明かす。この密なコミュニケーションによる連携体制こそが、事業に携わる全員が同じ方向を向くための土壌となり、事業推進の大きな原動力となった。

エスコンが主導する不動産開発や全体構想に対し、宿泊施設の運営と、テクノロジーを活用したオペレーションの実装を担っているのがSQUEEZEである。SQUEEZEは、クラウド型宿泊管理システム「suitebook」を中核とした「One Platform」を通じて、ホテル運営に必要な業務フローやデータ管理を一体で設計し、開業後も効率的に回り続ける運営体制を構築してきた。

加藤氏は、同社の運営の強みを「テクノロジーを活用し業務を再設計することで、限られた人員でも持続的に運営できる仕組みを構築している点」と評価する。チェックインや煩雑な事務作業を効率化することで生まれた時間とコストを、ゲスト対応や品質管理といったホスピタリティ領域へ振り向ける。人を減らすための仕組みではなく、人が価値を発揮する領域を再配置する考え方が、SQUEEZEの運営思想の根幹にある。

SQUEEZEが実際に活用したテクノロジーの一例が、客室への「Suicaスマートロック」の導入だ。もはや、物理キーを持ち歩くことも、暗証番号を記憶することも必要ない。自身のSuicaをドアにかざすだけで開錠できるシームレスな体験を実現した。

フロントで鍵の受け渡しや返却対応を行う必要がないため、ピーク時間帯のフロント業務負担軽減にも繋がっている。ゲストの移動ストレスを減らしながら、現場の負担も抑える、双方にメリットのある仕組みである。  

▲交通系ICカードでのチェックインイメージ

さらに、自社開発のセルフ型チェックイン機を使えば最速30秒で手続きが完了する。試合開催日に発生する「チェックインの集中と大混雑」という課題も、複数の端末をアイランド式に設置・導入したことでスムーズな誘導へと変えた。長時間の待ち時間に伴うゲストのストレスは、テクノロジーとオペレーションの工夫により緩和した。

その一方で、スタッフは機械では対応できない問い合わせや、周辺案内などの接客に集中できるようになった。人を減らすことが目的ではなく、業務を再設計することで、働き方の質と運営効率を同時に高めるための仕組みと言える。

 

ホテルからまちへ、人の流れをつくるデジタル基盤

SQUEEZEでは、テクノロジーを単なるホテル運営の効率化にとどめず、将来的には宿泊施設を起点に人の流れを生み出すデジタル基盤へと発展させていく構想を描いている。その中核に位置付けているのが、クラウド型宿泊管理システム「suitebook」を起点とした「One Platform」の考え方だ。

現在はホテル運営を支える基盤として活用しているsuitebookだが、今後は宿泊に関わるデータやオペレーションを軸に、商業施設や地域施策ともつながる余地を広げていくことで、ホテルを“点”ではなく“まち全体の動線の起点”として機能させていきたい考えだ。ゲストがまちを回遊する際に体験が分断されない設計を行うことで、移動そのものが価値になる状態を目指している。

こうしたデータ基盤が整えば、将来的にはゲストの動きや利用傾向をもとに、イベント企画や人員配置、運営計画の高度化など、現場の働きやすさと地域全体の価値向上の両立にもつなげていくことが可能になる。ホテル単体の最適化にとどまらず、エリア全体の持続的な成長を支えるインフラとして進化させていくことが、SQUEEZEの描く将来像である

▲「suitebook」画面イメージ

重要なのは、テクノロジーの活用は単なるコスト削減や効率化が目的ではないという点である。ゲストの移動やチェックインによる待ち時間のストレスを減らし、スタッフの生産性も高めながら、地域の商業施設や飲食店とつながる導線をつくる。そのすべてを支える「見えないインフラ」として、テクノロジーを位置付けている。

インフラである以上、その設計は開発の後工程ではなく、構想段階から組み込まれるべきものだ。だからこそ、まちづくりにおいては、開発の初期段階から運営側を巻き込み、一体となって「地域とどう共生するか」を設計する必要がある。北広島駅前の変化は、ハード・ソフト・行政が足並みを揃えた先にこそ、豊かな地域共創が実現することを示している。

 

観光客頼みから脱却し、地域とつながるホテル運営への挑戦

北広島駅前での地域共創に取り組むうえで、加藤氏と中田氏が課題としていたのが、繁閑差への対応だ。球場で野球の試合が行われるのは年間70~80日ほど。試合がない日にいかにホテルや商業施設へ足を運んでもらうか。この難題に対しては、今もなお向き合い続けている。解決策のひとつとしてSQUEEZEが取り組むのは、マイクロツーリズムの促進だ。当初から、ホテルを地域交流のハブと位置付け、開業後には地元住民を対象とした「市民割」「道民割」を複数回実施。地域の人々に日常的に利用してもらうための取り組みを積み重ね、地域に開かれたまちづくりを目指している。

また、地域との真の共生には、地域住民との「対話」も欠かせない。加藤氏は、「開発に対し、多くの住民が好意的だった。多くの賛同を得ている状況下においても説明会の回数を重ね、住民の皆様と真摯に向き合う姿勢を体現した」と振り返る。このオープンな姿勢こそが、結果として盤石な地域連携を築く礎となった。

 

特別なフックがなくても再現できる、「運営起点」のまちづくり

今回の駅前開発には、確かに「野球」という強力なコンテンツが存在した。しかし、この事業の本質はそこだけではない。他地域へ応用するうえで最も重要なポイントは、中田氏が語る通り、「開発・運営・行政の三者が、初期段階から理想のゴールを共有し、一枚岩で突き進んだこと」にある。

「球場」という圧倒的なフックがなくとも、開発段階から運営パートナーや行政を巻き込み、テクノロジーと現場力を掛け合わせて”回り続ける仕組み”を設計することは可能だ。重要なのは、完成後の効率だけを追うのではなく、人の働き方、ゲスト体験、地域との関係性までを含めて、運営を起点に価値を積み上げていく視点にある。この「運営視点からの逆算」というアプローチがあれば、北広島駅前のまちづくりモデルはどの地域でも再現できる可能性を秘めている。

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