インバウンドコラム

「現場同士のつながり」が、アドベンチャートラベルの未来を拓く─JNTO初開催『国内ネットワーキング研修会』の舞台裏

2026.01.28

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日本でも注目が高まるアドベンチャートラベル(AT)。その現場を支えるDMCやガイドたちには専門性の向上だけでなく、地域を超えた“横の連携”を必要としている。だが、彼らが顔を合わせ、ノウハウやネットワークを共有する場は、これまで決して十分とは言えなかった。

この課題解決に向けて日本政府観光局(JNTO)が2025年に初めて開催したのが、「アドベンチャートラベル国内ネットワーキング研修会」だ。本記事では、事業を企画・推進したJNTO担当者へのインタビューを通じて、その背景・意義・成果をひも解く。

 

孤軍奮闘するアドベンチャートラベルのプレイヤーが次のフェーズに進むとき

日本のアドベンチャートラベルは今、成長期を迎えている。2023年に北海道で開催された国際的な商談会アドベンチャートラベル・ワールドサミット(ATWS)を皮切りに、2024年に沖縄、そして2025年に東北で実施された大型ファムトリップAdventureWEEKなどの実績を積み上げ、世界のアドベンチャートラベラーを意識した本格的な受け入れ体制を整え始めている。
だがそれは同時に、次のフェーズに進むための看過できない課題、すなわち受け入れ側の人材の底上げと全国的なネットワーク構築に向き合うことも意味している。

JNTOでアドベンチャートラベルの推進を担う市場横断プロモーション部の尾形真由子氏はこう語る。
「イベントや研修会等を通じて聞こえてくるのは、各地のDMCやガイドの方々がそれぞれ“孤軍奮闘”している現状でした。海外の商談会にも積極的に顔を出しているような各地のトップリーダーに次ぐ第二、第三の人材育成が早急に求められています」

孤軍奮闘する事業者たちからはもう一つ、他地域との連携を切望する声も上がっていた。国内のアドベンチャートラベル関係者は小規模事業者が多く、資金や時間の面でも活動範囲に限りがある。一方、日本滞在を満喫したい層にしてみると、目的地は1カ所にとどまらない。東京の次は東北でアドベンチャートラベルを楽しみ、その次はまた景色の異なる場所へ、といった多様かつ広範囲にわたるリクエストに受け入れ側が応えるには、各地の事業者がどれだけ他地域に人脈を持ち、次なる訪問地を適切に提案できるかが鍵となる。
「自分たち単独では掴みづらかったビジネスチャンスも、国内ネットワークを構築することでより広く長く日本を回っていただけることになり、市場の活性化に繋がります」と尾形氏も連携の重要性を強調する。

そこでJNTOでは現場の声に応えるべく、国内関係者のネットワーキングの場を2025年に初めて企画。日本におけるアドベンチャートラベル普及・促進の第一人者の一人である株式会社Adventure Area Consulting 代表取締役の國谷裕紀氏を事業統括アドバイザーに迎え、具体的なプランを作り上げていったという。

 

トップリーダーたちからプロの技を学ぶ「商談実演」

アドベンチャートラベル国内ネットワーキング研修会は全2回。2025年10月に長野県で、11月に広島県で開催された。どちらも1泊2日コースで、次のような構成だ。

 

<講師>

 

 

長野会場

広島会場

講師

株式会社インアウトバウンド東北
代表取締役 西谷 雷佐 氏

DAISETSUZAN EXPERIENCE
代表 荒井 一洋 氏

現地ガイド
/現地講師

リベルタ株式会社
執行役員 林 美希子 氏

一般社団法人国立公園利用企画CAN
代表理事 折原 直廣 氏

一般社団法人Hiroshima Adventure Travel
業務執行理事 佐藤 亮太 氏

同法人 理事 川口 康太 氏
同法人 理事 石飛 聡司 氏

「全国各地からアクセスしやすいように東日本と西日本で一カ所ずつ、行きやすい方を選んでいただけたらという思いで開催地を2カ所設定しました」と尾形氏。実際には、自分たちが持っていないネットワークを広げるため、“あえて遠方の開催地を選んだ”意欲的な参加者もいたという。

結果、長野県・広島県ともに15名ずつ、20代から70代までのDMC、DMO、各種ガイド、旅行会社等の関係者が全国各地から集まった。

全プログラムを通した目標は、アドベンチャートラベル商品販売力の底上げだ。一般的な研修とは一線を画するメニューが随所に盛り込まれている。

その一つが、事業統括アドバイザーの國谷氏から提案された東北・北海道のトップリーダーたちによる「商談実演」。海外バイヤーとの商談の場では、自社旅行商品の魅力や特徴、条件等を限られた時間の中で明確に伝える必要がある。プレイヤーたちによる独学が多く、明快な“正解”も掴みづらいプレゼンテーション力の向上を願って実施された。アドベンチャートラベル草創期から東北・北海道で活躍する西谷氏、荒井氏のような経験豊富なセラーたちが仮想バイヤーを相手にどのように商談を進めていくのか、その実践例が披露された。

参加者からは「自己紹介から商談までの流れ、伝え方、質問に対する受け答え、商談において大切なポイントを勉強できた」「これまでずっと自己流でしたが、見直したいと思った」等の感想が寄せられ、プロの実演を鑑に我が身を振り返る学びが始まっている。

 

ワークショップとフィールドワークで「体験+対話+つながり」を創出

プログラム中2回用意された座学のワークショップも、実践のフィールドワークをセットで展開することで、「体験+対話+つながり」を生み出す設計意図が込められている。

1日目のワークショップでは、各開催地を基盤にアドベンチャートラベル商品を造成するプレイヤーが事例を紹介し、説明を受けた参加者たちが「自分の地域でも取り入れられそうな点」や「似ている点・異なる点」を話し合った。

2日目は、実践編だ。参加者たちは前日に事例として紹介されたコースをツアー客の一人として体験する。さらにフィールドワーク後に設けられた2回目のワークショップでは、体験から生まれた気づきや、「明日から取り入れたいこと」などを速やかに言語化することで体験の価値を共有する。

例えば、長野県で開催された善光寺・戸隠早朝ウォーキングツアー。同ツアーは、各地でのウォーキングを通じ、神仏習合、神仏分離などから生まれた日本らしい文化を育んだ背景や、現代に通じる信仰の形を体感できる内容となっている。「なぜこんなに朝早いのか」という素朴な疑問も、「お数珠頂戴」と呼ばれる朝の法要の体験というストーリーの一部であることを知ることで説得力が増し、空気の澄んだ早朝の景色が神聖さを帯びて見えてくる。

また、参加者にとっては神仏習合など日本固有の精神性が宿るスポットの魅力を旅行者にどう説明すればいいのか、という視点からの気づきも大きかったようだ。「英語での説明方法やガイドの仕方など大変参考になった」「ストーリーあるガイディングを学べた」という声が上がっている。

一方、広島で参加者アンケートの満足度100%を記録したのが、時間軸を意識したピースサイクリングツアーである。戦前・戦中・戦後という三つの時間軸を通して広島で何が起きたのか、そして“どのように復興していったのか”を体感するツアーの中で、参加者は悲劇によって時が止まったままではない“ポジティブな広島”像を見出していく。

ツアーに同行した尾形氏も「最後は希望のようなものを皆が共有しているのを感じました」と述べ、改めて自己変革を促すアドベンチャートラベルの奥行きの深さを実感したという。

総じて、「座学→フィールドワーク→座学といった流れで理解度を高められる研修があれば今後もぜひ参加したい」という感想に代表されるように、長野県・広島県どちらも関係者全員が手応えを感じた取り組みとなった。

 

現場発の“連携と共創”を支える研修で日本の地域をもっと元気に

こうして初年度を好評のうちに終えたアドベンチャートラベル国内ネットワーキング研修会。「様々な立場の方々とお話する中で、自分達のすべきこと、あるべき姿とは何だろう、と見つめ直す機会となりました」「いろいろな地域の方の取り組みや考え方などを面と向かって話すことが出来て、最高でした」という参加者の熱い感想が、2日間の収穫を物語っている。各会場とも会期中に参加者同士のSNSのネットワークが立ち上がるなど、活発な情報交換が続いている。

どの会場でも関係者同士の議論が活発に交わされ、“お互いに与え合う”ような発展的な繋がりが生まれた研修になったというが、これは同時にやはり、こうしたネットワーキングづくりの場が切実に求められていたという証でもある。

尾形氏は「引き続き、日本各地のアドベンチャートラベル関係者の皆様をサポートし、地域活性に繋げていきたい」と語る。

日本のアドベンチャートラベルを各地の“孤軍奮闘”から世界を視野に入れたマーケットへと進めるために、今後も現場発の“連携と共創”を支える仕組みが求められている。

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