インバウンドコラム
JNTOの発表によると、4月の香港からの訪日者数は、イースターと清明節という祝日が重なり5連休となったこともあり、119,600人と前年の同月に比べて50.7%増し、3ヶ月連続で過去最多を記録したとのことだ。
香港での実感はどうなのかと思い、6月11日〜14日の日程で行われたITE(香港旅行博)で、現地旅行会社の関係者にヒアリングしたところ、東京、北海道、九州、関西などの人気デスティネーションのホテルは業者間で取り合いになっており、ツアーを販売したくても仕入れが出来ないほどだというのだ。
目次:
ダントツ人気の鉄道商品 地域は鉄道と一緒にアピールすべし
日本の地方は香港市場に集中するのがおすすめ
JNTOの発表によると、4月の香港からの訪日者数は、イースターと清明節という祝日が重なり5連休となったこともあり、119,600人と前年の同月に比べて50.7%増し、3ヶ月連続で過去最多を記録したとのことだ。
香港での実感はどうなのかと思い、6月11日〜14日の日程で行われたITE(香港旅行博)で、現地旅行会社の関係者にヒアリングしたところ、東京、北海道、九州、関西などの人気デスティネーションのホテルは業者間で取り合いになっており、ツアーを販売したくても仕入れが出来ないほどだというのだ。
それがなぜここまで日本が人気になったのかは、本欄の本筋からはずれるため割愛させていただくが、1年ぶりに訪れた香港でまず驚いたのは、空港、ホテル、レストランなどで、私が日本人だとわかると片言の日本語で話しかけてくる人がとても多かったということだ。もちろん、経済活動が活発になるにつれ、香港で活躍する日本人が増加して、一般の人々が日本人に接する機会がおのずと増えたというのもあるだろう。同時に、簡単な日本語を話す機会=日本を旅行した経験がある人がたくさんいる、ということも示唆しているのではないだろうか。
ダントツ人気の鉄道商品 地域は鉄道と一緒にアピールすべし
今年のITEは、昨年に比べて、ジャパンブースへの出展者数自体は増えているものの、昨年2ブースで出展していた参加団体が1ブースに縮小するなど、全体的にコンパクトになっていたのが印象的だった。円安は、日本を訪れる外国人旅行客にとっては追い風だが、日本側が限られた予算内で海外でのプロモーションを行うには厳しい状況となり、縮小はやむをえないのが現状だ。
そんな中でもひときわ目立っていたのは九州ブースであった。
九州ブースは、海外の旅行博でよく見る九州観光推進機構としてではなく、一部の九州の県とJR九州がセットになって出展しており、個人的に“我が意を得たり”という気持ちになった。
というのは、“九州”などという大きなくくりではなく、鉄道(=地元の交通手段)と組み合わせて地域ごとにアピールをするほうが、訴求力も高く望ましいと私は常々考えているからだ。
FIT(個人手配の海外旅行)客の多くは、鉄道ネットワークを利用して移動するのが一般的だが、香港に限らず多くの外国人旅行客は、ハードリピーターを除いて、日本国内の各地の距離感、特に都市から観光地への移動に必要な時間がもうひとつ掴めないことが多い。
必然的に主要な鉄道の駅を基軸とし、時刻表を参照しながら旅行の日程を作成する。さらに、正規の鉄道料金が決して安くはない日本では、多くの旅行者が便利でお得な鉄道商品(セット割引や乗り放題のパスポートなど)をフル活用しようと考えるわけだから、鉄道商品の沿線にある県が鉄道会社と協力して、それぞれの地域への途中下車を促すべく、各地の魅力をPRするのは理に適っている。
FITで日本を旅する予定の来場者たちにとっても、鉄道とその隣接する地域のセット情報は、非常に有益な情報であり、それを期待しているはずと確信している。
実際、九州に限らず、出展していたJR East、JR West、東急電鉄、京急電鉄などの交通系ブースはいずれも来場者からの人気が高く、FITの場合は鉄道を活用して日本を旅することが主流であることが、そこからもうかがえた。
一方で、リピーターを中心にレンタカーによる日本旅行のニーズが年々増えているのもまた事実である。ちなみに、筆者が商談した香港のガイドブックの出版社のダイレクターも、車で日本を旅したいという香港人日本リピーターが増えていると話していた。
香港は、日本と同じく車線が左側通行で交通ルールが似ていることもあり、運転のしやすさからも、他国に比べて、日本の地方をレンタカーでめぐる旅の需要があるようだ。今後の日本旅行、特に鉄道の幹線からはずれた地方への旅行に関する新しい需要として、レンタカー旅行に注目していきたい。
日本の地方は香港市場に集中するのがおすすめ
香港は人口こそ少ないが、9人に1人が日本に来日するという、台湾に負けない日本人気を誇る市場であり、リピーター率も高い市場だ。以前もこのコラムに書いたが、訪日外国人を獲得していきたいと考える地方は、ただ漠然と海外向けのPRをするよりも、自分たちの魅力を訴えかけやすい地域に絞って費用と労力をかけるべきであり、リピーターが多く、距離的に近い国がもっとも効率が良い。その意味で香港はまさに狙い目だ。
まずは香港の人々の文化や嗜好を研究&理解し、彼らの心に響くような地域のコンテンツを掘り起すことがその第一歩となる。
具体的な方策に関しては、地方ごとにウリとなる良さや位置環境、そしてインフラの状況にもよるため、詳細は別の機会とさせていただくが、香港とシンガポールは様々な部分で非常に似通った市場であるため、香港でのプロモーション成功事例は、かなりの部分でシンガポールでも通用することを付け加えておきたい。
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