インバウンドコラム
シンガポールの国際旅行博が内輪もめを始め、分裂開催は避けられない情勢だ。シンガポール市場はアジア全域へのとっかかりとして重要な位置を占めてきたが、この先どうなっていくのか。現地からレポートが届いた。
目次:
なぜに内輪もめ?
NATAS vs OTF
どうなる?NATAS!?
なぜに内輪もめ?
シンガポール最大の旅行博イベントとして、長年親しまれた「National Association of Travel Agents Singapore (NATAS) Travel Fair」。
小国で人口は少ないとはいえ、英語が通じること、他のアセアン各国への影響力などを考慮し、多くの日本の自治体が、NATASでの訪日外国人誘致プロモーションを行ってきた。
かつては、開催するたびに来場者数が増加し、その年に海外旅行に行く人のうち、6割がNATASで旅の行き先を決めるといわれていたほど盛況なイベントであったが、現在、シンガポールの旅行博は新しい時代に入ろうとしている。
数年前より、シンガポールを代表する大手旅行会社5社が、NATAS事務局に対し、入場料を無料にしてほしいという要望を出していたのだが、事務局サイドがそれを受け入れなかった。
そこで、反発した有志が集まり、NATASに対抗する新しい旅行博「OTF」を立ち上げ、今年3月末に開催することが決定したのである。
NATAS vs OTF
OTFとはOutbound Travel Fairの略で、シンガポールの大手旅行会社数社が共同で企画した新しい旅行博だ。
OTFの出展社リストを見ると、シンガポールの主要な旅行会社がズラリと並ぶ。
開催日程は3月27〜29日の3日間で、会場は市内中心部のマリーナベイサンズ・コンベンションセンター。マリーナベイに面し、カジノやショッピングモール、インフィニティプールで有名な高級ホテルと直結する大規模複合施設である。
2015年のNATASは3月6〜8日に行われるのだが、OTFへの申込書には、同じ月に行われる他の旅行博に参加する旅行会社の参加を認めない旨が記されており、明らかなライバル意識をもって囲い込みを図ろうとしているようだ。
出展社リストだけを考えれば、会場の立地の良さも含めて、OTFが有利なようにも思えるが、何しろ、初めての開催であり、NATASのような知名度はないので、OTFとNATAS、どちらがより成功するかは現時点では正直予測不能である。
実際に、日系の旅行会社では、JTBはOTFを、HISはNATASを選択している。
JNTOは基本的に両方に出展するものの、当初、NATASの日本ブースに出展を予定していた企業(弊社も含めて)や自治体の中にはOTFを選んだ団体も多い。
どうなる?NATAS!?
今年1月中旬、突然NATAS事務局から弊社のシンガポール・オフィスに電話がかかってきた。
内容は、OTFに対抗するために、旅行博ではあるが、出展社を旅行関係に特化するのではなく、食事等を提供するスペースを設けるので協力してほしいという要請であった。
つまり、強力な競争相手の出現に際してNATAS事務局が思いついたのは、食べものに目がないシンガポール人たちの来場動機を刺激するため、旅行博と食関連フェアを同時開催することだったのだ。
そしてOTF同様に入場料は無料とし、旅行と食のイベントにすることで集客を維持しようという考えだ。
弊社媒体には、たくさんの日本食関連の広告が掲載されていることを知っているNATAS事務局が、弊社に日本食関連担当となって、飲食を提供してくれる店や、お菓子などの食品を販売する会社を集めてほしいというのが具体的な依頼である。
弊社の見返りは、そのブース自体に弊社の名前を冠して運営ができるということ。
食関連の出展に限っては、ブースの装飾代のみの実費で出展料そのものは無料でよいため、参加企業を集めるのはさほど大変ではなかった。
このような事情により、弊社は、運よくNATASとOTF両方に出展することが可能になった。
NATAS、OTFの結果報告はまたの機会に書かせていただくが、シンガポールに視察に来られる予定がある方は、ぜひWAttentionのブースによっていただければ幸いである。
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