インバウンドコラム
4月に、2つの海外有力旅行雑誌がひとり旅に関する記事を掲載し、その両方に日本が登場しました。
英国旅行雑誌「ワンダーラスト(Wanderlust)」は、「ひとり旅したい場所 世界ベスト13」の一つとして、日本を挙げました。世界を自力で開拓したいと考える人が増えているとし、日本の他には、ガラパゴス諸島やエチオピアなどが提案されています。ちなみに、2月に発表された同誌の「ワンダーラスト読者投票2018」では、国部門で日本は5位、京都が都市部門1位に輝いています。
米国富裕層向け旅行雑誌「コンデナスト・トラベラー(Condé Nast Traveler)」は、「旅行編集者たちのお気に入りのひとり旅先」という記事を掲載しました。背景として、「女性旅行者たちは今、冒険を求めている」が、「初めての場合は特に、ひとり旅を計画することは簡単ではない」ことから、おすすめの場所を紹介しています。編集者のKatherine LaGrave氏は、公共交通機関が発達し一人で何処へでも簡単に行けること、一人利用を前提としたラーメン屋があること、犯罪率が極端に低いことなどを理由に、日本がひとり旅に適していると述べています。
安全で清潔で便利な日本は確かに、ひとり旅の難易度は低いでしょう。けれども、少ないトラブルで旅を楽しめるというだけで「日本は外国人にとってひとり旅しやすい国だ」と満足してはいけないと私は考えます。
「冒険」や「ひとり旅」と聞いた時、私たちは自然と、その旅人を若者だと想定していないでしょうか。ところが今、健康で知的好奇心に溢れたシニア層に、冒険とひとり旅を求める人も多くいます。社会的地位もお金も時間もあるシニアの旅人が、日本でひとり旅を楽しみたいと思った時、日本の受け入れ状況は万全とは言えません。彼らはドミトリーには泊まりませんし、毎食を麺類やコンビニ弁当で済ませることも望んではいません。こういった層を、きっちりと受け入れる事ができれば、満足度の高いビジネスが生まれるはずです。ところが現状は、例えば、日本をゆったり楽しむ方にこそぜひ利用してほしい旅館。一人客だと断られてしまう事が少なくありません。高価格になっても構わない旨を伝えても、受け入れてもらえないこともあります。
シニアの充実した「おひとりさま」生活に関する本がベストセラーになっていますが、外国からの「シニアおひとりさま」も満足できる国を目指す先に、健全な観光立国の姿があるかもしれません。
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