インバウンドコラム

海外メディアななめ読み:マイクロツーリズムブーム VS 今こそ憧れの地へ旅立つ人

2020.06.10

清水 陽子

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恥ずかしながらカタカナ語が苦手です。新しい言葉を使う時は特に緊張します。

さて、今、旅行のトレンドは、地元を旅するマイクロツーリズムです。5月11日に世界に先駆けてコロナウイルスへの「勝利宣言」をしたニュージーランドでは、同22日に、政府観光局がニュージーランド人に向けて、有名人を起用した観光動画「Do Something New New Zealand」を発表しました。フィジー政府観光局は「Love Our Locals」というサイトをオープンし、Facebookと連携して、地元住民向けの特別な旅行サービスを紹介しています。タイでは、来月7月から10月にかけて、120万人の医療従事者に無料の旅行がプレゼントされ、400万人に2000から3000バーツのバウチャーが配られる、国内旅行のプロモーションが計画されています。

しばらくの間は、近場での観光が主流となるだろうとの見方が有力ですが、その一方で、移動が可能な瞬間に旅をしておこうと考える人々も想像以上にいるのではないかと考えています。英旅行雑誌ワンダーラストの「コロナウィルス: どの国が開いていてどの国が閉じている?」という記事が頻繁に更新されていることからも、国境を超えて旅したい人は少なからずいるのでしょう。

私が手配しているスイスからの旅行に関して言えば、6月に新婚旅行で訪日予定だったご夫婦は、キャンセルをギリギリまで待ちました。ルフトハンザが基本的に羽田=フランクフルト間の運行を続けているので、搭乗可能な便があり隔離検疫さえ解除されれば、旅行を決行したいとの考えでした。秋以降の個人旅行も、現時点で確実にキャンセルになっているものはありません。入国が可能で、その後すぐ自由に行動できるのであれば、ぜひ来たいとの意向を聞いています。

移動が制限されるという想像もしていなかったことが現実に起き、今までいつでもできると思っていたことができなくなりました。ひょっとすると、来年はもっと厳しくなっているかも知れないし、その先だって良くなっている保証はないという将来の不確実性が、行けるときに行っておかなければという気持ちに繋がっているように思います。

以前スイスの旅行会社を訪れた時、旅行目的地としての日本の立ち位置を聞いてみたところ、「一般的で人気の旅先という訳ではないが、日本へは、いつか行ってみたいという人が、常に一定数存在する」とのことでした。欧米などで、「いつか日本へ行ってみたい」と思っていた人の気持ちが、「行けるときに行かなければ」に変わっている可能性はあるのではないでしょうか。

扉が開いた時、行きたかったところへ少人数で、あるいは一人で、確実に行ってみようとする人が、想像以上にいるかも知れません。米旅行雑誌トラベル・アンド・レジャーの、「ひとり旅に最適な国」という去年の記事が、先日サイト上にあったのも、求められているテーマだからではないでしょうか。日本はちなみに18位に入っています。

その時、旅人として気になることは、目的地のコロナの状況はもちろん、歓迎してもらえるのかどうかということです。日本政府は、既に発表済みの4カ国以外の国と地域とも、すでに40カ国以上と入国規制緩和に向けた協議を進めていると言います。海外からはまだ誰も来ないだろうと高を括ることなく、受け入れる側としては、双方の安全を確保できるのかに加えて、そもそも楽しい時間を提供することができるのかを、今から考えておく必要がありそうです。

 

清水陽子
スイス訪日旅行手配 Hase & T 代表
早稲田大学で哲学とチアリーディングを学んだのち、日本航空に客室乗務員として入社する。退社までの6年間、与えられた乗務を休んだことがない花マル健康優良児。行った事があるのは37の国と地域。暮らしたことがあるのは、カナダの小麦畑に囲まれた街、スイスの湖水のほとり、台湾の焼き餃子屋台裏のアパート。2010年からやまとごころでインバウンドニュース配信を担当しつつ、現在は故郷ヨコスカを拠点に、スイス富裕層向け訪日旅行手配業を営む。自らの海外経験から「地元の人との触れ合いこそ旅の醍醐味!」と信じて、誰かに会いに行く旅づくりを目指している。英語とドイツ語を話す一児の母

 

 

 

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