インバウンドコラム
6月CNNトラベルが、「フローティングブレックファーストってなに? なぜそんなに人気が出たのか」という記事を掲載しました。「高級リゾートや旅行インフルエンサーのインスタグラムをフォローしていると、一度はフローティングブレックファーストを目にする」と始まっており、そのインスタグラムとの相性の良さがテーマとなっています。
フローティングブレックファーストとは
まずは、「フローティングブレックファーストを知らない人のために」と「ホテルの高級な朝食ルームサービスで、トーストやフルーツ、コーヒーなどがベッドではなくプールで提供されるもの」と説明されています。大抵は大きなプレートがカラフルなバスケットに載っており、更に華やかな南国の花などがあしらわれてフォトジェニックさを増しているとか。
リゾートでのプライベートな朝食スタイルがコロナ禍で人気に
記事によると、このサービスはアジア太平洋地域で人気で、特にタイやフィジー、モルディブなど温暖な地域のプライベートビラリゾートで流行っています。バリで始まったというのが定説ですが、「フローティングブレックファースト発祥のホテル」と名乗りを上げているところはないようです。
この朝食スタイルは、ここ5年ほどリゾートで人気でしたが、新型コロナウィルスのパンデミックにより、宿泊客がブッフェやレストランでの朝食を避けるようになったため、かつてないほど人気が出ているそうです。
インドネシアの高級リゾート、アマンジオのゼネラルマネージャーはCNNに対し「この1年間、安心と安全を求める人々の間で、スイートルームでの食事が大変好まれています。フローティングブレックファーストは人気の選択肢です」と語っています。
インスタ映えは間違いないが、美味しく食べられるのか
しかし記事はこの後「豪華な彩りの朝食プレートがプールに浮かんでいる画はSNSにはもってこいだが、起き抜けで水の中に立ったままカフェインを摂取するというのは、いかがなものか」「この朝食は、オンラインでシェアするためだけのものなのか、それとも、本当に美味しく食べられているのか」と疑問を投げかけます。
この疑問に対し、シドニーを拠点にレポーターとして活躍するジェームズ・ブース(James Booth)氏が、自らの体験談と感想を語っています。
ブース氏は2019年にバリのリゾートでこの朝食を体験した際、寝坊して、決められた時間に20分遅刻してしまったそうです。食事は既に冷めていたけれども、すぐに食べ始めるのではなく、素敵な構図でインスタグラム用の写真を撮ろうとしました。流れていかない場所にうまく置かれていたトレイを手に、映える場所を探して、大きなプールエリアに出て行った結果、眠い目を擦りながらトレイが流されて行かないよう悪戦苦闘するハメになったと言います。コーヒーにはプールの水が入り、パンはふやけてしまったとか。次回は、とにかく一番にコーヒーを飲み干し、プールの中を歩き回るのではなく、座ってゆっくり食事ができるスポットを探すと話し「この素晴らしい食事は、実効性よりもコンセプトにおいて優れている」と述べています。
SNSとの相性が良いサービスはマーケティングツールとして健在
美味しい朝食として成立しているかどうかは疑問の声もありますが、フローティングブレックファーストは、コロナ禍で海外に行けない旅行者が、近場でワンランク上の旅行を楽しむ中でも受け入れられてきました。
サムイ島にあるケープ・ファーン・ホテルのゼネラルマネージャーTimo Kuenzli氏によると、ほぼ100%のゲストが、昨年1年間にフローティングブレックファーストを頼み「アジア市場では他の市場に比べて、インスタ映えする瞬間が、人々の心を捉えることがよくわかった」と言います。そして、SNSに投稿されることによって、ネット上で朝食の写真を見た人々がロケーションタグをチェックし、ケープ・ファーン・ホテルを訪れた時に同じ経験を望むため、無料のマーケティングツールになると付け加えます。
優れたコンセプトとして進化させていく
「フローティングブレックファースト」は、コンセプト次第で、高付加価値のサービスを創造できることがわかる一例です。提供するモノは同じでも、シーンを演出することで、非日常の体験にすることができます。タイのパンガン島にある高級ビーチリゾートには「フローティング サンセット スシ」というサービスがありますし、「フローティング」をアフタヌーンティーとして、または、ホテルからのプレゼントとして、提供する施設もあるようです。これからのプールの季節、「フローティング」に注目してみます。更に日本には、プライベートプール付きのビラは少ないものの、露天風呂付き客室はたくさんあります。お風呂に浮かべて、写真映えがして、実際に楽しめる、ダイニングの方法はないものでしょうか。インスタ映えのみを追求したものにならない工夫は必要ですが、ちょっとしたアイディアで、「ステイホーム」に飽き、家とは違う体験を求める人々の心に響く、新サービスが生まれそうな気がします。
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