インバウンドコラム

業界誌注目のスタートアップから読み解く、2022年世界の旅行業界トレンド

2022.01.05

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旅行業界誌PhocusWireが、2019年から毎年発表している旅行業界の注目のスタートアップ25社を発表しました。注目のスタートアップの事業展開から、2022年に加速するであろう観光/旅行業界のトレンドが見えてきます。ここでは、日々チェックしている国内外のニュースも踏まえて、伸びるであろう分野や注目しているトレンドを5つ厳選して紹介します。

 

ラグジュアリーと自由を追求する、キャンピングカーレンタル

Cabana アメリカ 2019年創業 (キャンピングカーレンタル事業)

事業概要:

ラグジュアリーな快適さと自由な移動を可能にしたキャンピングカーレンタル事業。デジタルを活用し、個人向けにカスタマイズされた旅程作成プログラムサービスを提供するなど、旅人がより旅に集中できるようにした。顧客体験に注力し、2020年の夏に始めてから1万泊以上の予約を受けた。顧客の70%はキャンピングカーを初めて利用する人達で、92%の客がもう一度利用したいと言っている。

日本でも密を避けるレジャーとしてキャンプが人気です。アメリカでは主に長期の休暇で広大な大地を移動しながらキャンピングカーを利用する為、そのビジネスモデルが日本にそのまま当てはまるかは別として、キャンピングカーには注目しておく価値がありそうです。今年6月に発表されたキャンピングカー白書2021によると、オーナーの99.2%が災害時の備えになっていると答えており、日本でのキャンピングカー市場が今後どう発展していくのか気になります。

 

ゲストの訪問データ分析で、混雑を分散

Data Duopoly’s イギリス 2019年創業 (データ分析・顧客フローマネージメント)

事業概要:

施設と訪問客のWin-Winの関係を作る。ゲストの訪問データを分析することで、ゲストは空いている時間を選んで訪れることができ、施設側はゲストの動きをリアルタイムで把握し混雑を分散することができる。また、限られた人員を最も必要とされている位置に配置することができるため、人材不足問題にも一役買いそうだ。

宿泊業界での人手不足は以前から問題となっており、更にコロナで一旦職を離れた人々が戻ってきてくれるのかが、業界全体として大きな課題です。そんななか、DXを活用し、最小限の人材で最大限の効果をもたらす工夫を始めている施設もあります。やまとごころの特集記事に登場したホテルMinn蒲田などが良い例ではないでしょうか。人材育成と同時進行で、効率的な人員配置システムの開発と活用が進んでいくでしょう。

 

チェックインから買い物まで、空港利用者向けワンストッププラットフォーム

Flyzy インド 2020年創業 (空港コンテンツ利用プラットフォーム)

事業概要:

航空会社と旅客とを一つのプラットフォームで繋ぐ事業。航空会社にとっては、広告や商品を売る機会になり、旅客にとっては、チェックインや買い物など、自分が利用したい空港内のサービスにワンストップでアクセスできる。2022年までに100以上の空港での導入を目指す。

2019年に世界に先駆けてUber Eatsのデリバリーサービスを試験的開始したカナダのトロント・ピアソン国際空港は、2021年には更にサービスを拡充させて継続しています。ドバイ空港では2021年、食事だけでなく免税品もデリバリーするサービスが始まり、ロサンゼルス国際空港ではデリバリーにロボットが導入されました。国際空港は、乗り継ぎ便で長い待ち時間が発生することもありますが、ターミナルがいくつもあって広いうえに荷物もあります。初めて訪れる旅客が途方に暮れることが多かった場所です。端末から必要な情報を得て、注文受け取りまで直結するサービスは空港でのニーズを捉えています。

 

旅行に行かずとも文化交流を促進、新スタイルグローバルマーケットプレイス

Local Purse スウェーデン 2020創業 (ガイドやアーティストにオンラインライブショッピングの場を提供)

事業概要:

旅行者はお金の節約ができ、環境への負荷を減らすことができる。旅行を公平で、誰にでもアクセスできるものにすると同時に、文化の交流は促進する。バーチャルな文化体験とライブビデオショッピングをシームレスに融合させたグローバルなマーケットプレイスを現在構築中。最小の環境負荷で最大の旅行効果をもたらす。

旅行にいけない状況が続く中、日本でもオンラインツアー市場が急成長しています。オンラインツアー参加経験と利用意向に関するアンケートによると、25.5%が興味があると答えています。中でも最も体験されているツアーは、地域産品の体験ツアーでした。地域の名産品・お土産がセットで購入できるツアーが日本でも増えていきそうです。やまとごころ出版でも『オンラインツアーの教科書 アフターコロナを見据えた「新しい関係人口」と「収益」のつくりかた』を出版し、新たな観光コンテンツとして注目しています。

 

多様な決済手段で、暗号資産による旅行ブッキングが可能に

Travala イギリス 2017年創業 (暗号資産フレンドリーな旅行ブッキングサービス)

事業概要:

OTAからラグジュアリーな旅行まで、宿泊、航空券、アクティビティなど、世界中から300万以上の旅行コンテンツを提供。従来の支払い手段も利用可能だが、業界最大手Binanceを後ろ盾に50以上の暗号資産を受け付けていて70%以上の予約が暗号通貨で行われている。

Booking.comは2019年にTravalaと提携していて、2021年には仮想通貨対応クレジットカード発行などで知られるCrypto.comとも提携を開始しています。2021年6月にラスベガスにオープンした「リゾートワールド・ラスベガス」は、暗号資産の大手仮想通貨取引所ジェミナイ(Gemini)と提携し、暗号資産の使用を可能にしました。暗号資産のATMマップアプリCoinATMRadarによると、ラスベガス市内には暗号資産のATMが点在しています。日本ではHISが、2017年から暗号資産ビットコインによる決済を開始し2021年現在も都内9拠点33店舗で取り扱っています。暗号資産による決済にもチャンスがあるかもしれません。

 

ここでとりあげた5社以外でも、女性旅行者と女性ホストを繋ぐサイトFemmebnbや、アクセシブル・ツーリズムに特化したWheel the Worldなど、興味深いスタートアップが並んでいます。また、選ばれた企業記事に、共通して頻出していたのが「体験」「パーソナライズ」「シームレス」という単語です。個人に特化したサービスを、顧客が現実的にどのような体験ができるかに着目して提供し、そのサービス自体、また関連サービスにもスムーズに辿り着けるシステムを構築することが求められているようです。

 

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