インバウンドコラム
中国では毎年、春節(旧正月)の前後が7日間の大型連休となり、中国全土が一年で最も盛り上がりを見せる時期となります。以前は帰省して家族とともに過ごすことが多かった春節ですが、最近では国内外を旅行する人も多く、日本を訪れる人々も増加しています。今回は春節の基本的な知識をおさらいし、今年の傾向についてご紹介します。
春節の基礎知識
春節とは、中国における旧暦のお正月(旧正月)です。中国には春節、清明節、労働節、端午節、中秋節、国慶節と呼ばれる国民休日がありますが、その中でも大型連休の代表とされるのが春節です。春節は中国本土のほか、台湾、香港、シンガポール、韓国、ベトナム、マレーシアなどでも国の祝日として定められており、海外に暮らす中国人も「チャイニーズニューイヤー」としてお祝いをします。日本と同じく、大晦日には大掃除をし、当日には餃子や湯圓(たんゆえん)などの正月料理を家族で食べ、子供にお年玉を渡すといった習慣があります。また、春節期間中は赤色の飾りが町中を華やかに彩り、龍や獅子の舞でお祝いする風習などもあるそうです。
2020年の春節は1月24日(金)〜30日(木)の7連休
中国の春節は太陰太陽暦に基づいているため、例えば2018年は2月16日、2019年は2月5日と毎年日にちが異なります。今年は1月25日(土)が春節で、1月24日(金)の大晦日から1月30日(木)までの7日間が春節連休として定められています。なお、春節の正式なスケジュールは毎年、前年の12月に国務院(中央政府)から発表されます。春節連休は故郷に帰省する人が多く、約30億人が移動する「春運」が毎年話題となりますが、最近では国内外へ旅行する人が増えるなど、連休の過ごし方は年々多様化しているようです。
<2020年春節スケジュール>
1月24日(金) 大晦日
1月25日(土) 春節(旧正月)
1月26日(日) 休み
1月27日(月) 休み
1月28日(火) 休み
1月29日(水) 休み
1月30日(木) 休み
1月31日(金) 稼働開始
2020年の春節で人気の渡航先はタイと日本
中国最大のオンライン旅行会社Ctripが発表した、今年の春節を旅行先で過ごす中国人に関する最新のトレンド予測によると、今年は延べ4億5000万人が旅行に出かけると予想されています。また、旅行に出かける人のうち54%が「親子旅行」で、子連れで旅行に出かけるのが最も多いのは「80後(1980年代生まれ)」の世代となっています。以前は大晦日を家で過ごしてから旅行に出かけることが多かったそうですが、最近では春節連休前にツアーで旅行に出かける人々が増え、旅行先でお正月を迎えるのがトレンドとなっています。また、海外の人気渡航先トップ3はバンコク、大阪、東京の順で、国別では日本、タイ、シンガポール、フィリピン、ベトナムなど、アジアの近隣諸国に人気が集まっています。また、中国海外旅行研究所の予測では、2020年の春節連休中の海外旅行者は延べ700万人超になる見込みで、昨年の630万人からさらに増加するとみられています。2000年の年間の中国の海外旅行者数が延べ1050万人だったことと比較すると、近年の春節連休では海外旅行がいかに人気であるのかがわかります。
インバウンド業界では春節が商機に
先にも述べた通り、中国における今年の春節連休には延べ700万人超が海外旅行者に出かけると推測されています。人気の渡航先となっている日本では、春節連休を目前に中国人観光客の受け入れ整備を進めている事業者や自治体も多いでしょう。中国からの訪日リピーターが増え、「モノ消費」から「コト消費」へと移行している昨今、旅行業界であれば体験コンテンツにより一層磨きをかけていくことも重要です。小売業では中国人観光客の消費機会を逃さないために、モバイル決済の導入が必須となります。なお、中国で人気のAlipayやWeChatPayでは春節期間中に割引キャンペーンを行なっています。日本では横浜、神戸、長崎の中華街はもちろんのこと、大阪や名古屋でも毎年春節祭が行われていますので、春節の文化・風習を実際に体験してみるのもおすすめです。中国人観光客が日本で新年を迎えるにあたり、「また来たい」と思ってもらえるようなおもてなしの気持ちを心がけたいですね。
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