インバウンドコラム
中国全土でネットショッピングセールが行われ、一大商戦が繰り広げられる国民イベントの一つ、11月11日の独身の日。大規模なキャンペーンが開催され、中国国内だけでなく海外の企業も参加するなど、例年その規模は拡大しています。今回は、中国最大のECイベント「独身の日」について、昨年の実績や傾向を振り返りながら、2022年の動向を予測します。
独身の日とは?
中国で「光棍節(こうこんせつ)」と呼ばれている独身の日、11月11日は独身者を連想させる「1」が4つ並ぶことから、1993年に南京大学の学生たちがこの日を独身者の記念日としてパーティーをしたのが始まりで、2009年には中国のEC最大手のアリババがこの日に目をつけて大規模なセールを実施しました。その後、アリババ以外のECサイトも参戦するようになり、今では中国最大のEC商戦の日となっています。中国では11月11日に行われるネットショッピングイベントを「双十一」「双11」や「W11(ダブルイレブン)」などと呼んでいます。
2021年の独身の日実績、大手2社で15.8兆円、昨年人気の商品は?
中国のECサイト市場では、アリババが運営する中国最大手の天猫(Tmall)と、第2位の京東(シンドン、JD.com)が、シェアの8割を占めています。2021年の独身の日取引額は、天猫が5403億元(約9兆6000億円)、ライバルである京東がで3491億元(約6兆2357億円)を記録しました。両社を合わせた取引総額は約15.8兆円にのぼり、楽天グループ国内EC事業の2021年年間流通総額約5兆円と比べると、独身の日は楽天の1年分の約3.5倍を売上げたことになります。
例年は各社がWeiboで「開始〇秒で〇億元突破」など盛況ぶりを随時アピールしていましたが、2021年は中国政府が掲げる「共同富裕」の政策方針のもと、過度な購入を煽る情報発信は自粛されました。
人気商品TOP3は家電製品、スマートフォン、衣服。パソコンではLenovo、テレビでは海信、スマートフォンではAppleと中国ブランドのOPPOが人気でした。また、伸び率が高かった商品として、女性用ナプキン、美容機器、キャットフードが挙がっていました。日本ブランドを見てみると、ユニクロ、資生堂、パナソニック、ソニー、バンダイなどが人気で、特に美顔器ブランドのヤーマンはライブコマースでの販売が功を奏し、6年連続で美容機器部門で1位を獲得しています。
2022年の傾向は? 天猫では29万以上のブランドが出店、消費者の利便性向上
今年で14回目を迎える独身の日。2022年は10月24日から既に一部のECサイトでプレセールがスタートしており、11月11日まで約3週間にわたってEC商戦が展開されます。例年は深夜0時を解禁としていましたが、今年は午後8時から販売開始となっているため、消費者は夜更かしする必要はなくなりそうです。また、昨年に引き続き、中国政府が打ち出している「共同富裕」のスローガンのもと、過度な購買を煽る活動は自粛されており、消費者はサイトごとの価格競争に右往左往しなくて済みそうです。他のECサイトでより安い値段で売っていたら、その差額分を返金してくれる機能も装備されるようになりました。
天猫では今年も昨年同様、29万以上のブランドが参加すると発表しました。モンクレールやフェラーリなど初登場の高級ブランドもあり、世界中から有名ブランドが集結。ショッピングカートの上限も120から300に拡大され、家に居ながらにして、世界中の商品を買い物しやすい環境が整ってきています。
越境EC向けの流通体制を強化、通関申告のデジタル化と24時間体制の入出庫
アリババグループの物流部門、 Cainiao(ツァイニャオ)ネットワークは10月26日、独身の日に参加する海外企業向けの物流支援策を発表しました。通関申告のデジタル化や24時間体制での入出庫対応で、輸送時間は2〜3日短縮、コストは前年比で最大20%削減を目指す計画です。日本製のウイスキーやペットフード、韓国製のコンタクトレンズなど、人気がある輸入商品を管理するため、中国の主要都市に専用の保税倉庫を開設しました。独身の日の予約販売に向け、世界中の200の港から集まった3億7000万点以上の商品が既に倉庫に保管されているそうです。
まとめ
ゼロコロナ政策のもと、厳しいロックダウンを敷いてきた中国。自由な海外渡航もいまだ制限がかかり、実質的には解禁していない状況です。家に居ながらにして国内外の魅力的な商品をいつもより安く手に入れられる独身の日は、待ちに待ったイベントといえそうです。その日が来るまで買い控えをする人や、欲しい商品を買うために、事前にデポジットを払い、独身の日当日に残金を支払う人もいるほどです。Z世代ではライブコマースで購入すること自体がエンターテインメントとなり、独身の日にSNS投稿が増える傾向にあります。今年はどんな商品が人気になるのか注目です。
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