インバウンドコラム
観光庁はこのほど、2023年(令和5年)度の当初予算を発表した。2023年度の予算は、前年比38%増の307億300万円となった。2022年度は1兆円規模で計上していたGo Toトラベル事業は姿を消し、代わりにインバウンドの本格的な回復に向けた施策が多く入った。ここでは前年までと違いを主軸に、主な内訳や、特に注目すべき項目などを詳しくみていく。
(図出典:令和5年度観光庁関係予算決定概要)
「観光立国復活の基盤強化」「インバウンド回復への戦略的取り組み」の2本柱
財源別にみると、一般財源は前年度141億5800万円から約32億円減少の109億7200万円、国際観光旅客税財源は前年度80億9500万円から倍増の197億3100万円となった。東日本大震災復興予算では、福島県への支援事業とブルーツーリズム事業ともに前年と変わらず、合計で7億7000万円を充てる。第2次補正予算として1500億円も決定した。
2022年度は4本柱であったが、2023年度は2022年8月に行われた予算概算要求時と同じく、以下の2つの柱に集約された。
(1) 観光立国復活に向けた基盤の強化に130億9400万円
(2) インバウンド回復に向けた戦略的取組に170億5700万円
(1) 観光立国復活に向けた基盤の強化に130億9400万円
(1) の内訳で最も多くの予算を割いたのが、「文化資源を活用したインバウンドのための環境整備」40億円だ。次いで「国立公園のインバウンドに向けた環境整備」に25億4500万円、「ポストコロナを見据えた受入環境整備促進事業」に21億4300万円となっている。
2022年10月以降の本格的なインバウンド再開を受けて、コロナ禍により大幅に予算を減額していた3事業の大幅予算増額も行う。「国際競争力の高いスノーリゾートの形成促進事業」で前年度比180倍(2023年度予算1億8000万円)、「地域観光資源の多言語解説整備支援事業」の同118倍(1億1800万円)、「世界に誇る観光地を形成するためのDMO体制整備事業」同50倍(同5000万円)だ。
(2) インバウンド回復に向けた戦略的取組に170億5700万円
170億円の内訳をみると、「戦略的な訪日プロモーションの実施」に123億5600万円と全体の約7割の額を充てた。残りは「円滑な出入国の環境整備」に36億4800万円、「円滑な通関等の環境整備」に7億3700万円となっており、上位3項目で9割8分を占めている。ここでもインバウンド客復活を見込み、出入国に関わる予算が一気に増えた。
2023年度の新予算「食」と「地域」の付加価値向上を強化
8月に発表された予算要求を受けて、今回新たに予算が決まった項目が2つある。1つ目は地域の資源を生かした宿泊業等の食の価値向上事業で5600万円の要求に対し満額、2つ目は地方における高付加価値なインバウンド観光地づくりの支援事業で4億円の要求に対し、4分の1の1億円に決定した。高付加価値の観光地づくり事業は富裕層を誘客できる地域をモデル観光地として全国で10カ所程度選定し、その地域に対してマーケティングやブランディングの専門人材の派遣、ハイエンドコンテンツの造成などを総合的に支援する。この高付加価値事業に対しては 2022年度第2次補正予算から1000億円を活用するとしている。
インバウンド復活の足がかり、2025年の大阪万博に向けた「文化資源」活用
1つ目の柱で最も多くの予算を充てた「文化資源を活用したインバウンドのための環境整備」40億円には、前年度までにはなかった、新たな施策が盛り込まれている。具体的には、2025年大阪・関西万博に向けて、最高峰の日本文化芸術を海外へ発信するため、文化資源の磨き上げに取り組む。また、新たなキーワードとして「Living History=生きた歴史体験」プログラムも加わった。例えば、日本各地にあるお城で忍者体験や茶会体験、宿泊体験などをするもので、インバウンドによる地域活性化を目指す。欧米豪の市場向けに情報発信を強化したり、文化財の多言語対応も含まれている。
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