インバウンドコラム
中国全土が1年で最も盛り上がりを見せる春節(旧正月)。例年、多くの人が帰省や国内外の旅行を楽しみますが、コロナ禍のここ数年は中国政府による厳しい外出規制が続き、移動者が激減、旅行するにしても近距離や同省内に留まるのが主流でした。
ようやく団体旅行、個人旅行ともに全面解禁となった2024年は国内外の旅行需要が高まることが予想されます。人々の春節の過ごし方はどうなるのか、春節の基礎知識から2024年の傾向まで紹介します。
春節の基礎知識
春節とは、中国における旧暦のお正月(旧正月)です。中国には春節、清明節、労働節、端午節、中秋節、国慶節と呼ばれる国民休日がありますが、その中で最も伝統的かつ大型連休とされるのが春節です。春節は中国本土のほか、台湾、香港、マカオや華僑の多いシンガポール、マレーシアでも国の祝日として定められています。
日本の年末年始と同じく、大晦日には大掃除をし、春節の0時には除夜の鐘ならぬ爆竹や花火を盛大に鳴らし、当日には正月料理を家族で食べ、子供にお年玉を渡すといった習慣があります。また、春節期間中はメインカラーでありおめでたい色の「赤」で、家や町中を飾り付けます。2024年は辰年なので、辰をモチーフにした装飾品も人気のようです。
2024年の春節は2月10日(土)~2月17日(土)の8連休
中国の春節は太陰太陽暦に基づいているため、毎年日にちが異なります。2024年の春節の正式なスケジュールは、2023年10月下旬に中国国務院(中央政府)から発表され、2月10日(土)から2月17日(土)までの8日間が春節連休として定められました。政府は企業に対し、旧暦の大晦日に当たる2月9日(金)も有給休暇を与えることを推奨しており、9連休となる人も多そうです。
<2024年春節スケジュール>
2月4日(土)・14日(土)振替出勤日
2月9日(金)大晦日
2月10日(土)~17日(土) 春節(旧正月)
2023年の春節休暇は国内旅行者数延べ3億人、出国者数は144万人
中国文化観光部の発表によると、2023年の春節中(1月21日から27日)の国内旅行者数は2022年比23.1%増の延べ3億800万人でした。2019年比では88.6%に当たり、約8割超まで回復しました。毎年、主要な観光地ではこの時期に入場料の無料化や割引を行なわれますが、2023年は全国の観光地のうち9.0%に当たる1281カ所が無料開放されました。
また、北京市、成都市、西安市、重慶市などでは夜間の遊覧船、ショー、ライトアップなどを通して夜間の消費を促進しました。こうした取り組みの結果、春節期間の国内観光収入は2022年比30.0%増の3758億4300万元(約7兆1410億1700万円、1元=約19円)で2019年の73.1%の水準でした。
海外旅行者も大幅に増加しました。国家移民管理局によると、出入境者は2022年比で約2.2倍の延べ287万7000人、1日当たりでは延べ41万人でした。そのうち出境者数は2022年比で約2.2倍の延べ144万3000人でした。
「春運」期間の大移動、2024年の傾向は? 氷雪旅行と温暖な旅行先が人気
中国では春節前後の40日間を「春運」と呼び、鉄道、道路、飛行機など、どの交通機関も一斉に混雑します。2024年の春運は1月26日~3月5日までの40日間で、中国政府の李揚交通運輸次官は1月16日の会見で「春運期間中の地域をまたいだ移動数は自動車が72億人、船を含む他の交通手段が18億人、合計すると過去最高の約90億人に上るだろう」との見方を示しました。なお、2023年の春運期間の移動数は延べ約47億3300万人でしたが、今年は一般道の移動も算入したため予想が大幅に増えたとのことです。
鉄道チケット予約は1月12日からスタートしており、重慶、ハルビン(哈爾浜)、貴陽、成都、昆明、西安、長沙、鄭州などに向かう列車が人気です。旅行サイト「同程旅行」によると、2024年の春節の旅行目的では「雪を見るために北上する」や「避寒のために南下する」という傾向が強く出ており、国内ではハルビンの氷雪旅行、海外では日本の北海道への注目が高まっています。
「同程旅行」の責任者は、「今年は春節前後に6日間休暇を取れば土日を加えて最大16連休となり、南極へ行っても間に合う。国内では三亜のリゾートホテルや南京のランタンフェスティバル、ハルビンで氷や雪を楽しむ旅行などが注目を集めている」と話しました。
また、温暖な気候の観光地として国内では広州、昆明、貴陽、深センが人気で、海外では、マレーシア旅行が2023年の52倍、タイ旅行が2023年の37倍の予約が入っています。
飛行機での移動は2019年水準に戻る見込み、日本路線は600便増便予定
中国民用航空局中国民用航空局は1月8日の定例記者会見で、2024年の春運期間中に航空機で移動する人は、コロナ前の2019年より1割ほど増えて延べ8000万人と過去最高を更新する見込みで、便数は2019年とほぼ同水準の1万6500便となる見通しを発表しました。
さらに、春運期間中に国際定期便および特別チャーター便を2500便以上増便すると明らかにしました。内訳は日本路線が600便、タイ路線も600便、韓国路線は200便、シンガポール路線は150便、マレーシア路線とインドネシア路線は各100便以上となっています。
海外では欧州や豪州など長距離が人気
国内旅行先で最も人気となっているのは前述したハルビン、次いで、重慶、北京、成都、広州、昆明、貴陽、西安、上海、深センの順となっています。一方、海外旅行先では、東南アジアが人気で、アラブ首長国連邦やオーストラリアといった中・長距離路線もトップ10に入っています。
旅行サイト「Qunar.Com」では、国内旅行先では三亜、大理、北海、海口、シーサンパンナ(西双版納)、海外旅行先ではオーストラリアやスペイン、スイス、フランス、ニュージーランドといった欧州や豪州などの検索が急増している傾向が出ています。
中国旅行社総社(江蘇)の関係者は「欧州や米州、オーストラリア・ニュージーランド行きの長距離路線、及び欧州の海・川のクルーズ旅行といった商品が既に発売されており、売れ行きは順調。大型連休を使った長距離旅行が人気になるのではないか。」との見方を示しました。
2023年の春節の頃はまだ、個人による自由な海外旅行が規制されていましたが、今年はそうした出入国規制が全面的に撤廃されて以降、初めての春節を迎えます。日の並びも良く、大型連休も可能なため、一気に海外旅行への需要が高まりそうです。600便以上の増便が予定されている日本にも、中国人観光客が本格的に戻ってくることが期待されます。
最新記事
ユーロモニターが2025年消費者トレンドを発表。健康的寿命の追求、プレミアム嗜好など5つのトレンド解説 (2024.11.22)
2025年度観光庁予算要求627億円、前年比1.2倍。ユニバーサルで持続可能な観光に重点、宿泊業への支援も強化 (2024.08.30)
【徹底解説】2024年度観光庁予算決定、前年比64%増の503億円。前年比大幅増の施策は? ガストロノミーなど3テーマ新規計上 (2023.12.26)
2024年 世界の消費者トレンド6つの注目トピックス、生成AIやサステナブル懐疑、広がる分断など (2023.12.13)
11月11日、世界最大級のECショッピングイベント「独身の日」、2023年中国EC大手の動きは? (2023.10.31)
中国市場のマーケティング戦略、競合市場との差別化カギに。20~40代のボリューム層に照準あて施策展開 (2023.09.15)
2023年の中国大型連休「国慶節」3年半ぶりの海外旅行解禁、訪日への影響は? (2023.09.13)
2024年度観光庁予算要求前年比2.2倍の670億円、高付加価値化に120億円計上 (2023.08.30)