インバウンドコラム
2025年度観光庁予算決定530億円、前年度比5.4%増。デジタル技術活用に重点、デジタルノマド誘致や旅ナカコンテンツの継続販売支援新たに計上
2025.01.10
観光庁はこのほど、2025年(令和7年)度の当初予算が決定したことを発表した。2025年度の予算は、2024年8月に発表していた627億6200万円に対して、530億3300万円、前年度の503億1800万円に対して5.4%増となった。
2025年度も、前年度と変わらず、「持続可能な観光地域づくり」、「地方を中心としたインバウンド誘客の戦略的取組」、「地域交流拡大」の3本柱を軸に構成されている。
ここでは、前年度との比較や新設項目などを軸に、予算の主な内訳を詳しくみていく。
(図出典:令和7年度観光庁関係予算決定概要)
持続可能な観光、地方誘客、国内交流拡大に注力
まず財源別にみてみると、一般財源は前年度100億2500万円から10億9500万円減少の89億3000万円。国際観光旅客税財源は402億9300万円から9.52%増の441億300万円となった。東日本大震災復興予算では、福島県への支援事業とブルーツーリズム事業ともに前年とほぼ同額の計7億6600万円を充てる。2024年度の第2次補正予算として543億2400万円も決定した。
(1)持続可能な観光地づくり、(2)地方へのインバウンド誘客、(3)国内交流拡大の3本の柱の内訳をみてみよう。
持続可能な観光地域づくりに向けたデジタル化を推進
1.持続可能な観光地域づくり………53億9900万円(前年度比1.05倍)
2025年度は、持続可能な観光地域づくりにおいて、ICTやDXなどのデジタル技術を活用した観光振興に重点が置かれている。
「ICT等を活用した観光地のインバウンド受入環境整備の高度化」(18億6600万円)や「DMOを核とした世界的な観光地経営モデル事業」(2億5000万円)の予算が前年度と比較して増額されている。これは、インバウンドの増加に対応し、広域周遊促進のための環境整備を推進する狙いがある。
「全国の観光地・観光産業における観光DX推進事業」には12億3000万円。DXを推進し観光産業の収益・生産性向上、地域全体の消費拡大を目指す。デジタルツールの導入支援、専門人材による伴走支援、地域活性化モデルの創出、DMOの経営戦略策定にデータ活用モデルの開発などが行われる。
「ICT等を活用した観光地のインバウンド受入環境整備の高度化」には、前年度比1.88倍の18億6600万円と、最も多くの予算を充てた。これまで実施してきたメニューに加え、「二次交通の高度化」「免税制度改正に伴うシステム改修」など、デジタル技術を活用した新たな取り組みも盛り込まれている。
14億4000万円を要求していた「地域における受入環境整備促進事業」は、6億2000万円となった。
その他、人材不足対策事業や持続可能な観光推進モデル事業は前年度から減額となっているものの、それぞれ1億3000万円、5000万円が充てられた。通訳ガイド、民泊、統計については前年度からほぼ横ばいとなっている。
なお、8月に公表された予算概算要求で30億円としていた「地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化」、3億円を充てた「観光産業再生促進事業」は、2024年度補正予算を充当する。
新たにデジタルノマド誘客や観光コンテンツ事業者支援などを盛り込む
2.地方を中心としたインバウンド誘客の戦略的取り組み………464億1800万円(前年度比1.06倍)
大阪・関西万博を契機とした全国への誘客プロモーションを強化する一方、新たな観光客層の開拓や、観光コンテンツの質的向上による消費拡大を図るための施策が打ち出されている。
まず、JNTOを中心とした訪日プロモーションでは、前年度1.04倍の130億円を確保し、特に万博をきっかけとした日本各地への訪問を促す取り組みが強化される。
「新たなインバウンド層の誘致のためのコンテンツ強化等」も前年度19億8600万円から1.27倍の25億2000万円に増額。歴史的資源を活用した観光まちづくりに加え、新たに「ローカルガイド人材の持続的な確保・育成」が盛り込まれた。地域の魅力を深く理解し、多言語で案内できる人材を育成することで、より質の高い観光体験を提供し、満足度向上を目指す。
前年度比で予算が増額されたものの一つには「公共交通利用環境の革新等」が挙げられる。地方誘客促進に向け、空港や港湾から地方部の観光地までの公共交通機関における多言語対応や無料Wi-Fi設置、決済システムなどの受け入れ環境整備に役立てる。前年度5億円から1.34倍の6億7000万円を充てるほか、2025年度からは、乗り場や地域の特性を活かした待合施設の環境整備などの整備にも予算が活用できるようになった。
さらに、2025年度から新たに2つの事業がそれぞれ1億円ずつ計上された。
1つ目は「質の高い消費と投資を呼び込むためのデジタルノマド誘客促進事業」。世界的なデジタルノマドの増加に対応し、日本に滞在して、働きながら観光を楽しむことができる環境を整備し、地方への誘客と長期滞在による消費拡大を狙う。
なお、2024年4月にはデジタルノマド誘客のモデル実証事業に取り組む地域の公募が行われ、沖縄や福岡など5地域が選定され、受け入れ環境整備やプロモーション、モニターツアーなどが実施された。
2つ目は「観光コンテンツ事業者の収益性改善モデル構築事業」。ネイチャーアクティビティなどの観光コンテンツ造成に取り組む地域を中心に、継続販売に課題を抱える事業者を支援する。中長期的な戦略策定を支援することで、収益性向上と持続的な事業運営を促す。
また、外国人向け消費税免税制度に関しては、2025年度税制改正で「リファンド方式」への見直しが決定しており、課題の収集、分析、移行に伴う周知広報などを行うため、1600万円の予算が充てられている。
国内交流拡大への予算は、前年度比よりマイナス
3.国内交流拡大………4億600万円(前年度比0.61倍)
国内交流拡大の内訳は、「新たな交流市場・観光資源の創出事業」に3億7600万円。前年度比で9.3倍の5億円を要求していた「ユニバーサルツーリズム」には、3000万円が充てられた。テレワークやワーケーションなどの関係人口づくり「第2のふるさとづくり」の推進で、国内交流需要の拡大が図られる。
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