インバウンドコラム
観光庁は2026年度(令和8年度)の予算概算要求を公表した。要求額は前年度比1.3倍の813億5900万円で、一般会計は1.2倍の106億9400万円、国際観光旅客税を活用した施策は1.43倍の700億円となった。ユニバーサルツーリズムの促進や人材不足対策、外国人向け消費税免税制度の「リファンド方式」移行支援などが予算額大幅増となっている。
ここでは、大幅に増加した要求額を中心に注目すべき項目などを詳しくみていく。
(図出典:令和8年度観光庁関係予算概算要求概要)

持続可能な観光づくりに22.9億円、人材不足対策は6倍増の3億円に
一般会計は、前年同様(1)持続可能な観光地づくり、(2)地方を中心としたインバウンド誘客、(3)国内交流の3本柱である。
1. 持続可能な観光地域づくり………22億8900万円
持続可能な観光地づくりには、前年比1.46倍となる22億8900万円を要求。中でも対前年比6倍の3億円という大幅増となったのが、観光地・観光産業における人材不足対策事業だ。インバウンドを筆頭とする観光需要の急速化、特に宿泊業の人手不足に迅速対応すべく、対策事業を実施する。具体的には、宿泊業の魅力発信イベント、人手をかけるべき業務に人材を投入するために、自動チェックイン機、配膳・清掃ロボット等設備投資の支援、外国人人材の確保と定着を目指したジョブフェアやマッチングイベントなどがある。
地域地域一体となった持続可能な観光地経営推進事業は1.36倍の9億1000万円に。オーバーツーリズム対策、「交通空白」など地域によって異なる観光課題の原因・本質の明確化と取組の具体化を、住民を含めた地域一体で進めていく。観光需要が成長軌道に乗り、全国各地での「持続可能な観光」取組が本格的に始動していることから、世界市場に歩調を合わせる。
また新たな予算として、能登半島地震からの復興に向けた観光再生支援事業(1億円)が盛り込まれた。被害を受けた観光地の復興のため、施設復旧や事業継続に加え、復興計画の策定、魅力向上のための取り組み、人材確保、誘客促進を図るためのコンテンツ造成などを支援する。
外国人免税制度の「リファンド方式」移行を支援、MICE誘致も倍増
2.地方を中心としたインバウンド誘客の戦略的取組………68億7900万円
前年度要求額61億6000万円から1.12倍の68億7900万円に増加、なかでも大幅な増加となったのは、外国人向け消費税免税制度の「リファンド方式」移行支援事業等で対前年度比6.25倍の1億円。令和7年度税制改正に伴い免税店等への周知広報を実施したが、2026年度は旅行者の満足度を高めるため、旅マエ・旅ナカ・出国前の効果的な注意喚起を行い、港湾や空港での混乱を防ぐ。また地方の消費拡大を狙い、免税に関する面的な取組を支援する。

対前年度比で約2倍の予算となったのはMICE誘致の促進で、3億4400万円。2030年に国際会議開催件数を世界5位以内にするという目標達成に向け、国際競争力強化を目指した基盤整備を行い、各地域の魅力を海外に効果的に発信する。
海外教育旅行を通じた若者の国際交流の促進も、前年度比で2倍の4000万円を要求した。日本人の国際感覚の向上や国際間の相互理解に繋がるアウトバウンドの重要性を認識し、海外教育旅行のプログラム開発を進めていく。
地方部での滞在促進のための地域周遊観光促進事業は前年度比1.2倍の5億4500万円で、旅行者の地方周遊促進、滞在時間や宿泊数の増加への取組を行う。予算的に最も大きい戦略的な訪日プロモーションの実施は前年度比1.06倍の58億5000万円を要求、日本政府観光局(JNTO)を通じてプロモーションを行う。
ユニバーサルツーリズム整備13倍増、多様性や日本の高齢化需要に対応
3. 国内交流拡大………7億2600万円
国内交流拡大は、全体要求額が前年度比1.79倍の7億2600万円となった。中でも極めて大幅な増加を見たのが、ユニバーサルツーリズムの促進に向けた環境整備で、対前年度倍率13.3倍の4億円に。日本の人口減少が進み、増加する見込みの後期高齢者の旅行需要を促進する旅行商品の造成や、ユニバーサルツーリズム(誰もが気兼ねなく参加できる旅行)の普及と定着を目指す。事業内容としては、旅行が困難な人の需要掘り起こしに関する調査、宿泊施設等と連携した商品造成に向けたモデルツアー、バリアフリーの整備導入支援などがある。

東日本大震災からの復興枠は、福島県における観光関連復興支援事業は5億円で前年度と変わらず、ブルーツーリズム推進支援事業は1億6600万円で前年度から減少した。
国際観光旅客税700億円、前年度比1.43倍で地域資源整備へ
国際観光旅客税を活用したより高次元な観光施策の展開………700億円
こちらは、前年度予算額490億円(宮内庁計上分を含む)から1.43倍の700億円が編成された。
特に新規性と緊急性の高い施策に充当することを掲げ、受益と負担の関係、先進性、費用対効果、地方創生への貢献の観点から、毎年見直しが行われている。令和7年度の事業を例にすると、ストレスフリーで快適な旅行環境の整備、日本の多様な魅力に関する情報入手の容易化。そして地域固有の文化・自然等を活用した観光資源の整備による体験滞在の満足度向上、といった分野に充当された。

令和8年度(2026年度)観光庁関係予算決定概要詳細はこちら
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