インバウンドコラム
毎年10月1日から始まる、中国の大型連休「国慶節」。2025年は、例年より1日長い8連休となります。日本へのインバウンド需要は、過去最高の水準で推移しており、今年の国慶節も引き続き多くの中国人観光客が日本を訪れると予想されます。さらに、定番の観光地だけでなく、地方のニッチなスポットにも注目が集まっているようです。
この記事では、2025年の国慶節のインバウンド動向や、日本の観光業に与える影響について詳しく解説します。

国慶節とは
国慶節(こっけいせつ)とは、中華人民共和国の建国記念日にあたる祝日のことで、毎年10月1日に定められています。1949年10月1日に毛沢東が天安門広場で新中国の成立を宣言したことを記念し、翌1950年から国の祝日として制定されました。
中国では国慶節にあわせて7日程度の連休が設けられ、これを「十一(シィーイー)」や「ゴールデンウィーク」と呼ぶことがあります。この期間は全国で家族の帰省や国内旅行、海外旅行が活発になり、多くの人々が観光名所や都市部、地方の観光地に移動します。
また、買い物やレジャーなどの消費も集中するため、中国国内の社会や経済活動に大きな影響を与える一大行事です。国慶節は単なる休日ではなく、中国の歴史と国民生活を象徴する重要な祝祭日となっています。
2025年の国慶節はいつ?
2025年の国慶節は、10月1日(水)から10月8日(水)までの8日間の連休となります。例年の国慶節はおおむね10月1日から7日までの7日間で設定されることが多いですが、今年はもう一つの祝日である中秋節が10月6日(月)にあるため、国慶節と重なり、連休が1日延長される形になっています。
なお、中秋節は中国の伝統的な祝日で、家族で月を眺めながら団らんを楽しむ日として古くから親しまれており、月餅を食べる習慣もあります。
2025年〜2026年・中国の祝日カレンダー
国慶節や中秋節を含む、2025年〜2026年の中国の法定祝日と連休の期間を以下にまとめました。
2025年の国慶節、中国人の旅行動向は?
2025年の国慶節は例年より1日長い8連休となることで、中国国内外における旅行需要が大幅に拡大しています。中国鉄道当局によると、9月29日から10月10日までの12日間での旅客輸送数は、約2億1900万人に達する見通しで、前年の10日間で約1億7700万人を大きく上回ると予測されています。
国内旅行、癒しや心の充足を重視する没入型旅行へ
オンライン旅行会社・同程旅行のデータによれば、国内航空便の検索数は前年同期比で30%増加。Fliggyでも、航空、鉄道、レンタカーの予約がいずれも好調に推移しており、特にレンタカーを利用した周遊型旅行は前年比93%増と、個人旅行や複数の目的地を巡るスタイルへの関心の高さがうかがえます。
国内旅行では、「秋を愛でる」をテーマにした紅葉狩りや自然体験への人気が高まっており、景勝地の宿泊予約は前年と比べて30%以上増加しています。さらに、混雑を避けて静かに過ごせる小規模な観光地や第三線都市以下の地方都市への需要も拡大。体験性や没入感を重視した新しい旅行スタイルが広がりを見せています。
また、複数の文化や自然を一度に楽しめるとして、省境をまたぐ旅行の人気も高まっています。Ctripの調査では、こうした旅行の予約件数が前年比45%増となっており、とくに省の境界に位置する都市での宿泊予約が大きく伸びていることから、新たな旅行先としての注目が集まっています。
さらに、新疆、チベット、内モンゴルなど、自然豊かで遠方に位置する地域への関心も高まっているとCtripは伝えています。これらの地域ではホテルの検索数が前年比60%を超えており、大都市に暮らす旅行者を中心に、「癒し」や「感情的な充足感」を重視する旅のスタイルが広がっています。従来のような“記念撮影中心の旅行”から、自然の風景や地域文化を深く体感する“没入型の旅行”へと、旅行スタイルは確実に変化しつつあります。
海外旅行、東南アジアから新興長距離先へと関心が拡大
2025年の国慶節では、中国人の海外旅行需要も大きく回復・拡大しています。
旅行先としては、引き続き韓国や東南アジアなど近距離圏が主流であり、特に韓国は国慶節を前に団体旅行者への短期ビザ免除を実施したことで、検索数が大幅に伸びています。
一方で、長距離団体旅行の「質」も重視されるようになっています。単なる観光にとどまらず、文化体験や没入型のツアーを求める傾向が強まっています。特に注目されているのが、モロッコ、セルビア、カザフスタンなど、これまで中国人旅行者にとってはマイナーだった国々です。いずれも中国人に対するビザ免除を導入済みで、利便性が向上したことで人気が急上昇しています。
たとえばカザフスタンでは、レンタカー予約が前年の10倍に達したとの報告もあり(Ctrip調査)、「海外ドライブ旅行」への関心も広がっています。ロシアも例外ではなく、国慶節期間中の予約数は前年比75%増となっており、「一帯一路」関連国やユーラシア大陸の新興渡航先への注目が高まっていることがうかがえます。
国慶節の訪日旅行、日本への関心は引き続き高水準に
2025年の国慶節においても、日本は中国人旅行者にとって最も人気の高い海外旅行先となっており、大都市・地方都市のいずれにも関心が広がっています。また旅行者の行動・関心にも新しい傾向が見られることが示されています。
日本は「検索人気No.1」を維持、地方都市への関心も拡大
旅行予約サイトAirbnbが発表した「2025年国慶節海外旅行トレンドレポート」によれば、国慶節期間中の海外旅行検索ランキングで日本は2年連続で1位を獲得。検索熱度は前年比で約2倍に達しており、中国人旅行者の訪日意欲が引き続き高水準にあることがわかります。Agodaの調査でも、同期間中における最も検索された旅行先として日本が1位となっており、特に大阪は前年比+101%と最も注目を集めた都市となりました。
こうした動向は、大都市人気の継続を示す一方で、地方都市への関心の拡大も明らかです。Airbnbによると、福岡は検索数が前年の3倍超、伊豆半島も2倍超の伸びを記録しており、食文化や自然・温泉体験を目的とした“没入型”の旅行スタイルへのニーズが広がっています。
また、25〜29歳を中心とした若年層では、趣味や興味を出発点とした“興味ドリブン”な旅行スタイルが顕著で、都市観光と地域体験を組み合わせる傾向が強まっています。こうした層は旅行前後にSNS(小紅書や抖音など)を活用して情報収集・発信を行うことが多く、写真や動画で映える体験を求める傾向も見逃せません。
趣味や嗜好に応じた多様な旅行スタイルが加速
インタセクト・コミュニケーションズが2025年8月に実施した2025年 国慶節期間の日本旅行に関する調査(WeChat経由、有効回答数6165人)によると、海外旅行を予定している回答者のうち、日本を選んだ人は22.6%で最も多く、春節に続いて人気トップを維持しています。
訪問予定の地域としては、東京(56.0%)と北海道(55.7%)がほぼ同率で最多でした。東京ではショッピングやアニメ・漫画文化を中心とした都市観光、北海道では自然景観と海鮮グルメへの期待が理由として挙げられています。また、大阪(32.4%)ではUSJや関西万博(閉幕直前)の影響、京都(21.1%)では歴史や文化体験への関心が高まっています。
旅行の主な目的は、グルメ(64.9%)、ショッピング(48.9%)、アニメ・映画のロケ地巡り(42.9%)が上位を占めており、趣味や嗜好に紐づいた訪日旅行が主流となっていることがうかがえます。
旅行予算と消費スタイルに変化、低価格化・実用志向に
旅行予算については、最も多かったのが10,001〜20,000元(約21万〜42万円)で、38.7%を占めました。一方で、春節期と比較すると20,001元以上の高額層は減少し、5,000元以下の低価格帯がやや増加傾向にあります。これは円安効果の飽和に加え、実用性重視の消費志向が強まっていることを反映しています。
購入予定商品では、「自分用」として化粧品(51.4%)と食品(45.0%)が人気であり、「お土産用」では食品(48.3%)、化粧品(36.6%)、菓子類(33.2%)、伝統工芸品などが挙げられています。
また、訪日前後のSNS活用も常態化しており、SNSで「共有されやすい体験」や「写真映えする商品パッケージ」が購買や訪問先の選定に大きな影響を与えています。今後は、こうしたSNS起点の行動を意識したプロモーション設計が、地方都市への誘客やリピーター獲得の鍵となるでしょう。
国慶節に関するよくある質問
国慶節に関するよくある質問について、以下でお答えします。
国慶節と春節の違いは?
国慶節と春節は、どちらも中国の大型連休ですが、その意味合いや過ごし方は大きく異なります。
国慶節は10月1日の建国記念日で、新中国成立を祝う国家的な祝日です。例年7日間前後の連休が設定され、観光や旅行、帰省の時期としても知られています。
一方、春節は「旧正月」のことで、中国で最も重要な伝統行事です。旧暦のため日付は毎年変動しますが、通常は1月下旬から2月中旬頃になります。日本の年末年始のように、多くの人が一斉に故郷へ帰省して家族と新年を祝います。
中国の国慶節は日本でいうと?
中国の国慶節は、日本でいう建国記念の日にあたる祝日です。日本の建国記念の日は1日だけの祝日ですが、中国の国慶節は1週間前後の連休が設けられるのが特徴です。また、国慶節に重なる中秋節などの伝統行事もあり、家族や友人と過ごす時間が多くなることから、日本のゴールデンウィークに近い休日でもあります。
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