インバウンドコラム
2026年の春節は過去最長の9連休となり、中国人旅行者の動きに大きな変化が見られます。
人気の旅行先や注目される旅行スタイル、訪日旅行への影響など、春節に関連する最新トレンドをわかりやすく解説します。
春節とは?旅行・消費が活発化する大型連休の基本情報
旧暦の新年を祝う春節は、中国をはじめとした中華圏などでは、年間で最も重要な祝祭期間です。企業や学校が長期休暇に入り、多くの人が故郷へ帰省します。この時期は家族と過ごす伝統が色濃く残る一方で、旅行や買い物といった消費行動も活発になるため、国内外の観光業界にとって非常に大きな商機となっています。
春節はいわゆる「旧正月」のことですが、中国や台湾では「春節」という名称が主に使われ、英語では「Chinese New Year」や「Lunar New Year」と呼ばれています。現在の中国では新暦の1月1日も休日となりますが、伝統的な行事としての重みや盛り上がりは、やはり春節が圧倒的です。
春節を祝う国・地域とその過ごし方
中国の春節では、赤い飾りや爆竹、提灯、対聯(縁起の良い言葉を記した赤い紙の対句)が街を鮮やかに彩ります。家族との団らんや祖先への祈りに加え、食べ物としては、餃子や年糕(もち米の蒸し菓子)を囲む風習が根付いており、年間を通じて帰省客や旅行者が最も増える時期でもあります。
春節を祝う国や地域は中国以外にも多く、韓国、台湾、香港、ベトナム、マレーシア、シンガポールなどが挙げられます。
いずれも「家族で過ごし、新年の幸福を願う」という点は共通していますが、習慣や過ごし方にはそれぞれの文化に根ざした特色があります。
たとえば、韓国では「ソルラル」と呼ばれ、先祖を供養する儀式や伝統料理、韓服を着た家族行事が中心です。ベトナムの「テト」では、桃の花や赤・金の飾りで街が彩られ、バインチュンなどの正月料理が並びます。台湾では寺院参拝や天灯上げ、香港では花火やパレードが有名です。シンガポールやマレーシアでも中華系住民を中心に、伝統と現代が融合したにぎやかな祝賀ムードが広がります。
2026年春節はいつ?日程分散・旅行前倒しが顕著に
2026年の春節(旧正月)は2月17日(火)で、この日を中心に2月15日(日)から23日(月)までの9連休が設定されています。これは春節休暇としては過去最長の記録とされています。
連休前日の2月14日(土)や、振替出勤となる2月28日(土)は平日扱いとなりますが、実際の旅行や消費行動はその前後にも広がる可能性があります。
中国人旅行者の動きがこれまで以上に活発化している中、海外旅行市場も、8連休だった2025年の春節を上回る勢いです。特に今年は、「連休を延長する」「旅行を分割する」「前倒しで出発する」など、旅行日程の多様化が顕著です。中国最大級のOTAであるQunar.com(チューナー)によると、2月9日出発分から海外行き航空券の予約数が急増し、休暇前日の2月14日出発分で春節前の予約ピークを迎えたと報告されています。
航空・鉄道・自家用車利用予測で見る、2026年春節の中国人旅行者の移動動向
2026年の春節に伴う「春運(特別輸送体制)」では、中国全土で過去最大規模の人の移動が見込まれています。2月3日から3月13日までの40日間、鉄道・航空・自家用車などあらゆる交通機関がフル稼働し、国内外の旅行需要を支えます。
航空
中国民用航空局(CAAC)によると、春運期間中の航空旅客数は9500万人、1日平均238万人と過去最高を更新する見込みです。平均運航便数は1万9400便(前年比5%増)と発表されています。
航空各社も国際線の供給を強化。中国東方航空は春節にあわせて2800便超を新設・増便し、上海〜フーコック、西安〜ソウル、合肥〜クアラルンプールなど人気路線を拡充。太原〜バンコク、成都〜プーケット線などの休止路線も再開し、回復基調が加速しています。
鉄道
鉄道分野でも大規模な動きが見られます。中国国家鉄路集団は、春運期間中の旅客数が5億3900万人(前年比5%増)に達すると予測。特に春節直前の2月13日、春節終了後の2月23日がピークとなる見通しです。
自家用車
自家用車による移動は引き続き主流ですが、レンタカーやセルフドライブ旅行の需要も拡大しています。中国最大級の海外・国内向けオンラインレンタカー予約プラットフォームZuzuche(ツーツーチョー)のデータによると、出発は2月7日からと前倒しで始まり、11日、13日、15日に分散してピークを形成。返却は2月22日に集中し、「旅を長く楽しんで一気に戻る」スタイルが目立っているといいます。
また、トルコのビザ免除政策を受け、同国へのセルフドライブ旅行の予約は80%超の増加。自由度の高い移動スタイルが国境を越えて広がりつつあります。
中国からの訪日旅行が減少へ 春節シーズンに影響する日中関係の最新動向
例年、春節は訪日観光のピークですが、2026年は様相が異なります。中国政府が日本への渡航自粛を再び呼びかけており、訪日需要の大幅な減少が見込まれています。
背景には、台湾有事をめぐる日本の国会答弁に対する中国側の強硬姿勢があります。実際、2025年12月の訪日中国人客数は前年同月比で約45%減の33万400人。26年1月26日には春節を前に、中国外務省が「治安の不安」や「中国人を狙った犯罪の多発」などを理由に、再度の自粛を発表しました。
航空便にも影響が出ており、航空データプラットフォームFlight Managerによると、春節期間中の日本路線予約は前年比43.7%減。中国国際航空は1月26日から3月28日まで北京〜成田線を全便運休し、北京〜羽田線も一部欠航を決めています。
こうした政治的・外交的要因で、2026年の春節における訪日旅行者数やインバウンド消費には、影響が及ぶと見られます。
中国人旅行者の人気渡航先はどこ?2026年春節の国内・海外トレンドを読み解く
今年の春節は日本に代わって、新たな渡航先が台頭しています。
目的地の選択傾向としては、手軽な近距離派と深い体験を求める長距離派が共存していることです。また、国内では「寒さを避ける南下旅行」と「雪景色を楽しむ北上旅行」が2大トレンドとなっています。
海外旅行 東南アジアが安定人気、長距離移動の需要も急増
海外では、東南アジアの人気が依然として高く、Qunar.comやFlight Managerによると、タイ、韓国、マレーシア、シンガポール、ベトナム、インドネシア、香港、マカオなどがホテル・航空予約で上位を占めています。中でもタイの人気が高く、北京発バンコク行きの予約は前月比144%増と大きく伸びました。
一方で、連休の長期化により長距離旅行も拡大しています。アリババグループ運営、中国最大級のOTA・Fliggy(フリギー)によると、春節期の海外渡航先トップ20のうち、60%以上を飛行時間8時間以上の遠距離地が占めています。
特にトルコ、ロシア、ニュージーランド、オーストラリアでは、予約数が前年比2倍以上の伸びを記録しました。背景には、ビザ免除政策によるロシアやトルコへの渡航しやすさに加え、オセアニアでの「夏旅」、またノルウェーやロシア(ムルマンスク)での「オーロラ観賞」といった目的別ツアーの人気があります。中国大手旅行会社の春秋国際旅行社によれば、ムルマンスクのツアーは春節前にほぼ完売しました。
国内旅行 南エリアと北エリアが二大トレンドに
国内では、春節9連休を活かした移動が活発になっています。Fliggyによれば、高級ホテルの予約は前年比70%増で、南の温暖地と北の雪景色を楽しめるエリアがそれぞれ高い人気を集めています。
海南、雲南、広西、福建など温暖な南部都市では予約が倍増。新疆、青海、甘粛、内モンゴルなど北方の雪景色エリアでは、前年比2倍以上の伸びが見られました。
中国OTA・Ctripのデータでは、旅行先トップ10すべてが南部都市。若年層やファミリー層を中心に、温暖なエリアでの「ご褒美旅行」や「のんびり滞在型」の傾向が強まっています。
旅行スタイルにも変化 体験重視・高付加価値・家族旅行が春節の主流に
Fliggyの「2026年春節旅行動向」レポートによれば、国内旅行商品の傾向にも変化が見られます。文化公演や無形文化遺産の体験、ご当地グルメを組み合わせた複合型ツアーが、子連れ家族を中心に人気を集めています。テーマパークホテルの予約は前年比94%増、工芸品鑑賞を含むツアーも40%以上増加しました。
海外旅行では、飲食・宿泊・アクティビティがセットになったオールインクルーシブ型パッケージツアーの予約が前年比57%増と、高付加価値旅行への関心が高まっています。
旅行者の中心はファミリー層で、Ctripの「2026年午年春節観光市場予測」によると、国内ファミリー旅行予約が全体の半数以上を占めています。
年齢層によって行き先の傾向も異なります。12歳以下の子どもがいる家庭では、シンガポールやバンコク、三亜、昆明など温暖なリゾート地が人気。一方、中高生のいる家庭では、ソウルやオークランド、上海、香港などでの「学びを兼ねたシティーウォーク」が注目されています。
世代別では、1980年代生まれが長期休暇を積極的に活用し、2月24〜28日の旅行予約の48%を占めました。1990年代生まれは混雑を避け、比較的安価な日程を選ぶ傾向があり、上海や北京などの都市観光が人気です。
旅行の多様化も進んでおり、Ctripによると「ペットとの旅行」や「漢服での写真撮影」が春節の新トレンドになっています。ペット関連の問い合わせは前年比ほぼ2倍。漢服撮影は21%増と、「美しい景色+文化的」スポットへの関心が高まっています。
過去最長の春節休暇となる2026年は、旅行先・スタイルともに多様化が進み、中国人旅行市場の変化を捉える重要なタイミングとなりそうです。
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