インバウンドコラム

準重点市場のインバウンド施策の傾向は? 入札情報から読み解くインバウンド業界

2019.06.10

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やまとごころが提供する「インバウンド入札情報サービス」では、専属のリサーチャーが全国約1,000件もの発注元機関の入札情報を、日々リサーチしています。公示内容を確認した上で、「インバウンド関連」と判断した入札情報をくまなくピックアップ。その中から厳選した情報をお届けし、国や全国の自治体、公共団体などが実施するインバウンド施策のトレンドや強化対象市場などをわかりやすくお伝えしています。このコラムでは、こうした入札情報からみえてくるインバウンドビジネスの最新トレンドや傾向をお届けします。

やまとごころの「インバウンド入札情報サービス」では、国別、都道府県別、案件数業務種別、予算額業務種別など、必要に応じて入札情報を選別してみることができます。

第5回目となる今回は、2017年4月〜2019年3月までの2年分のデータをもとに、今年度新たに選定された準重点市場の入札案件の傾向をみていきます。


JNTOが定める準重点市場ターゲットの入札傾向は?

日本政府観光局(JNTO)及び観光庁はこれまで、重点20市場において市場別訪日プロモーション事業等を行ってきました。さらに今年度より、訪日インバウンドの成長が見込まれるオランダ、スイス、メキシコ、ニュージーランドの4市場及び中東地域を、重点市場化に向けた市場調査や試行的なプロモーション等を実施する地域「準重点市場」と定め、これらの市場・地域における取り組みを大幅に拡充するという方針を発表しています。

オランダ、スイス、メキシコ、ニュージーランドからの訪日外国人旅行者数は、いずれも2018年に過去最高を記録しています。富裕層誘客の潜在力が高い中東地域とともに、これらの地域へのプロモーションを強化し、インバウンドの更なる拡大が図られるものと思われます。そこで今回、過去2年で準市場をターゲットとした案件がどれだけ出ていたのかを分析してみました。


準重点市場別の公示案件の傾向は?

準重点市場5カ所ごとのインバウンド入札案件数を2017年度、2018年度に分けてみてみます。オランダ、スイス、メキシコの3市場では、まだこの2年間では目立った件数が公示されていないことがわかります。

その一方、ニュージーランドや中東市場は、2017年度と2018年度を比較すると、目立って案件数が増加してきていることがわかります。例えばニュージーランドは、今年9月に開催されるラグビーワールドカップ2019では強豪国として知られ、多くのラグビーファンが押し寄せることが予想されています。予選トーナメントとなるプール戦では、横浜、大分、東京、豊田でニュージーランド戦が行われますが、ほぼ100%がラグビーワールドカップを契機とした案件となっています。さらに中東では、主にアラブ首長国連邦などをターゲットとした案件を中心に、まだまだ数は少ないですが案件数が伸びています。 

 

準市場-年度別案件数

 

中東市場ターゲットの公示はまだまだ限定的だが特徴も

ここで、中東市場のインバウンド案件数を発注元別に、2017年度、2018年度ごとにみてみます。JNTOは昨年度から中東市場をターゲットとした案件を公示しています。この2年間では、旅行博出展、現地プロモーション、ファムツアー実施やセミナー開催といった案件が出ていますが、2019年度は、準重点市場選定に伴い、さらに案件数が増えることも予想されます。

なお、これらの発注元で特徴的なのは、中部運輸局の3つの案件です。中部運輸局では、全てイスラエルや北米市場のユダヤ人をターゲットとした「杉原千畝ルート」の促進事業に関する案件となっています。杉原千畝は、独断で「命のビザ」を発給しユダヤ人脱出を助け、多くの命を救ったことでユダヤ人にも広く知られています。そのため、ゆかりの地である岐阜県八百津町にある「杉原千畝記念館」を訪れるイスラエル人が増えていると言われています。

 

中東市場-年度別×発注元別案件数


富裕層市場には馴染みのない宗派もたくさん。迎え入れる側にも準備が必要

中東市場は、一般的に訪日旅行者の消費額が非常に大きいと言われています。また、中東市場に限らず、富裕層をターゲットとした公示案件も全体的に年々増加の傾向となっています。しかし、ひとくくりに中東と言っても、アラブを中心とした「イスラム教徒」が多い国、イスラエルなどの「ユダヤ教徒」が多い国がありますし、さらにその中でも、戒律が厳格な宗派や、日常生活の規制や制限を嫌う開放的な世俗派まで、その信仰の度合いはさまざまです。

今後、中東ターゲットの市場はご紹介のとおり少しずつ拡大していくと予想されますが、中東市場を迎え入れる側が、相応の知識を必要とするケースが多くなるのではないでしょうか。

 

[集計概要]
期間:2017年4月〜2019年3月
対象:官公庁、地方自治体、観光協会、コンベンションビューローなど全国約1,000カ所の関連機関が公示したインバウンド入札情報から集計。ただし、国別入札案件情報に日本政府観光局、官公庁、地方運輸局のデータは含まれていません。
※インバウンド入札情報とは、海外への情報発信、展示会出展、メディア招聘、コンサル調査、多言語整備、インフラ環境、教育研修など、外国⼈の訪日促進につながる領域での施策と定義しています。
※同一案件で、複数市場を対象とする場合は複数カウントして集計しています。

 

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