インバウンドコラム

データをもとに徹底予測、2022年度の観光・インバウンド入札案件の傾向は?

2022.06.17

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6月10日から外国人観光客の受け入れが始まり、インバウンド再開の気運が徐々に高まってきた。コロナ禍で国境を越えた移動が制限されたこの2年間、行政や自治体では国内需要に着目した事業への転換や、インバウンドに関しては中長期を見据えた事業へのシフトが見られた。インバウンド再開という明るいニュースが飛び込んだものの、長引くコロナの影響やウクライナ侵攻に伴う資源価格高騰など引き続き世界情勢は不安定な状況が続くことが予想される。こうした状況下で、観光・インバウンドに対する捉え方はどう変化していくのか。2019年度から2021年度までに発表された行政、各自治体の観光・インバウンドの入札案件*から、2022年の動きを予測する。

 

2019~2021年度入札案件の傾向から読み解く

入札ピークが年に2回、公示発表時期が、1-2月へ前倒しに

下記の2019年度から2021年度までの月別インバウンド入札案件数のグラフを見ると、例年4月、5月に集中していた入札が、2021年度の特徴としては、下半期、中でもとくに1月から3月にかけての 案件数がコロナ前の2019年と比べても多かった。2022年度の案件が、例年より早く2月頃から前倒しで多く公示されたことも、大きく影響している。この流れを見ると、いわゆる入札のピークといわれる4~6月に向けて備えるのはもちろん、新年度のスタートアップに向け1~3月から応札の準備が大切だ。

 

渡航制限厳しい東アジア市場向けの案件、大幅増加

ターゲット市場別では、2021年度は東アジアで案件数が大幅に増えた。インバウンドの戻りは近隣国からとの予想に即した形だが、東アジアではまだ渡航制限が厳しい国もあるのが実状だ。一方、欧米豪市場での案件数は、全体的に、コロナ禍前に迫る、もしくはそれ以上に増えている。

2020年度から2021年度にかけて、案件数は3,306件から4,186件と36%増加した。案件種類別に見て比率が最も増加したのは「インフラ・施設整備」に関わるもので180%の増加。「イベント企画・運営」は110%増、「商品造成」と「調査・コンサル」はいずれも45%増加した。

観光、インバウンドの入札案件に占めるインバウンドの割合は?

今回の分析に利用しているデータでは、インバウンドを対象とした入札案件のほか、国内市場のみをターゲットとする観光案件(2022年1月~3月)も集計している。この3カ月間のすべての観光案件のうち、ターゲットが国内向けの割合は約3割。インバウンド向けが約1割で、あとの約6割は指定なし。つまり、インバウンドに関連して提案可能な案件は全体の約7割となる。

 

コロナ禍の「観光トレンド」から探る案件の傾向

ここ数年、観光のトレンドとして関心を向けられるのが「サステナブルツーリズム」だ。その傾向を反映し、案件名にもこのワードが登場する。また、サステナブルと並びトレンドに挙げられる「アドベンチャーツーリズム」も同様だ。どちらも主に「調査・コンサル」や「商品造成」に関わる案件で、発注元の約半数が運輸局からであった。

「環境、社会、経済という3つの観点で持続可能な観光」は、各地域が今後ますます力を入れて取り組むことになろう。実現には、リピーター獲得といった顧客の囲い込みと客単価の引き上げなどの高付加価値化といった新戦略が必要だ。また、持続可能な観光地づくりを手がけるだけでなく、観光地として選ばれるための「情報の見える化」も重要性が高まっている。

さらには、「新技術」の活用、地域を支える「人材の育成」も各地域が力を入れたい取り組みで、今述べたポイントは、仕様書の目的や主旨でもたびたび言及される。つまり、観光トレンドをつかんでおくことは、仕様書を読み解くうえで重要だ。裏を返せば、公示案件の仕様書等に目を通すことで、国や各自治体の最新の動き、ビジョンや方針を把握できるということだ。

 

2022年度の公示案件の傾向からひも解く

2022年度の自治体案件から見える4つのキーワード

ここからは2021年度と、2022年3月までにリサーチした2022年度の公示案件について、具体例も添えて紹介していく。上述の観光トレンドと掛け合わせながら、今年度の動きの参考にしてほしい。

〈海外への販路拡大・プロモーション業務〉
2021年度に福井県から公示された「海外における食の営業代行(東南アジア)業務」は、食品の輸出に関心はあるが、人やノウハウが十分でない県内事業者に代わって、海外へ販路を拡大することを目的とした事業だ。商品を通じ日本ファンを海外につくることで、将来的なインバウンド誘客にも繋がる、という図式を心得ておきたい。

〈観光DXに関する業務〉
観光庁では、最先端のデジタル技術の活用で観光をより良いものへと変革させる「観光DX」を観光需要の回復推進に急務と位置づける。目指すところは、DXによる観光産業における消費機会の拡大や消費単価の向上だ。

長崎国際観光コンベンション協会からの業務は、「DXに対応したワンストップによる観光マーケティングの仕組みの構築と運用(国内向け)」と案件名にDXを冠す。内容はデジタル技術を活かした一元的な情報の収集・発信、予約等ができるプラットフォームの構築と運用管理だ。このように、案件名にDXをうたうものはまだ多くないものの、「観光DX」に関連した案件は今後ますます増えると予想される。

〈ニューツーリズムに関する業務〉
マスツーリズムからニューツーリズム(テーマ別観光)への流れが加速する中、サステナブルツーリズムの延長線上に位置する、自然を楽しむタイプのニューツーリズムは国内外でとくに人気が高まっている。

一例として、鹿児島県からの「令和3年度奄美群島サイクルツーリズム構築事業」では、奄美群島でのサイクルツーリズム構築に向けた協議会の設置、モデルコースの設定等をおもな業務とする。モデルコースを設定することで、滞在型観光を推進し、奄美群島への観光・交流人口や観光消費額の拡大を目的としている。

このように各地域の特性や文化的背景を前面に出したニューツーリズムは、これから種々登場しそうである。傾向としては、今紹介した「サイクルツーリズム」は市町村単位から、また、「アドベンチャーツーリズム」は運輸局ブロック単位からの公示が多い。また、特定の県で力を入れている「ゴルフツーリズム」、「ガストロノミーツーリズム」や「エコツーリズム」など、種類は多岐にわたる。

〈滞在時間の延長、関係人口の創出を目的とする「ワーケーション」推進業務〉
「奄美群島サイクルツーリズム構築事業」の目的のひとつに、滞在型観光の推進が掲げられていたが、滞在時間の延長を目的とする意味で、「ワーケーション」に関連した案件も近年増えている。富山県からは2022年度の事業で、「とやまでワーケーション推進業務」が公示された。ワーケーションを通じて富山の文化や魅力を体験することで、今後も関わりを持ち続ける関係人口の創出につなげることを目的とした事業だ。

 

入札案件の応札率を上げるための秘訣とは?

観光・インバウンド関連の行政案件はコロナ禍でも途切れることなく公示されてきた。 インバウンド再開の本格化が期待される中、新しい発想、企画を求め、新たな事業者との事業実施を求めている自治体の声も聞かれる。応札に参加するにあたって、公示元のビジョン・方針を読み解くことはとても重要だ。各案件の仕様書の冒頭にまとまっていることも多いので、まずはそこを読み解くことから始めるのも良いだろう。また、自社の「強み」と「弱み」を把握し、受託確率を上げるため連携先を模索するといった準備を日常的に整えることも忘れてはならない。今後も日々公示される観光・インバウンド案件情報に注目し、チャンスを見逃さないでほしい。

*今回の分析に利用したデータは、観光・インバウンドに特化した入札情報サービス「観光・インバウンド入札navi」。 このサービスは、官公庁、全国47都道府県の自治体、観光団体等の関連機関1660件(6月2日時点)から、観光・インバウンドに精通した専門チームが各案件の仕様書、募集要項を目視で確認し、入札情報を収集している。今回は、2019年4月1日~2022年3月31日にリサーチしたデータを基に分析した。

 

観光・インバウンド入札naviとは?
上記はやまとごころが運営する入札情報サービス「観光・インバウンド入札navi」のデータを基にしています。
当サービスは2017年からインバウンドに特化した入札情報の提供をスタートし、 2022年4月からは国内(日本人)向けの観光事業の情報を加え、観光全般の入札情報に提供範囲を拡大しました。年間100万件以上公示される入札案件の中から、キーワード検索や自動検出では難しい観光分野を、専門リサーチャーが仕様書や募集要項の詳細まで確認し、該当する案件のみをピックアップしています。
最新の入札情報が気になる方が下記よりご確認ください。

 

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