データインバウンド
2019年の国際観光トレンド UNWTOが発表、伸び率鈍化も世界旅行者数は14.6億人。国際収入で日本は世界7位
2021.02.09
刈部 けい子国連世界観光機関(UNWTO)が毎年発表している前年の国際ツーリズムの傾向を解説するツーリズムハイライツ。本来であれば昨年秋に発表されていたはずの2020年版が2021年に入って発表された。さっそく見ていこう。
2019年の国際観光変化のポイント
・2019年の海外旅行者数(国際観光客到着数)は、前年より4%増の14億6000万人だった。伸び率4%は2017年(7%増)や2018年(6%増)と比べると鈍化したが、この2年間はUNWTOがもともと予想していた4%を大きく上回る並外れた時期であったためで、2019年も健全な伸びを示したといえるだろう。
・さまざまな地域から他地域の先進国への旅行に対する需要がやや減った。
・2019年の国際観光収入も前年比3%増の1兆4810億米ドルだった。2018年と比較すると増加率が1ポイント減ったが、ブレクジットに伴う不確実な要素や地政学的および貿易の緊張、さらには世界経済の減速が成長を鈍らせたといえる。
・古参の旅行会社トーマスクックや欧州の格安航空会社が複数破産するなど、観光分野で大きな変化もあった。
・入国者数ではどの地域も前年を上回ったが、特に中東(8%増)や、アジア・太平洋と欧州が共に4%増と好調だった。
・世界経済の減速はあったものの、国際観光支出は引き続き増加し、特に世界のトップ10ではそれが顕著で、フランスは11%という最大の増加率を示した。一方で増加額ではアメリカが80億ドルで最大だった。
入国者数シェアでは欧州が5割超
前述のように、入国者数の増加率は中東が8%で最も多く、ついでヨーロッパとアジア・太平洋が4%で世界平均と同じだった。
入国者数の地域別シェアはグラフにあるように、ヨーロッパ51%、アジア・太平洋25%、北中南米15%、アフリカ5%、中東4%だった。
観光収入の増加率もまた中東が8%で、世界平均(前年比3%)を大きく上回る伸びを示し、ヨーロッパ(同4%)がそれに続いた。アジア・太平洋とアフリカは共に1%増で、北中南米は0.1%減少だった。
観光収入のシェアは多い順に、ヨーロッパ39%、アジア・太平洋30%、北中南米23%、中東5%、アフリカ3%だった。なお、地域別の入国者数と観光収入の割合はどちらも2018年と変化がなかった。
入国者数と観光収入のトップ10のうち7カ国は両方にランクイン
それでは、入国者数と観光収入のトップ10を見てみよう。
入国者数ではトップ10の顔ぶれは前年と変わらなかったが、順位では前年9位のタイが1ランクアップで8位に入り、ドイツと入れ替わった。伸び率で見ると、過去2年間20%台を記録しているトルコがここでも前年比12%という大きな伸びを見せている。
日本は2年連続11位で、アジアでは中国、タイに次ぐ3位だった。日本の伸び率2.2%の3200万人に対し、タイは4%の伸び率で4000万人となった。アジアのディスティネーションとして日本の最大のライバルといわれるタイとの差は前年と比較して100万人増の約800万人に広がった。
観光収入で日本は7位に浮上
観光収入のトップ10の顔ぶれは前年と変わらないが、日本が2ランクアップの7位に浮上した。これら上位10カ国で全体の観光収入の約50%を占める。
海外旅行での消費額を表す観光支出では、前年比マイナス4%ながら、中国が不動の1位で、日本はトップ10圏外の16位だった。
なお、旅行スタイルでは、「レジャー」目的が中東以外の地域でトップを占め、世界平均では55%だった。世界平均28%で2位の「友人や親戚等訪問、健康、宗教」目的は、中東では最も多い旅行目的となったのも興味深い。
世界経済に大きな影響を与える観光業
UNWTOによれば、2010年から2019年までの10年間で、観光業は拡大を続けると同時に多様化を経験し、世界でも成長速度の著しい最大の経済部門の一つとなった。
観光業の成長が促進されたのは、比較的強力な世界経済、新興経済国における中産階級の増加と急速な都市化、手頃な価格の旅行やビザ発給の簡易化、それに加えて技術の進歩や新しいビジネスモデルの登場などがあったからだ。
世界の多くの国・地域で、インバウンドとアウトバウンドを合わせた観光業は、GDPの中でも大きなインパクトを示す。新興国や地域では特にその割合が大きく、最大のマカオではGDPの48%を観光業が占めるという。また、世界最大の観光立国フランスでは、GDPの7%が観光業だ。
また、直接間接的な雇用を数多く生み出す観光業では、特に女性や若い世代の割合が多く、労働力の54%が女性というのも、他の産業(平均39%)と比較すると特徴といえる。
こうしたUNWTOの総括を読むと、今回のパンデミックが世界経済に与えた打撃の大きさが容易に想像できる。1年後に発表されるツーリズムハイライツ2021年版が残念な数字になるのは想像に難くないが、その頃には観光業が回復へ向けて順調に動いているように願いたい。
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