データインバウンド
サステナブル旅行指数ランキングで北欧圧倒、日本は世界53位
2021.03.25
世界最大の旅行博、ベルリン国際ツーリズム・マーケット展(ITB Berlin)は2021年3月9日から12日まで、完全オンラインで開催された。そこで、今回は旅行博で発表されたユーロモニターのサステナブル・トラベル・インデックス(持続可能な旅行指数)ランキングを紹介する。
世界的にますます重要性が高まるサステナブル・トラベル
新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大で、世界の旅行市場は大きな打撃を受けたが、この間にサステナブル・トラベルはさらに重要性を増した。というのも、消費者、企業、政府の間で、自分たちの利益だけでなく、人々と地球を優先する必要性に対する意識が高まっているからだ。当サイトでもサステナブルをキーワードにした多くの記事を展開してきた。代表村山が執筆したコラムなどを参照願いたい。
ユーロモニターによると、世界共通の認識としては、マイクロツーリズム(国内観光)は短期から中期の回復に役立つ可能性があるが、観光業を将来にわたって保証するための回復力と敏捷性を構築するには、根本的な変化が不可欠となっているという。国連の持続可能な開発目標(SDGs)を青写真に、観光業は気候変動への対応に協働しているが、サステナブルへの変革は、ポストコロナの時代にビジネスや社会が繁栄するための重要な要素だ。
7つの項目からなるサステナブル・トラベル・インデックス、欧州が上位を独占
ユーロモニター・インターナショナルが開発したサステナブル・トラベル・インデックスは、旅行先のデスティネーションと観光業がより持続可能で目的主導型の観光モデルへ移行するのを助けるためのもので、環境、社会、経済、リスク、さらに観光需要と交通、宿泊という7つの主要な項目の合計57の指標を用いて99の国と地域を分析し、ランキング形式で発表したもの。
▲7つの項目(左から、環境の持続性、社会の持続性、経済の安定性、カントリーリスク、持続可能な観光需要、交通、宿泊施設)
以下の表は世界のランキングトップ30を示しているが、1位はスウェーデンで、以下フィンランド、オーストリア、エストニア、ノルウェーと、今回のパンデミック以前からサステナブル・トラベルに注力してきた北欧を中心とした欧州各国が21位まで顔を揃える。
アジアでは51位のラオスが最上位で、日本はそれに続く53位、以下台湾(55位)、中国(56位)、ミャンマー(59位)、タイ(76位)、香港(77位)、韓国(78位)となっている。
2021年1月に行われたユーロモニターの消費者動向調査によると、世界の消費者の66.4%が日常生活で環境に役立つことをしたいと願っている。一方、観光業全体で見ると、持続可能性は新しい概念ではないにもかかわらず、2020年に何らかの形で持続可能性戦略を実施したのは55%にとどまった。半数は超えているが、消費財(CPG)業界の70%と比較すると少ない。
スウェーデンが1位の理由
それではここで、ランキング首位のスウェーデンの事例を見ていこう。フライトシェイム(飛び恥=気候変動への影響の大きさから、飛行機に乗ることを恥とし、鉄道など他の移動手段をすすめる新語)運動の発祥の地であり、環境活動家のグレタ・トゥーンベリ氏の出身地でもあるスウェーデンは、持続可能性が旅行体験を向上させることを証明しているとユーロモニターは解説する。観光から得られるより高いレベルの価値を生み出すことに焦点を合わせており、それが経済、環境、社会を助け、多くの項目での改善につながっているという。
スウェーデン政府は特に気候変動対策、北極圏の生物多様性の保全、脱炭素のサーキュラーエコノミー(循環経済)への移行に関して、SDGsの達成に不可欠な17の目標を確立した。持続可能な観光戦略に焦点を当てた政府は、中核都市における地域内観光の促進に取り組み、効率的な輸送インフラストラクチャと、航空機に代わる旅行形態の恩恵を受けている。また、受賞歴のある北欧のエコシックな建築とデザインは、持続可能な宿泊施設のロールモデルとして機能しているという。
2位のフィンランドについては、「アフターコロナの観光・インバウンドを考えるVol.8 世界一幸福な国フィンランドの観光戦略〜ライフスタイルで世界を惹きつける秘訣とは?〜」に詳しいので、参考にされたい。
日本は経済の持続性で評価上げる
最後に項目別のランキングに目を移すと、特に目立ったのが環境の持続性で1位となったモザンビークだ。全体のランクでは68位だが、天然資源の管理、エコロッジ建設による雇用の促進、その利益を食糧不足の家庭に還元するなどの活動が評価された。
日本は、イスラエル、イタリアとともに、経済の持続性で最も評価を上げた。新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言解除後、国内観光客が観光需要を支えた点が評価され、経済の持続性では20位となり、持続可能な旅行需要の項目でも評価を上げ、36位だった。
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