データインバウンド
2021年の国際観光客数パンデミック前の3割弱 4億1500万人。完全回復は2024年が濃厚 —UNWTO
2022.01.31
UNWTO(国連世界観光機関)の最新データによると、2021年の世界の旅行者数(国際観光客到着数)は前年の4億人から1500万人増加し、4%の好転となったことがわかった。しかし、総数は依然としてパンデミック前の2019年を72%下回り、2020年の73%減に次ぐ最悪の結果となった。国際観光は2021年下半期に緩やかに回復を見せ、第3・4四半期の旅行者数はパンデミック前の水準と比べて62%の減少。12月は65%の減少となったが、オミクロン株の感染拡大による影響の全容はわかっていない。
国際観光収入は2020年比34兆円増 旅行長期化で1人当たり消費は増
2021年の観光の経済的貢献(観光が世界のGDPに占める直接的な貢献)は2020年の1.6兆米ドル(182兆円)を上回る1.9兆米ドル(216兆円)と推定されるが、こちらも旅行者数と同様、パンデミック前の3.5兆米ドル(399兆円)を大きく下回る水準である。国際観光(旅行及び旅客輸送)による輸出収入は 2021年に7000億米ドルを超える可能性があり、2020年よりは若干改善したものの、2019年の1.7兆米ドルの半分に も満たない。
旅行者1人当たりの消費額は、2020年の1300米ドルから、2021年には1500米ドル(17万円)に達する見込みだ。支出が増えたのは、旅費に回す貯蓄の増加や滞在の長期化、交通機関や宿泊施設の値上げによると考えられる。パンデミック前の2019年比で観光支出の減少幅が比較的小さいとされるのが、フランス(37%減)とベルギー(28%減)。また、サウジアラビア(27%減)とカタール(2%減)も、2021年に良い結果を出した。
観光回復は地域でばらつき アジアは渡航規制で回復に遅れ
移動制限、ワクチン接種率、旅行への安心感が異なるため、世界の各地域の観光回復ペースは遅く、ばらつきがある。ヨーロッパとアメリカ大陸は、2021年に前年比19%増、17%増と最も良い結果となったが、依然としてパンデミック前の水準よりは62〜63%減となっている。
また、小規模地域ではカリブ海地域が最も好調で、2019年を37%下回ったものの、2020年を63%上回り、一部の観光地ではパンデミック前の水準に近づくか、それを上回った。南地中海ヨーロッパ(57%増)と中央アメリカ(54%増)も大幅な回復を遂げたが、それぞれ2019年比で54%減、56%減にとどまっている。北米(17%増)と中東欧(18%増)も2020年を上回った。
一方、アフリカでは2021年の入国者数が前年比12%増となったが、それでも2019年を74%下回っている。中東では、2020年比24%減、2019年比で79%減となった。アジア・太平洋地域では、多くの都市で不要不急の渡航が禁止されているため、2020年比で65%減、2019年比で94%減と依然として低い水準だ。
2022年は改善の見通し 2019年水準への回復は2024年との予測高く
UNWTOは2022年の旅行者数を、前年比30~78%の増加と予想。依然としてパンデミック前の水準を50%~63%下回ることになるが、明るい見通しだ。UNWTOの専門家委員会の調査では、回答者の61%が2022年の改善を予想している。リバウンドの可能性については、58%が2022年の主に第3四半期、42%が2023年にのみ起こり得ると指摘。
また、グラフにあるように、パンデミック前の水準への回復時期は、32%が2023年、63%が2024年と回答。2021年9月の調査で2024年の回復と予測したのは45%だったので、その時より18ポイント上昇し、より信憑性が増してきた。
国内観光はメジャーな観光地において引き続き回復を牽引。専門家は、国内観光と近距離旅行、アウトドアアクティビティや自然由来の商品、農村観光が2022年の主要旅行トレンドの一つになると予想している。
回復への鍵は渡航制限解除とワクチン接種率向上
UNWTOの旅行信頼感指数では、2022年1月~4月はやや低下気味だ。専門家は、効果的な観光回復にはワクチン接種の迅速かつ広範な展開、それに続く旅行制限の大幅解除、旅行プロトコル関係のより多くの調整と明確な情報提供が必要だと指摘している。2022年初頭の回復を妨げる要因は、オミクロン株の急増による渡航制限の再導入と、ワクチン接種の不均衡、さらにアジア・太平洋地域が引き続き国境を閉鎖していることが挙げられる。また、原油価格の高騰、インフレの増加、潜在的な金利の上昇、高い債務量、サプライチェーンの継続的な混乱など、厳しい世界経済が観光回復にさらなる圧力をかけるかもしれない。
しかし、欧米を中心に多くの市場で観光業の回復が進んでいることに加え、ワクチン接種の普及や旅行規制の大幅な緩和が行われることで、旅行への信頼感が回復し、2022年の国際観光の回復が加速する可能性もある。
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