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2022年世界幸福度ランキング フィンランド5年連続トップ、コロナ禍でのポジティブな変化とは

2022.04.25

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2022年で10回目となる国連の世界幸福度レポートとランキングがこのほど発表された。世界149の国・地域を対象にしたこの調査で、1位となったのは5年連続でフィンランドだった。

なお、このランキングは米調査会社ギャラップが全世界に対して行う世論調査をもとにしたもので、単年の結果がそのまま反映されるのではなく、過去3年間の平均値による。今回は2019年から2021年の結果をまとめて2022年版として発表された。2021年版の読者数は900万人を超えたとのことだ。

 

北欧5カ国がトップ10に入る、日本は54

以下はトップ60までのグラフだ。世界幸福度は以下の7つの指標をもとにしており、グラフの各色は以下を表している。

青=国民一人当たりのGDP
緑=社会支援(「困った時に助けてくれるものや信頼できる人がいるか」という問いへの回答)
黄緑=健康寿命
黄=人生選択の自由(「人生で何をするか選択の自由があるか」への回答)
赤=他者への寛容さ(「過去1カ月にいくら慈善団体に寄付したか」への回答のGDPに対する度合い)
オレンジ=汚職や腐敗の認知(「あなたの国やビジネスに汚職・腐敗が蔓延しているか」への回答)
紫=世界最低の国の平均値(1.83)と3年間の調査で出た各国の残余値を合計したもので、点数が大きいほどランキングが高くなっている。

世界幸福度ランキング2019-2021

出典:World Happiness Report
(なお、グラフのなかで*がついている国は、2020年、あるいは2021年の調査情報がないため、2019年の調査に基づいている。)

 

今年のランキングでは1位フィンランド、2位デンマーク、3位アイスランドと続き、8位までを欧州が占めた。順位の変動は多少あれど、トップ8の顔ぶれは前年と同じになった。

コロナ禍でも首位を守ったフィンランドについて、報告書では「困難な状況における社会支援が常に高い評価を得ている。それがこの1年間でも重要な役割を果たしたのだろう」と解説している。トップ10にはフィンランドを含めて福祉国家と呼ばれる北欧5カ国が入っている。

日本は2021年版の56位から2ランクアップの54位で、前年同様、国民一人あたりのGDPと健康寿命ではスコアを稼いだものの、他者への寛容さがほとんどなかった。アジアではほかに、台湾(26位)、シンガポール(27位)、カザフスタン(40位)、ウズベキスタン(53位)、韓国(59位)、フィリピン(60位)、タイ(61位)、キルギス(64位)、マレーシア(70位)、中国(72位)がランキングの上半分に入った。最下位は前年同様アフガニスタンだった。

 

この10年で幸福度に社会的関心が集まる

2012年の1回目からこの10年間で、「幸福」に対する社会的関心に変化があった。各国政府は幸福を公共政策における重要な目的と見なし、OECDの働きかけにより、現在はほぼすべての加盟国が毎年国民の幸福度を測定している。

1回目(この時は2008年〜2012年の5年間の調査結果による)と今回(2019年〜2021年)までの15年間で、7つの指標のうち、一人当たりの実質GDPについてはアジアでの伸びが最も速く、次にアフリカ、東欧、CIS*が伸びた。健康寿命はサハラ以南のアフリカで最も速く伸び、南アジアがそれに続いた。一方で、南アジアとサハラ以南のアフリカでは、問題が発生したときに頼りになる人がいることで測定される社会的支援は最も少なかった。

同様に、1回目と今回のあいだで、最もランクアップした10カ国を見ると、順番に、セルビア、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー、トーゴ、バーレーン、ラトビア、ベナン、ギニア、アルメニアとなっている。逆に最もランクを下げた10カ国は、レバノン、ベネズエラ、アフガニスタン、レソト、ジンバブエ、ヨルダン、ザンビア、インド、メキシコ、ボツワナだった。

人生における選択の自由についてはほとんどの地域で大きく成長した。当初最も低いレベルにあった東欧とCISが大幅に成長した。アジアでは南アジアの伸びが著しい。もともと高いレベルにあった西欧では成長が見られず、東欧が追いついた形となった。

汚職の認識という点では、ラテンアメリカ(東欧以外では最も高いレベル)と北米・オーストラリア/ニュージーランド(世界で最も低いレベル)をのぞくすべての地域で、2010年以降低下した。アジアの3つの地域(東、東南、南)はいずれも高いレベルだったがわずかに減少した。西欧では2012年と最近を比較すると最も減少している。

 

コロナ禍におけるポジティブな変化

コロナ禍が続くなかで、若者の生活満足度は下がり、60歳以上の生活満足度は上がっているものの、全体としてはほとんど変化がない。しかし、心配とストレスは、パンデミック前のレベルと比較して、2020年に8%、2021年に4%上昇した。

ポジティブな面で、パンデミックで見られた最も顕著な変化は、世界的に慈善活動が急増したことだ。世界のすべての地域で、慈善事業にお金を寄付する人、見知らぬ人を助ける人、ボランティア活動をする人の割合が大きく増えている。これら3つの指標を合わせた世界平均は、2021年にはパンデミック前と比較して25%上昇している。

 

東洋で重視されてきた「バランス」「調和」を幸福度の指標に活用

西洋文化に強く根ざしている幸福研究では、東洋で大事にされているバランスと調和についてはこれまで比較的軽視されてきた。ところが2020年のギャラップ調査では初めて、次のような体験について質問をしている。

・自分の人生はバランスが取れている
・自分の人生にやすらぎを感じる
・一日の大半を穏やかに過ごすことができる
・刺激的な人生よりも穏やかな人生を好む
・他人や自分への思いやりを大切にする

そしてその結果わかったのは、バランス、やすらぎ、穏やかさを体験した人は、満足度が最も高い欧米諸国に多く、貧しい国々ではあまり見られないこと。また、ほぼすべての国・地域で、大多数の人が刺激的な人生よりも穏やかな人生を望んでいることだ。ただし、東洋の方が他の地域と比べてその割合が特に高いということはなかった。また、実際の平穏度が低いアフリカをはじめとする貧しい国々では穏やかな人生を望む声がより大きかった。

バランスとやすらぎの両方が、世界のどの地域でも満足のいく人生に強く寄与している。コロナとの共生が進むなかで、誰もが少しずつでもバランスのとれたやすらぎのある人生を送れることを期待したい。

 

*Commonwealth of Independent States(独立国家共同体)の略称、ソビエト連邦崩壊時に構成していた15カ国のうちバルト三国を除く12カ国による国家連合体。

 

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