データインバウンド
2022年3月世界の航空需要 パンデミック前の6割まで回復、アジア太平洋は2割弱と大幅に遅れ
2022.05.20
IATA(国際航空運送協会)によると、2022年3月の世界の航空需要の伸びは国際線、国内線の双方で2021年3月よりも大幅に回復していることがわかった。
国際線・国内線を合算した総RPK(有償旅客が搭乗して飛行した総距離=revenue passenger kilometers:有償旅客数×輸送距離)は前年同月比76%増だった。2019年3月の水準からは41.3%減で、パンデミック以降もっとも2019年のレベルに近づいた。
ロシアのウクライナ侵攻の真っ只中でありながら、その影響は3月も限定的で、欧州内、あるいは欧州とアジアの路線も引き続き堅調だ。また中国でのオミクロン株による感染再拡大は、国内線に影響を及ぼしたものの、アジア太平洋全般への影響は少なかった。世界的に見てもオミクロン株の脅威は減少し、航空需要の回復は続いている。
国際線需要は欧州内で急回復、全地域でも改善は続く
国際線RPKは、世界平均で前年同月比285.3%増で、すべての地域で引き続き改善している。なお、世界平均の2019年同月比では51.9%減だった。
前年同月比でもっとも成績がよかったのは欧州で、425.4%増だった。2019年3月の水準と比べても36%減まで回復してきた。国際線におけるロシアのウクライナ侵攻の影響は、ロシアと紛争周辺国以外の欧州ではかなり限定的だ。欧州内、および欧州とアジアを結ぶ路線はそれぞれ前年同月比26%増、11%増となっている。特に欧州内のトラフィックはウクライナ侵攻にほとんど影響されず急速に回復しており、ウクライナ周辺国から国外へ避難する人々の動きも顕著だ。
アジア太平洋地域の3月の国際線RPKは、前年同月比197.1%増となり、中国でのオミクロン株による感染拡大の影響は最小限に留まった。重要な国際市場である日本などでは外国人の入国については依然厳しいままだが、韓国、ニュージーランド、シンガポール、タイなどでは渡航制限は大きく緩和される傾向にある。
中南米と北米では2月よりも伸び率はわずかに縮んだが、国際線RPKの前年同月比がそれぞれ239.9%増と227.8%増と改善した。中東は前年同月比245.8%増で、2019年のレベルの75%近くまで戻している。
アフリカ地域の3月の国際線RPKは、前年同月比91.8%増と伸びてはいるが、予防接種率が低く、インフレの影響もあり、他の地域と比べると回復は遅い。
国内線は中国を除いて堅調に推移
3月の国内線RPKの世界平均は、前年同月比11.7%増で、約60%増だった2月の伸びを大きく下回る結果となった。2019年同月比では23.2%減だった。これは中国市場が、マイナス成長に転じたためだ。中国ではオミクロン株による感染再拡大によるロックダウンや移動規制で航空旅行に影響が出ており、前月は前年同月比32.8%増だったのが、3月は59.1%減となっている。
日本では、オミクロン株の新規感染者や死者数が減少しており、それが旅行者の心理にも好影響を与えたのか、3月の国内線は前年同月比47%増と、2月よりも伸びた。3月にはまん延防止措置がすべて解除されたことから、今後の回復が期待できる。
アメリカとオーストラリアは2月よりも伸びが鈍化したが、アメリカでは人員不足による欠航なども原因として指摘されている。ブラジルとインドは共に、パンデミック前の水準の9割まで戻っている。なお、ロシアに関しては十分なデータが得られなかった。
IATA事務局長が「アジア太平洋地域の遅れ」を指摘
IATAのウィリー・ウォルシュ事務局長は、5月16日に行われたチャンギ航空サミットの基調講演で、アジア太平洋地域について次のように話した。
「過去2年間の大半は10%未満で推移していたアジア太平洋地域の国際線旅客需要だが、3月はパンデミック前の水準の17%に達した。ただし、世界的な傾向ではパンデミック前の60%まで回復しており、これをはるかに下回っている。この遅れは、政府の規制が原因だ。この規制が早く解除されれば、アジア太平洋地域の旅行・観光業界の回復と、それがもたらすあらゆる経済効果が期待できる」
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