データインバウンド

2023年国家ブランド指数、日本が初の首位を獲得。世界の旅行意欲は過去最高にーイプソス

2023.11.20

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世界的な市場調査会社イプソスが、2023年版の「アンホルト-イプソス国家ブランド指数(NBI)」を発表した。この調査は対象国の「文化」「国民性」「観光」「輸出」「ガバナンス」「移住・投資」という6つの指標における魅力度を指数化しランク付けしたもの。2023年は2019年の5位から着実に順位を上げてきた日本が首位を獲得した。それまで6年連続でトップだったドイツは2位に後退し、カナダが3位を維持した。
(図版出典:Anholt-Ipsos Nation Brands Index (NBI) 2023)

 

トップ10の顔ぶれは変わらず、順位に変動

15年以上にわたり、毎年実施されているこの調査は、パネル国の20カ国の18歳以上の成人6万人を対象にオンラインで行い、今回の調査は6月から8月にかけて実施された。なお、測定対象国は60カ国(2020年までは50カ国)となっている。

2023年の調査結果から、トップ10を総括すると以下のようになる。
・トップ10の顔ぶれは2022年と同じ
・日本がドイツを抜き、米国とドイツ以外で初めて首位を獲得
・イギリス、アメリカ、オーストラリアが順位を上げ、イタリア、フランス、スウェーデンが順位を下げた
・ドイツは2016年以来初めて2位に転落
・フランスは5位から8位に転落し、過去最低の順位

▶︎トップ10の推移 (黒=2022年、緑=2023年)

 国名は上より、日本、ドイツ、カナダ、イギリス、イタリア、アメリカ、スイス、フランス、オーストラリア、スウェーデン

 

日本は初のトップ、アジアの世紀の幕開け

2022年、ドイツは調査史上初の「6年連続1位」を記録したが、2023年は日本がドイツを退け、60カ国中1位となった。日本は2018年にそれまでの過去最高の2位となったが、翌2019年に5位に下がり、その後2020年に4位、2021年に3位、2022年に2位となり、今回初めてトップに立った。

日本は6つの指標で軒並み順位を上げ、すべてでトップ10入りを果たしている。評価が最も高いのは「輸出」指標で、科学技術への貢献、創造的な場所であること、製品の魅力という3つの属性すべてで1位を獲得した。また、「国民性」と「観光」の指標でも日本は高い評価を得ており、雇用のしやすさと都市の活気で高いランクを獲得している。

これを受け、NBIの創設者であるサイモン・アンホルトは次のように語っている。

「国の持つ国際的なイメージは、貿易、観光、投資、人材の誘致に大きな影響を与えるだけでなく、私たちの世界と私たちの未来を形作る地政学的な潮流を示すものでもある。ドイツとアメリカを除けば、日本はこのポジションに到達した最初の国であり、日本が今、地球上で最も称賛される国になっているという事実は、世界のソフトパワーのバランスが目の前で変化していることを裏付けている。我々は新しい秩序の時代に入った。今年の国家ブランド指数は、アジアの世紀が幕を開けたことを示す最初の紛れもないサインだ」

なお、今回の調査対象となった60カ国のうち、アジア太平洋の国、地域は、オーストラリア(9位)、中国(31位)、インド(38位)、日本(1位)、韓国(24位)、インドネシア(44位)、ニュージーランド(14位)、フィリピン(48位)、シンガポール(26位)、台湾(32位)、ベトナム(47位)の11カ国、地域となっている。

 

ドイツが2位に後退、カナダは3位をキープ、イギリスがトップ5に返り咲く

2016年以来初めて、ドイツは国家ブランド指数で2位に転落した。各指標内でのドイツの順位は比較的安定しているが、日本の順位がより良い方向に動いているため、ドイツが抜かれた形となった。しかし、2023年においてもドイツの評価は高い。スポーツの卓越性、製品の魅力、世界の貧困削減への貢献などが好意的に評価され、「輸出」「移住・投資」「ガバナンス」「文化」の各指標で5位以内にランクインしている。

カナダは2022年と同様3位でトップ3にランクイン。カナダに対する世界的な評価は引き続き高く、「国民性」「移住・投資」の各指標でも1位を維持している。

イギリスは2022年にNBI史上初めてトップ5から外れ、6位となったが、今年は4位にジャンプアップした。2023年と同様、「輸出」指数で4位、「移住・投資」指数で5位、「観光」指数で6位となっている。英国の「ガバナンス」に対する評価は改善しており、特に政府の能力と誠実さ、環境保護に対する評価が高い。

 

アメリカは回復を続け、フランスは下落を続ける

アメリカとフランスは2008年以来、国家ブランド指数トップ10入りを維持している。ただし、その順位は固定的なものではなく、両国とも長年にわたって順位が大きく変動している。

アメリカは2009年から2013年まで、そして2015年と2016年にも1位に君臨した。ところが、2017年に「ガバナンス」「国民性」「観光」「移住・投資」の各指標で評価が低下し、1位から6位に後退。コロナウィルス感染症が拡大してから初めて調査が実施された2020年まで6位にとどまったが、その後、「ガバナンス」「観光」「移住・投資」の各指標がさらに低下し、10位まで転落した。しかし、この歴史的な下落の後、アメリカは再び順位を上げ始めている。2023年には、6つの指標のうち「輸出」「文化」「移住・投資」「観光」の4つの指標でトップ10入りを果たし、ランクアップを後押し。科学技術、活気ある都市、卓越したスポーツ、教育資格、現代文化、投資魅力への貢献を高く評価された。

フランスは2011年から2015年まで4位を維持した後、2016年には5位にランクダウンし、2017年には2位に急上昇。2018年に4位に転落した後、2019年に再び2位に浮上し、それ以降、順位は徐々に下降。2023年、フランスはこれまでで最低のランクである8位となった。「文化」「観光」「輸出」「移住・投資」など多くの指標で上位10位以内に入っており、依然として高い評価を得ているが、「国民性」と「ガバナンス」の指標には弱点が見られる。公正な扱いとすべての国民の権利の尊重、平和と安全保障の分野での責任ある行動、友好的な資質、これらすべての評価が2023年には低下し、総合順位を下げる要因となった。

 

観光・投資意欲が過去最高に

最後に、「観光」と「投資」に注目して2023年とそれ以前を比較してみよう。

2015年から2023年にかけての人々の「旅行意欲」は次のグラフの通りだ。2023年は、もしお金に余裕があれば、世界各国を訪問したいという欲求が過去最高に達した。この指標の平均評価を分析すると、各国への旅行意欲が時とともにどのように変化してきたかがわかる。2019年から2020年にかけて訪問意欲は全体的に低下したが、2021年には歴史的な高水準に上昇した。2022年には他国への旅行意欲の平均が急低下したが、回答者は再び旅行をしたいと考えている。ただし、フランス、ウクライナ、カナダでは顕著な減少が見られた。

▶︎旅行意欲の推移

世界の企業への投資の魅力も、ここ数年で変動している。この指標の平均評価を経年分析すると、投資意欲が長期的に上昇していることがわかる。パンデミックの影響を受けた2020年には、各国企業の平均投資魅力度は低下した。その後、2021年のパンデミックからの回復に伴い、この指標の評価は全体的に上昇したが、2022年のインフレ率の上昇に伴い、再び低下した。今年は、インフレの懸念が世界的に残っているにもかかわらず、投資魅力度は再び上昇している。

▶︎事業への投資意欲の推移

 

 

 

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