データインバウンド
2023年人気の美術館・博物館トップ100発表、上位施設でオーバーツーリズム対策進む
2024.04.22
やまとごころ編集部イギリスの美術月刊紙『The Art Newspaper』が、2023年に人気のあった美術館・博物館のトップ100を発表した。このランキングは、The Art Newspaperが来館者数を独自に調査したもの。
コロナ禍による閉鎖期間中、美術館・博物館はバーチャルツアー、SNSでの情報発信など、顧客との繋がりを絶やさないように努力してきた。再開後は混雑を緩和し、顧客に快適な美術館体験を提供するという観点から、これまでに増して事前予約制度が重要視されていたり、入館者数を制限するところもある。そのようななか、世界有数の美術館・博物館の多くがコロナ禍前の賑わいを取り戻していることが分かった。ランキングの詳細や、各美術館の取り組みを見ていく。
1位はルーブル美術館、入館者数に上限
今回ランキング1位となったパリのルーブル美術館では、2023年の入館者数は2019年比8%減の886万人だった。観光客が回復してきた同年1月から、1日の入館者を3万人に制限している。コロナ禍前は最大で4万5000人が訪れており、オーバーツーリズムが懸念されていた。そこでコロナ禍回復途中の2022年初夏にはすでに人数制限の実施を検討していたそうだ。
なお、トップ20を見ると、ニューヨークのメトロポリタン美術館や近代美術館、ソウルの国立中央博物館、サンクト・ペテルブルクのロシア美術館、フィレンツェのウフィツィ美術館などが2019年を大きく上回る入館者数を迎えている。また、フェルメールの超大作を見に大勢の観客が訪れたアムステルダム国立美術館は2019年の水準と並んだ。
イギリスの美術館・博物館は苦戦
しかし、どこもかしこも順調に入場者数を伸ばしているわけではない。かつてのように多くの来館者を集めることができていない美術館や博物館もある。例えば、モスクワでは、クレムリン美術館は2019年比で67%減、ガレージ現代美術館は65%減と、ロシアのウクライナ侵攻と同国への外国人観光客の減少が明らかに影響している。
一方で、外国人観光客が回復しているのにも関わらず、イギリスの美術館・博物館は回復が芳しくない。トップ20には4カ所が入っているが、いずれも2019年比でマイナスで、特に改修などもあったナショナルギャラリーは2019年比-48%と半分程度に過ぎない。イギリスの上位10館の平均では、2019年と比較して13%減となっているのだが、イギリス政府観光庁が発表した2023年1〜9月期の数字によると、国際観光客数は2019年比で7%減だった。その理由として、イギリスの美術館・博物館は無料のところがほとんどだが、推奨される事前予約の煩わしさが二の足を踏ませているという報道もある。
日本からは東京3カ所、金沢1カ所
アジアでは、前述のようにソウルの国立中央博物館が2019年比25%増で6位に入り、21位以下にもさらに3カ所が入り全て2019年比を大きく超えている。コロナ禍期間中の2021年に開館した香港のM+美術館は最高値となる280万人を記録し15位に入った。
そして、日本からは東京3カ所、金沢1カ所の計4カ所がトップ100にランクインした。特に、国立新美術館は2019年比17%増と好調だった。観光庁の訪日外国人の消費動向調査では、美術館・博物館等への訪問意欲は高く(25%、複数回答)、実際に、今回の旅行で訪問したと回答した人が32.8%いたことがわかっている。
出典:観光庁・訪日外国人の消費動向2023年10-12月期
中国は世界で最も厳しいロックダウンを実施し、海外渡航もままならなかったことから、2023年には博物館訪問ブームが起きたという。国営の中国中央テレビによると、2023年に中国の博物館全てを訪れたのは12億人で、2019年を上回ったという。
なお、本調査は、2024年2月から3月にかけて電子メールと電話によって行われた。データが提供されなかった美術館は、表には掲載されていないとのことだ。
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