データインバウンド
世界の住みやすい都市ランキング2025、大阪7位。首位のコペンハーゲンは観光と生活を両立
2025.06.30
やまとごころ編集部2025年の「世界の住みやすい都市ランキング(The Global Liveability Index 2025)」が、英エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)より発表された。173都市を対象に、安定性や医療、教育、インフラなど30指標で評価した結果、デンマークのコペンハーゲンが前年2位から初の首位となった。
同調査は2025年4月14日から5月11日にかけて実施され、各都市における生活の質を「安定性」「医療」「文化・環境」「教育」「インフラ」の5カテゴリーに分け、それぞれ複数の定性的・定量的指標に基づいてスコア化している*。今年の平均スコアは100点中76.1点と、前年から変化はなかったが、地政学リスクや社会不安の影響で「安定性」の評価は引き続き下落傾向にあることがわかった。
コペンハーゲンが1位、安定性・教育・インフラで満点
コペンハーゲンは、評価対象となった5カテゴリーのうち、安定性・教育・インフラの3分野で100点満点を獲得。前年まで3年連続で首位だったウィーン(オーストリア)を抑え、総合スコア98.0で1位となった。ウィーンは医療で満点を維持したが、コンサートや駅でのテロ予告などにより安定性スコアが低下し、スイスのチューリッヒと並ぶ2位に後退した。
大阪が7位にランクイン、アジアで唯一のトップ10入り
大阪は前年9位から7位タイにランクアップ、安定性・医療・インフラの各分野で100点を獲得したほか、インフラでは96.4点、文化・環境でも86.8点と高い水準を維持し、アジア太平洋地域では最も高い評価を受けた都市となった。
また、ニュージーランドのオークランド(同7位)、オーストラリアのメルボルン(4位)、シドニー(6位)、アデレード(9位)も上位に名を連ねており、欧州に続きアジア、オセアニア地域の都市が上位にランクインしている
中東のアルコバールが13ランク上昇、最も改善した都市に
サウジアラビアのアルコバールは、医療と教育分野のスコア向上により前年から13ランクアップの135位(スコア62.4)と、最も改善した都市となった。政府による「Vision 2030」政策に基づくインフラ・公共サービスへの投資が奏功したと見られる。
ついで、インドネシアのジャカルタ(10ランクアップの132位、スコア62.4)、タイのバンコク(62.9, 116位)とチェンマイ(63.8, 130位)、ギリシャのアテネ(78.1, 85位)香港(90.4, 44位)、ルクセンブルク(95.6, 11位)はいずれも6ランクアップと順位が大きく上がった。
西ヨーロッパが地域別で最高評価も、安定性に陰り
次に「住みやすい都市」を地域別に見ていこう。このレポートでは世界を(下の図版の上から順に)、アジア太平洋、東ヨーロッパ、ラテンアメリカ、中東・北アフリカ、北米、サハラ以南アフリカ、西ヨーロッパの7つの地域に分けているが、アジア太平洋、北米、西ヨーロッパが前年からわずかながらスコアを落とした。
▶︎地域別のスコアの変化(2024年比)
ただし、西ヨーロッパは依然として住みやすさにおいて最も高い評価を得ている地域であり、5つのカテゴリーのうち4つで最高得点を獲得し、教育分野では北米に次ぐ2位となっている。とはいえ、2024年以降、テロの脅威や暴動、反ユダヤ主義攻撃の頻発により、同地域の安定性に関する得点は低下している。
北米の25都市の総合平均スコアは、最新の調査でわずかに低下し、90.4となったが、これは主にカナダ4都市の医療スコアの低下によるもので、分散型国民保健サービスへの資金調達に関する議論が未解決のまま続いているためだ。米国トランプ政権が教育と医療の公的支出削減を提案していることから、この地域は今後の報告書でさらに評価が低下する可能性が残っている。
アジア太平洋地域は、依然として最も幅広いスコア分布を示している。最も住みやすい都市であるメルボルン(オーストラリア)は今年4位にランクインした一方、最も住みづらい都市であるダッカ(バングラデシュ)は171位(2024年の国内政治混乱を受けて3位下落)となった。
<編集部コメント>
都市の住みやすさと観光の共存、欧州主要都市が先行事例
今回1位となったコペンハーゲンは人口約66万人の20倍以上の観光客が訪れる欧州でも有数の観光都市だが、観光の集中による生活環境への影響が懸念されるなか、同市では居住性と観光の共存を図る複数の対策を講じている点が目を引く。
自転車優先の街づくりを進める中で、そのインフラを観光客の移動手段にも積極的に活用しており、観光客が自転車で回遊することで、自然と住民の生活圏に馴染みやすい仕組みが整っている。また、2024年7月15日〜8月11日には「CopenPay」というプログラムを実施。観光客がリサイクル、ごみ拾い、自転車・公共交通の利用など環境に配慮した行動を取ることで、カフェの無料ドリンクや博物館入場、カヤック利用などの特典を受けられるようにした。観光客を単なる消費者ではなく「地域の一員」として巻き込み、観光による負荷の軽減と住民との共創につなげている。
2位のウィーンもまた欧州で人気の観光都市だが、街の半分近くを緑地が占め、公営住宅の拡充や公共交通整備を進めることで、観光と住民の生活基盤の両立を支えている。双方に共通するのは、観光規制や課税によって抑制するのではなく、観光を都市にとって価値ある資源として位置づけ、住民との協働により質を高めていくという姿勢である。こうしたアプローチは、観光による影響を受けやすい都市にとって、今後の施策設計の参考になるだろう。
*世界の住みやすい都市ランキング(The Global Liveability Index 2025)では、5つの指標ごとに専門アナリストや現地協力者の評価(定性指標)および外部データ(定量指標)を用いて点数を付与し、最終的に1〜100のスコアで評価。カテゴリーごとの重みづけは、安定性25%、医療20%、文化・環境25%、教育10%、インフラ20%となっている。
(出典:The Global Liveability Index 2025)
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