データインバウンド
アドベンチャートラベル市場、アジアが最大規模で約63兆円規模と推計。地域ごとで志向に差
2026.03.23
やまとごころ編集部アドベンチャートラベル(AT)の世界市場は拡大を続け、アジアが最大のアウトバウンド市場(約4240億ドル:63兆円規模)と推計されることが分かった。Adventure Travel Trade Association(ATTA)が、EF Adventures(EF Education Firstの旅行ブランド)およびオランダ政府系の中小企業支援機関であるCBIの支援を受けて実施した調査では、アジア、欧州、北米、ラテンアメリカの4地域を比較し、地域ごとに異なる需要構造と旅行者の志向を明らかにした。
同調査では、アドベンチャーを主目的としない層も自然・文化体験を取り入れる「アドベンチャー志向」を持つ点が共通しており、体験型旅行の裾野が拡大している実態が示された。
アドベンチャー志向は裾野拡大、文化体験が最大セグメントに
調査によると、アドベンチャートラベルは一部の旅行者に限られた市場ではない。ATTAはこうした層を「Open to Adventure(アドベンチャー志向)」と定義し、自然・文化・アクティビティを取り入れる幅広い旅行者を含む概念としている。
この層は主に以下の4タイプに分類される。
・身体的な挑戦や没入型体験を求める「Adventure Intensives(アドベンチャー重視派)」
・自然や野生動物への関心が高い「Nature Enthusiasts(自然愛好家)」
・歴史や食文化などを重視する「Cultural Explorers(文化体験派)」
・体験・文化・休暇を組み合わせる「Experience Samplers(バランス型旅行者)」
世界全体では「Cultural Explorers(文化体験派)」が最大のセグメントとなっており、文化学習や地域体験への関心の高さが顕著だ。
こうした特徴を踏まえ、以下では4地域それぞれの市場特性を詳しく見ていく。
アジアは最大の63兆円規模に、文化体験中心も市場ごとに志向に差
地域別では、アジアが最大のアドベンチャー志向アウトバウンド市場であり、推計4240億ドル(約63兆円)規模とされる。中間層の拡大や航空ネットワークの発達を背景に、海外旅行需要が伸長している。
市場構成では、文化体験派が28%で最大を占める。自然愛好家やバランス型も一定割合存在し、複数志向を組み合わせた旅行が主流である。一方、非アドベンチャー層も28%と一定規模存在する。
国別では、日本は文化体験派が38%と突出し、中国はバランス型、インドはアドベンチャー重視派や自然愛好家の割合が高く、地域内でも志向差が大きい。消費面では、インドは長期滞在傾向、中国・日本は1泊あたり支出が高い。
欧州は約53兆円規模の成熟市場、サステナ志向と文化体験が軸
欧州は約3570億ドル(約53兆円)規模の市場で、アドベンチャートラベルにおける成熟したアウトバウンド市場だ。ハイキングやサイクリングなどアウトドアへの理解が高く、環境配慮や持続可能性を重視する傾向が強い。
市場構成を見ると、文化体験派が29%で最大を占める。都市観光と自然体験を組み合わせた旅行が主流である一方、非アドベンチャー層も27%と一定規模存在する。
国別では、ドイツはアドベンチャー重視派や自然愛好家の割合が高く、比較的バランスの取れた構成だ。一方、オランダやイギリスでは非アドベンチャー層が多く、アドベンチャートラベルの受容は慎重な傾向にある。
こうした特性から、欧州市場向けにはサステナブルな観光商品や、文化・自然を組み合わせた体験設計が重要とされる。
北米は約28兆円の市場規模に、没入型体験と高品質志向が顕著
北米のアドベンチャー志向アウトバウンド市場は約1880億ドル(約28兆円)規模と推計される。アメリカやカナダの旅行者は、身体活動と文化体験を組み合わせた旅行への関心が高く、ガイド付きトレッキング、野生動物観察、食文化体験など、地域と関わるコンテンツへの需要が強い。
市場構成を見ると、文化体験派が24%で最大を占める一方、非アドベンチャー層も36%と多く、市場の裾野は広い。
国別では、アメリカではアドベンチャー重視派やバランス型旅行者の割合が高く、体験志向が強い。一方、カナダは非アドベンチャー層が38%と多く、文化体験志向も強いなど、より慎重な市場構造となっている。
北米市場では単なる観光にとどまらず、地域文化や自然環境に深く関わる「没入型体験」の提供が重要と分析されている。また、質や快適性、信頼できる旅行会社による計画性の高い旅程を重視する傾向も強い。
ラテンアメリカは成長市場、非アドベンチャー層が約半数と高水準
ラテンアメリカは390億ドル(約5.8兆円)規模と、他地域に比べ市場規模が小さいものの、アドベンチャートラベル分野で成長が期待されるアウトバウンド市場だ。ブラジルなどを中心に海外旅行者が増加し、地域社会や自然保護に配慮した観光への関心が高い。
市場構成を見ると、文化体験派が24%で最大を占める。一方、非アドベンチャー層は47%と約半数に達しており、他地域より高い水準にある。
国別では、メキシコはアドベンチャー重視派や自然愛好家、バランス型旅行者の割合が高く、受容度が高い。一方、ブラジルは非アドベンチャー層が51%と過半数を占め、文化体験派も多いなど、保守的な傾向が強い。
同地域では文化体験を軸に、地域社会と関わる持続可能な観光設計が重要とされる。また、家族や友人と共有する体験への志向も強い。
同調査では、地域差はあるものの、文化交流や自然体験への関心に加え、持続可能性や快適性を重視する傾向は各市場に共通すると結論づけている。
【編集部コメント】
拡大するアドベンチャートラベル市場、鍵を握る「文化体験」と地域差
今回の調査で見えてきたのは、アドベンチャートラベルの拡大を牽引しているのが「文化体験志向」である点。アジアが最大市場となり、日本旅行者は文化体験派が38%と突出する一方、インドや中国では異なる志向が見られるなど、同一地域内でも多様性が際立つ。
また、北米は没入型体験と品質志向、欧州はサステナビリティ重視など、地域ごとに求められる価値も明確だ。自地域の資源をどの市場のどの層に届けるのか、ターゲット別に体験設計を見直す際の参考としたい。
*記事内では、1ドル150円で換算
(出典:ATTA, 「ATTA Research Highlights Four Major Outbound Markets Driving Adventure Travel Growth」)
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