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アジアの旅行支出意向、欧米比50%高。AI活用9割で行動が変化 ー世界20市場の旅行意向調査

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旅行需要が拡大局面へ入る中、訪日市場の強さと旅行者行動の変化がより鮮明になっている。

旅行・体験予約アプリを運営するKlookが実施した「Travel Pulse 2026」によると、日本は「訪問したい国・地域」で20%の支持を集め首位を維持した。調査は2025年12月、世界20市場*のミレニアル世代・Z世代約1万1000人を対象にインターネットで実施されたものだ。旅行予算の拡大や体験消費へのシフトに加え、地方都市への関心拡大や周遊志向の高まりなど、訪日観光の構造変化も浮き彫りとなった。

*世界20市場:日本、香港、台湾、中国、韓国、シンガポール、マレーシア、ベトナム、タイ、フィリピン、インドネシア、オーストラリア、ニュージーランド、インド、ドイツ、フランス、スペイン、イタリア、イギリス、アメリカ

 

物価高でも旅行支出は拡大傾向、体験・飲食は6割増でショッピングは伸び悩み

調査によると、世界の旅行需要は物価高の影響下でも堅調で、支出は「コト消費」重視へとシフトしている。

2026年の旅行予算については、88%が「維持または拡大する」と回答した。特にアジア太平洋地域の旅行者は、欧米と比べて旅行支出を増やす意向が50%高く、需要を牽引している。

内訳を見ると、総旅行予算では60.4%が「支出を増やす」と回答したほか、飲食(60.2%)、体験(58.8%)、宿泊(56.4%)といった項目でも過半数が支出増の意向を示した。一方、買い物は53.0%にとどまり、減少意向も16.9%と他項目より高い。

 

物価上昇局面でも、旅行者は買い物より体験やアクティビティへの支出を優先する傾向が強まっており、従来の「観光地を巡る旅行」から「現地での体験価値」を重視するスタイルへの転換が進んでいる。加えて、アジア太平洋地域の旅行者は欧米と比べ、体験への支出を増やす可能性がほぼ2倍高い点も特徴だ。

 

旅行需要は拡大基調、周遊型が主流化し3分の2が複数都市訪問へ

旅行需要は量的にも拡大している。調査では回答者の約9割が2026年に海外旅行を計画しており、そのうち61%が上半期中の旅行を予定している。2025年の50%から増加しており、旅行時期の早期化が進んでいる。

また、「複数都市を巡る周遊型」が主流化している点も特徴だ。全体の約3分の2が1回の旅行で複数の目的地を訪れる意向を示し、大都市は「目的地」から「ゲートウェイ」へと役割を変えつつある。また、旅行者は馴染みのある場所と新しい目的地を同時に訪れる傾向にある。

こうした動きの背景には、地域ならではの体験を求める志向がある。具体的には、「地元ならではの体験」(42%)、「まだ知られていないスポットの発見」(39%)、「比較的手頃な価格」(37%)といった点が動機として挙げられている。発見の価値は目新しさだけでなく、価格やアクセス、体験の深さといった要素にも広がっている。この傾向は訪日旅行にも影響しており、日本国内における周遊や地方分散の動きと連動している。

特にアジア太平洋地域のZ世代は、短期間で多くの体験を詰め込む高密度な旅程を好み、定番観光地に加えて未訪問の地域にも積極的に足を運ぶ傾向が強いという。

 

日本は訪問意向で首位、支持率20%で2位を大きく上回る

訪日旅行では、日本の人気が引き続き際立つ結果となった。

「2026年に必ず訪れるべき国・地域」として、日本は支持率20%で、2年連続の1位となった。2位のオーストラリア(9%)、3位のシンガポール(7%)を大きく引き離した。特にアジア近隣市場では日本の支持率が高く、タイ(59%)、台湾(55%)、香港(51%)では過半数が日本を選択している。

▶︎世界の旅行者が2026年に必ず訪れるべきと回答した国・地域トップ5

国・地域名 旅行者からの支持率
日本 20%
オーストラリア 9%
シンガポール 7%
中東(UAE、トルコ等) 6%
韓国 5%

国内の訪問予定地では、訪問予定率ベースで東京(73%)、京都(49%)、大阪(49%)が依然として上位を占めるが、これらは「目的地」から「入口」へと役割を変えつつある。周遊志向の高まりにより、日本国内での移動を前提とした旅行設計が進んでいるといえる。

▶︎訪日観光客が2026年に訪問を予定している都市

都市名 訪問予定率
東京 73%
京都 49%
大阪 49%
沖縄 28%
広島 23%
名古屋 23%
静岡(富士山周辺含む) 20%
福岡 16%

 

地方都市への関心が拡大、沖縄28%・広島23%など訪問予定率が上昇

訪日旅行の変化として、地方都市への関心拡大が挙げられる。

訪問予定率では、沖縄(28%)、広島(23%)、名古屋(23%)などが2025年から支持を伸ばし、上位にランクインした。Klookの実データでも、2025年の予約数は沖縄が前年比で60%増、名古屋78%増、広島128%増と大きく伸長している。

この動きは、オーバーツーリズムの緩和と地方創生の両面で前向きな兆しといえる。

 

旅行計画の意思決定が変化、SNSで発見しAIで検証する流れが定着

旅行計画のプロセスも変化している。旅行先や体験の発見にはSNSが大きな影響を与えており、約80%が意思決定に影響を受けている。SNSは情報収集源にとどまらず、旅行先への信頼や関心を高める役割も担っている。

一方で、旅程作成や情報収集などの実務面ではAIの活用が進み、利用率は90%を超える。具体的には、旅行の下調べ(51%)や旅程作成(49%)、翻訳(44%)、予算管理(35%)といった用途で活用が進んでいる。AIは旅行の実現可能性を検討するツールとして定着しつつある。

 

つまり、旅行者は「SNSで興味を喚起し、AIで実現性を確認する」という流れで意思決定を行っているといえる。この変化は、直感的な憧れだけでなく、条件を踏まえた現実的な選択への移行を示すとレポートは指摘している。

 

【編集部コメント】

体験消費と周遊化が進む今、地域はどう選ばれるか

今回の調査で際立つのは、体験消費へのシフトと周遊志向の加速だ。特に地方都市への関心拡大は、分散化の追い風となり得る一方で、選ばれる理由づくりが問われている。この流れをどう地域に取り込むかがカギを握るだろう。SNSでの発見からAIでの検討という行動変化も踏まえ、情報発信と受け入れ設計を一体で見直す視点が求められるのではないだろうか。

(出典:Klook, Travel Pulse 2026 )

 

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