インタビュー
当初は、飲み会や残業などで終電に乗り遅れたサラリーマンをメインターゲットとしていたカプセルホテル。近年は、未来的なデザインが魅力的と捉えられ、外国人からの人気も集めている。そんなカプセルホテル業界のトップランナーを走る、新宿歌舞伎町に位置する「新宿区役所前カプセルホテル。」
前編では、新宿区役所前カプセルホテルが外国人をターゲットに取り組みを始めた経緯や取組開始当初の状況を紹介。後編では、外国人の宿泊客が増える中で生じている問題点や対策について、更に詳しくお伺いした。
どのような客層が多いのでしょうか?
外国人に限らず、一人での利用が一番多いですね。それ以外では、グループやカップルで、ファミリーの場合もときどきあります。ファミリーは、お父さんと息子さん、お母さんと娘さんで別々になり、子供でも1カプセルの料金となります。というのも、我々が運営するカプセルホテルは、フロアごとに女性と男性を分けているからです。
宿泊施設は8階建てで、6、7階が男性専用フロア、8階が女性専用フロアです。3階にフロントがあり、男性用の大浴場とサウナもあります。4階は、レストラン、ランドリー、昼の休憩用にも使えるカプセルがあります。
外国人のほとんどが1~3泊の利用です。たまに長い方で1週間というケースもあります。
外国人対応で気を遣っている点はありますか?
以前は、予約の際に男性か女性かを選ぶ際に、お客様が間違えてしまうケースが多々ありました。インターネット予約のデフォルト設定が男性になっているからです。お客様は、フロアごとに男女が分かれていると思わず、あまり気にせずに予約を入れてしまうのでしょう。
以前、予約を間違えた女性が実際に来られたら、女性用のカプセルはすでに満室ということもありました。こればっかりは、柔軟な対応ができませんので、断るしかありません。
そこで、掲載写真にも文字を入れて、男性用フロアと女性用フロアが分かれていますと注意書きをするようにしたところ、間違いが減ってきました。
また、数年前から外国語対応のスタッフを増やしました。勤務体系は3交代制にしており、いずれにも英語対応のスタッフを配置するようにローテーションを組んでいます。そのほか、韓国語、中国語のスタッフもいますが、時間帯によっては不在のため、利用の注意事項を翻訳したペーパーを作成し、必要に応じて利用しています。
設備に関しては、Wi-Fiの充実を心掛けています。利用者が増えていて、回線速度が遅くなってしまうので、近いうちに増設工事をする予定です。さらに充電用のコンセントも増やし、ラウンジのテーブルの下に付けたことで、電源を入れたままパソコンを利用できるようになりました。またテレビについては、海外ドラマチャンネルを加えることを検討するなど、外国人が快適に過ごせる工夫を考えています。
部屋割りについては、外国人と日本人をなるべく離すようにしています。できればフロアも別にするようにしています。それは、日本人は、カプセルホテルでのルールを心得ていますが、外国人の場合は、マイペースの方が多く、すでに睡眠中の方に迷惑をかけてしまうこともしばしばあるからです。
なかには、グループで来られた外国人客が、カプセルのある宿泊スペースでワインを飲んでいたことがあり、レストランに移動してもらいました。あくまでもカプセルのあるスペースは寝るための場所です。基本、必要なことをひそひそ話す程度で、普通のおしゃべりは厳禁です。
タトゥーについては、寛容にしていますが、手首までなど、服から見えるほどたくさんある人には、館内では隠してもらうようにお願いします。
やはり、半分は日本人の方がいますので、その方たちも大切にしたいと考えており、ルールについて外国人に理解を求めるようにしています。
今後の展望を教えてください
新宿以外の他のエリアにも展開したいと考えています。カプセルホテルの場合、立地が一番大切で、それも利便性が高い場所を求められます。まずは、大都市であること。それも東京のほか大阪や京都、名古屋あたりでしょう。しかしながら、なかなか希望する物件が見つかりません。土地代が高すぎると採算が合わないビジネスモデルなので。
ここは、歌舞伎町のど真ん中にあるので、外国人の利用が大きくなったのだと思います。
ところで、外国人利用が増えた結果、カプセルホテルは、酔ったサラリーマンが泊まる場所というイメージが変わったのではないでしょうか。外国人利用が増えた影響で、女性客の利用が伸びたのです。今後は女性のニーズをくみ取り、もっと増やしていきたいと考えています。
外国人と日本人、男性と女性というようにバランス良く集客を図りたいと思います。
取材後記:
カプセルホテルが外国人利用によって、見直され、日本人利用も伸びてきたという。黒川紀章の建築家としての先見性に驚かされる。
最新のインタビュー
日本一のインバウンド向けローカル体験を創ったツアーサービスMagicalTripが、未経験ガイド9割でも最高評価を獲得できる理由 (2024.07.26)
やんばる独自の文化体験を提供する宿の若手人材育成術「育てるよりも思いをつぶさない」の真意 (2024.04.26)
人口の7倍 62万人のインバウンド客が訪れた岐阜県高山市の挑戦、観光を暮らしに生かす地域経営 (2024.03.22)
国際環境教育基金(FEE)のリーダーが語る、サステナビリティが観光業界の「新しい常識」になる日 (2024.02.09)
パラダイムシフトの渦中にある観光業に経営学を、理論と実践で長期を見据える力をつける立命館大学MBA (2023.11.14)
2024年開講、立命館大学MBAが目指す「稼げる観光」に必要な人材育成 (2023.10.26)
【海外での学び直し】キャリア形成への挑戦、ホテル業界から2度の米国留学で目指すものとは? (2023.09.29)
広島にプラス1泊を、朝7時半からのローカルツアーが訪日客を惹きつける理由 (2023.08.04)
異業種から観光業へ、コロナ禍の危機的状況で活かせたMBAでの普遍的なスキルとは? (2023.06.09)
台湾発のグローバルSaaS企業「Kdan Mobile」の電子署名サービスは、いかに観光業界のDXに貢献するのか? (2023.05.17)
【提言】アドベンチャートラベルは「体験」してから売る、誘客に必要な3つの戦略 (2023.04.21)
世界一予約困難なレストランでも提供。北海道余市町を有名にした町長の「ワイン」集中戦略 (2023.04.14)