インバウンドニュース
値上げ後のJRパス利用意向を調査「今後利用しない」が7割超。訪日客の地方誘致後退の懸念も
2023.05.25
JRグループがこのほど、外国人向けのお得な鉄道パスであるJapan Rail Pass(JRパス)の価格改定を発表したことを受けて、日本の観光情報を英語で発信するWebメディア「ジャパンガイド」では、サイトユーザーを対象に、今後のJRパスに関するアンケートを実施した。
2023年10月の価格改定で、JRパスの価格を大幅値上げ
JRパスは日本を旅する外国人旅行者などに販売される鉄道パスだ。7日、14日、21日の3種類があり、のぞみやみずほなど一部の新幹線に乗車できないといった制約はあるものの、一定料金で乗り放題となる。手ごろな料金で購入できるため、パス保有者は日本各地に足が延ばせるようになるなど、地方へのインバウンド観光にも貢献してきたと言える。
JRパスの価格改定は2023年10月ごろを予定しており、例えば1週間のパスの場合、指定販売店・代理店での購入の場合、大人1名で29650円だが、改定後は5万円となるなど、大幅な値上げになる予定だ。
▶JRパス価格改定表
(JRプレスリリースより)
価格改定後のJRパス利用意向、7割以上が使用しないだろうと回答
JRパスの価格改定発表を受けてすぐに、月間約230万人のユーザー数を持つジャパンガイドでは、「大幅なJRパス料金の値上げ告知」と題した記事を公開。2週間で閲覧数10万件に達し、通常の10倍近い伸びを見るなど、高い訪日意欲を持つ外国人ユーザーの関心が窺えた。こうしたことから、ジャパンガイドでは今後の訪日旅行への影響を測る目的から、サイトのユーザーに対しJRパス利用に関する2種類のアンケートを実施。値上げ後のJRパス利用意向と、直近の訪日時のJRパス利用有無を聞き、訪日旅行に強い意欲がある1500人あまりの外国人ユーザーから回答を得た。
その結果、1.値上げ後もJRパスを利用するか、という問いに対しては「絶対に利用しない」が36.1%、「たぶん利用しない」が36.5%となり、合計すると全体の7割以上にあたる72.6%がパスを利用しない傾向にあることが分かった。一方「間違いなく利用する」「おそらく利用する」という傾向にある人はそれぞれ5.9%、6.0%で全体の1割を少し上回るに留まった。
2.直近の旅行でJRパスを利用したかという問いに対して、「直近の訪日旅行の際にJRパスを利用した」が60.7%となり、利便性の高いJRパスの浸透ぶりが窺えた。
過去の利用者が全体の約6割であったことに比べ、今後利用しないとした訪日予定旅行者が約7割となった2つのアンケート結果から、ジャパンガイドでは今後の訪日観光客の主要な交通手段が大きく変わる可能性を示唆。各地のインバウンド誘客にも、少なからず影響を与えるだろうと同社は分析している。
今回の料金改定に対し、ジャパンガイドユーザーからは「凄まじい値上げだ」「旅の柔軟性や選択肢を大幅に損ねる」「この決定は外国人観光客が大都市だけを旅する要因になってしまう」などというコメントも寄せられている。
JRパス値上げが、訪日客の地方誘致にどのような影響を与えるのか
ジャパンガイド編集長のステファン・シャウエッカー氏は「10%〜20%程度の値上げならば全く問題ない」とした上で、今回のような、7割に近い値上げを伴う大幅な料金改定が実施されることで起こるであろう影響について見解を述べた。
まず、利用者数の減少だ。情報に疎い旅行者や、利便性のために出費を厭わない旅行者は使い続ける可能性があるが、全体的に利用者数の大幅低下が予想される。そのことで、環境にやさしい交通手段である鉄道旅行の魅力が減り、国内空路便、高速バスやレンタカーなどに代替される可能性を指摘。そのことで、持続可能な観光の後退に繋がる可能性についても触れた。
また地方を訪れる外国人観光客が減少する可能性についても言及。「従来は、多くの旅行者が東京~大阪のゴールデンルートを観光しながら、期間内は乗り放題というJRパスの特性を利用して、それ以外のメジャーでない地域にも立ち寄ってきた。JRパスの値上げ後は、多くの旅行者が、通常チケットを利用するかもしれず、そうなると、追加の出費をしてまで、有名どころ以外への地域立ち寄りが難しくなる可能性がある」として、それが、地域の観光プロモーションを後退させる可能性があることを懸念点として挙げた。
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