インバウンドニュース
訪日客の9割が百貨店を利用、言語圏で異なる消費傾向とブランド
2025.07.03
やまとごころ編集部訪日外国人向けショッピングサポートアプリを提供する株式会社Paykeは、2025年5月12日から19日にかけて、日本滞在中の百貨店利用実態や購買動機を明らかにするべく、訪日観光客1452名を対象に、同アプリ内でアンケート調査を実施した。調査は、韓国語・英語・中国語(繁体)で行われた。
百貨店利用率91%、中国語圏でリピート傾向強く
訪日外国人の91%が滞在中に百貨店を訪れており、百貨店は今なお高い来店率を維持する商業施設であることが明らかとなった。
特に中国語話者では87%が2回以上訪問しており、定番スポットとして定着している様子がうかがえる。英語話者でも複数回訪問が83%と高く、継続的な関心が見られた。一方、韓国語話者では「1回のみ」の割合が21%とやや高いが、2回以上の訪問者も74%にのぼる。
目的は「日本限定商品」や「食体験」、言語圏で異なる傾向
百貨店を訪れる最大の動機は、「日本でしか手に入らない商品があるから」(54.16%)で、訪日観光客にとって百貨店は“日本限定”の魅力を体現する場となっていることがわかる。次いで、「自国より安く買える」(45.48%)、「デパ地下やレストランでの食体験」(40.71%)、「品質や接客への信頼」(40.49%)が続いた。商品価値だけでなく、体験やサービス面でも評価されている点は注目に値する。
具体的な購買目的は言語圏ごとに異なる傾向が見られる。中国語話者は「食品(デパ地下)」が67.85%と圧倒的で、「日本限定ファッションブランド」(49.58%)もに比較的関心が高い。英語話者では「ギフト・贈答品」(57.89%)や「日本発コスメ」(38.7%)が人気で、お土産ニーズの強さがうかがえる。韓国語話者では「日本限定ファッションブランド」(53.0%)、「ギフト・贈答品」(51.61%)に加え、「ラグジュアリーブランド」(28.11%)も他言語圏より高い関心を示した。
これらの傾向は、ターゲットとする国・地域によって打ち出す商品ラインナップや売場の導線設計、プロモーション内容を変える必要性を示している。インバウンド消費の最大化には、訪日客が「何を求めて百貨店に来るのか」を理解した上で、体験・商品・価格を一体で設計する発想が求められる。
百貨店ブランドの支持に言語圏で差、韓国語話者は関西系を高評価
百貨店ブランドの認知度では、高島屋(69.42%)、三越(67.56%)、大丸(66.39%)が全体での上位を占めた。中でも中国語話者においては、高島屋(81.26%)、三越(75.21%)といった全国展開の老舗ブランドの認知度が際立って高い。一方、韓国語話者では大丸と阪急・阪神がともに79.26%と首位で並び、関西エリアに基盤を置く百貨店の浸透度が顕著だった。
利用実態を見ても、高島屋(53.58%)、大丸(53.03%)、三越(50.34%)が全体の上位を占めており、認知度と実際の訪問が概ね一致している。特筆すべきは、韓国語話者の阪急・阪神百貨店利用率が68.66%と突出して高い点で、他言語圏とは明確に異なる選好傾向が見られる。
こうした結果は、地域ごとのブランド戦略やターゲット別の集客設計に活かせる示唆を含んでいる。特に関西圏では、韓国からの観光客に対して地場百貨店との連携やプロモーション展開が効果的となる可能性が高い。ブランドごとの「言語圏別支持率」を押さえることで、限られた販促リソースの最適配分にもつながる。
「時間不足」で訪問見送りも、来店の起点は“偶然の出会い”が最多
同調査では、百貨店を訪れなかった理由も調査された。最も多かった回答は「時間がなかった」(61.24%)、次いで「他で十分に買い物ができた」(46.64%)だった。旅行中の限られた滞在時間の中で、百貨店が他の観光・買い物スポットに優先順位で劣る場面があることがうかがえる。
実際に、他の買い物スポットとの比較では、「コンビニ」(84.24%)や「ドン・キホーテ」(83.73%)、「ドラッグストア」(83.66%)といった店舗の利用意向が圧倒的に高く、百貨店(65.58%)は相対的に優先度が低いことが明らかとなった。手軽に立ち寄れ、目的買いがしやすい業態に比べて、百貨店は「時間に余裕があるときの選択肢」として後回しにされる傾向が強いと考えられる。
百貨店を知るきっかけとしては、「店舗前を通りかかって」(53.65%)が最多で、現地での“偶然の発見”が来店の契機となっている実態も明らかになった。次いで「SNS投稿」(42.08%)、「旅行Webサイト」(40.49%)、「YouTubeなどの動画」(36.15%)と、オンライン経由の接触も多い。
これらの結果は、旅行計画段階では百貨店が必ずしも「目的地」として設定されていない一方で、現地での偶発的な接触が来店を促していることを示している。今後は、訪日客の導線上での視認性を意識した立地・装飾設計や、デジタル上での「百貨店=体験・限定」価値の訴求強化が、来店率を押し上げるカギとなるだろう。
<編集部コメント>
「9割が訪問」の裏にある実態、百貨店が仕掛けるべき次の一手とは?
訪日客の9割が百貨店を訪れるという高い来店率に注目が集まるが、利用の背景や購買傾向は言語圏ごとに異なり、地域やブランド戦略の最適化が求められる。中国語話者は食品、英語話者は贈答品、韓国語話者はラグジュアリーブランドなど、明確な違いが見られ、販促リソース配分の指針となるはずだ。
また、来店の起点が「通りかかり」という偶発性に依存している点は見逃せない。店舗前の装飾や動線設計、SNS発信など“偶然の出会い”を増やす仕掛けづくりが、売上向上の一手となるかもしれない。
出典:株式会社Payke「訪日観光客による百貨店の実態調査」
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